つかの間の休息をとったギン達は再度近隣に川が流れている道を進んでいく。ギンが馬車を御しようやく川を越え、陸地の面積が多い所に出てエイムが声を発する。
「やっと地面が多い所に出ましたね。今度の同盟もうまくいくといいですね」
エイムの言葉にルルーが返事をする。
「そうね、でも帝国と戦いたくないって国もあるし、こちらから無理強いはできないわ」
ルルーの言葉を聞いてブライアンが反応を示す。
「だけど帝国はすべての国を支配しようとしているんだろう。それも勝手に向こうからケンカを売って来るんだ。各国で協力して戦うしかねえんじゃないのか」
「戦わずに降伏している国だってあるのよ。そりゃあ領地は削られて帝国の直轄地には帝国に仕える貴族が管理を任されるわけだけど」
「だったら……」
「それでも国の民をむやみに死なせない為にそういう方法をとらざるをえないんだから私はそういう選択をする国を責めることはできないわ」
ルルーとブライアンが帝国に対する各国の対応の違いについて話しているところにギンが言葉を挟む。
「ルルーの言う事にも一理あるな。血を流さずに戦いが終わるのならそれに越したことはない」
ギンの言葉にブライアンが反応を示して言葉をかける。
「ギン、お前までそういうことを言うのか。帝国の支配を良しだと言う国があるのは仕方ねえって」
「ブライアン、そもそも戦争に善悪があるとは俺は思えない。帝国の支配を受け入れない国が抵抗をしている。ただそれだけだ」
「じゃあ、俺達の行動は正しいのか?」
「……、すまないがそれは俺には分からない。ただ、俺達の行動で1日でも早く戦争が終わると信じて前に進むしかない」
ギンが少し悲しい表情をした為、ブライアンはそれ以上何も言えず黙り込んでしまう。先程までブライアンと話していたルルーもだ。
しばらくゆっくりと馬車は進んでゆく。そんな中エイムがルルーに小声で声を掛ける。
「あのルルーさん」
「何?」
「先程ギンさんが悲しそうな顔をしていました。あんな顔を見たのは初めてです」
ギンの悲しそうな表情に戸惑うエイムにルルーが自分の思いを話す。
「今のギンの言葉、まるで自分に言い聞かせているようだった」
「ご自分に?」
「ええ、自分にそう言い聞かせることで苦しみながらも前に進もうとしている。私にはそう見えた」
「それってギンさんが辛いだけですよね。私はどうすればいいんですか?」
エイムの言葉にルルーはしばらく考え、言葉を発する。
「寄り添う」
「えっ?」
「寄り添う、それでいいんじゃないかな。というよりあなたは寄り添えているとおもうわ」
「私がですか?」
戸惑うエイムにルルーが激励の言葉をかける。
「さっきだってギンの悲しい顔をまるで自分のことのようかにあなたは言ったわ。それって彼に寄り添えているから言えるんじゃないかな」
「でもなんでそんなに苦しいのか私には分からなくて……」
「でもあなたはそれでも何も聞かないでいた。まあ、ブライアンでも何も言えず引くくらいだからね」
「それでいいんでしょうか?」
最後にルルーはエイムに対してある言葉をかける。
「それ以上聞くと余計にギンが辛いと思ったから、何も聞かなかったんでしょう?」
「はい」
「それでいいと思うわ。きっとあなたのそういう心遣いはギンに伝わっていると私は思うわ」
「ありがとうございます」
根本的な問題が解決したわけではないがエイムの心は少しだけ救われ、馬車は静かに進んでいく。そんな中どこからか声が聞こえる。
「ちょいと待ちな」
その声を聞いてギンは馬車を止める。
「誰だ⁉」
ギンの言葉に反応して出てきたのは女性であり、男の集団を率いていた。
「あんたら帝国軍だろ?」
どういうわけかギン達はブロッス帝国軍と思われた。果たしてどうなるのか?