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グラッスへ向けて

 スールの王宮で一宿したギン達はグラッスへ向けての出発の準備をしていた。


 その準備のさなか、ブライアンがムルカに尋ねていた。


「ムルカの旦那、これから俺達が行くグラッスっていうのはどんな国なんだ?」

「グラッスは未だに帝国より侵攻を受けずにいるが、先のスールのように帝国の欲するものがあれば何かをしてくるやも知れぬから注意は必要であろう」


 ブライアンとムルカが話していると、ルルーが声を掛ける。


「ムルカ様、参りましょうか」

「うむ」


 ルルーの一言でギン達は王宮から出始める。その出口付近で多くの兵士が並んでおり、ギン達が驚愕した。


「これは一体?」


 ギン達が驚愕していると兵士の1人が声を掛ける。


「これは我らからあなた方に対する敬意の証です。是非我らに見送らして下さい」

「敬意?俺達にか」

「はい、あなた方の勇気にです」


 ギンは兵士の言う事に戸惑いつつも黙って聞いている。


「あなた方がわずかな人数でも帝国に立ち向かい勝利を収めています。我らはあなた方のような力を持ち合わせておりませんがその勇気だけは見習いたいと思います」

「そうか、俺があなた達に言える立場ではないだろうが、あなた達はあくまでも自分の国や大切な人達を守ってほしい。俺達は帝国をかき乱す存在として戦う。だから決定的な機会が訪れるまで無謀な戦いはしないようお願いしたい」

「はい、身に余るお言葉感謝いたします。それではいってらっしゃいませ」


 兵士達より見送られギン達は王宮より出る。


 王宮から出て、馬車を預けている馬小屋へと向かう途中ルルーがギンに声を掛けている。


「まさか、あなたからああいう言葉が聞けるとはね」

「何のことだ?」

「さっき兵士の人に言ってたじゃない。『国や大切な人達を守ってほしい』ってあなたがそういうことをストレートに言葉にするなんて思ってもいなかったから」

「専守防衛も立派な仕事だ。俺達には俺達の、彼らには彼らの役割がある。それを言いたかったんだ」


 ギンの言葉を聞いてルルーがギンに対して自分が思っていることを話す。


「なんて言っていいのかな?あなたは初めに私を助けに来た時も司祭様に交換条件のようなものを提示してたけど、実際は司祭様のお考えを理解したうえで私を助けに来たでしょう。結局はただそう言っただけで交換条件になってなかったじゃない」

「何故今になってその話をするんだ?」

「さっきの兵士の人やジエイに対してもストレートに思いを言うじゃない。私の時と違って」


 黙り込むギンに対してルルーは更に言葉を続ける。


「あなたも変わったのかなって、ううん、きっとあなたの本質は無自覚な優しさが所々に見られるんじゃないかと思うの。それが最近は表に出やすくなってるのかなって」

「お前がそう思うのは自由だが、俺を褒めても何も出ないぞ」

「別に何かが欲しくて言ってるわけじゃないわ。もう1つ言わせてもらえば、きっとエイムは私達と違って最初からあなたをそういう人だと思っていたんじゃないのかな」


 ルルーの言葉を黙って聞いているギンに対してルルーが更に話す。


「あなたがジエイと楽しそうに話しているのをなんの違和感もなく微笑んでいたわ」

「そうか」

「そうよ、私からは以上よ」


 そう言っている間に馬小屋へと辿りつく。

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