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砦をめぐって

 後方よりムルカ、ジエイの2名が接近している報告を受けた魔導騎士団副官トーラスは前衛部隊に砦攻略を任せ、自らの従士を率いてムルカとジエイを迎え撃ちに行く。


 その一方でムルカとジエイも砦の方に向かっており、両者が衝突するのは時間の問題となっていた。向かいながらムルカとジエイが何やら話をしているようだ。


「ジエイ殿、砦はまだか?」

「もう少しのはずです。ん?」


 何かに気付いたジエイは1度立ち止まり様子を見る。良く見渡すとトーラスが部下を率いて自分達の方へ接近していたのであった。


「ムルカ殿、どうやら敵は我らを警戒していたようです」

「そのようだな」


 そして遂にムルカ達とトーラス率いる部隊が相対する。両者が相対するとトーラスが最初に言葉を発する。


「たった2人で我々に勝てると思っているなら考えが甘かったな。我らは帝国でも精鋭の集まりだ。貴様らなど早々に始末してくれる」


 トーラスの言葉を受け、ムルカが返事を返す。


「貴殿らこそ我らを甘く見ないでもらおうか。戦力を分散さしては砦の攻略にも時間がかかろう、その間に援軍が来れば我らの勝ちだ」

「ならば、我らの力を見せてくれる」


 トーラスはそう言うと左手をムルカの方へ向け魔法を放つ構えをする。


 トーラスの左手からは無数の石が放たれた。どうやら地の魔法を使用したようだ。


 ムルカ、ジエイ両名は無数の石をかわすことに成功するが、次の瞬間従士達が2人に襲い掛かる。


「むっ、はっ!」


 ムルカは得意の体術で従士を次から次へとなぎ倒していき、ジエイに呼びかける。


「ジエイ殿、この者達は私が相手をする。貴殿は砦へ向かえ」

「よろしいのですか?あの士官は実力者と思われます。お1人では危険なのでは」

「だが砦が落ちれば我々の負けだ。貴殿はなんとか砦を救ってくれ。砦が敵の手にさえ落ちなければ勝機はある」

「承知しました」


 ムルカの言うように砦が帝国軍の手に落ちればそこを拠点とされ、帝国にとっては攻防に優位に立たれてしまう。


 グラッスが帝国の脅威にさらされてしまえば同盟交渉どころではない。とりあえずは帝国軍を撤退に追い込み、時間を稼ぐことが重要なのだ。


 ジエイもそう判断し、砦へ猛スピードで向かった。


「トーラス様、ものすごい速さです。いかがなさいますか?」

「お前たちは奴を追え。私はあの男を討ち果たしてから砦へと戻る」

「はっ!」


 そう言って従士達はジエイを追いかけて行く。


 従士がその場から離脱するとムルカがトーラスに声を掛ける。


「若く優秀な騎士よ、一騎打ちといこうではないか」

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