ミッツ教団の使者がムルカ、ルルーに次の訪問先がグラッスであることを伝えると、ムルカより司祭に魔法剣に関する書物の存在を確認してほしいと伝えられ、プレツへと戻っていく。使者が帰っていくとギンがムルカに声を掛ける。
「ムルカ殿、ありがとうございます。だけどいいんですか。司祭殿もお忙しいと思うんですが」
「本来ならば、私もこの目で確かめたいのだが同盟締結を急がねばならん。それに……」
「それに……何ですか?」
ギンの問いにムルカが落ち着いた口調で話す。
「また、恐らく帝国と戦うこととなるであろうと思う」
「それは俺の魔法剣を狙ってですか?」
「いや、それだけだはない。先程のジエイ殿の忍術という技術、古文書にはそのことが書いていたかも知れぬ」
ムルカの言葉からギンもあることを察する。
「まさか帝国は軍事利用できそうな魔法の亜種のような技術を求めていると?それでは、次のグラッスという国でも……」
「グラッスにそのような技術があるかは定かではないが用心にこしたことはないだろう」
ムルカは更に近年の帝国の動きについてのことをギンに語りだす。
「ギン殿も知っているであろうが、近年の帝国は侵攻範囲を広げておる」
「はい、大陸を超え、プレツやスールに侵攻していますからね」
「帝国はボース王国内の反乱で誕生した国。故にまとめ上げるまでに時間がかかったのだ」
ギンとムルカが話している中ブライアンが話に加わる。
「どの過程でバンスやフィファーナみたいな人材が帝国に加入したんだ?」
「うむ、バンスの実家は元々ボースの将軍の家柄、フィファーナはボース国内の小領主の娘。いずれも親ギガス派であったのだろう」
「元々の王様よりギガスを選んだって事か?」
ブライアンの疑問にムルカは自分の考えを話す。
「結果的にはそうであるが、彼らほどの者が惹きつけられるものがギガスにあるのであろう」
ムルカがブライアンに自らの考えを話している時にエイムがムルカに声を掛ける。
「あのムルカ様、ちょっとよろしいですか?」
「何だ?エイム殿」
「その、エンビデスって言う人も昔からボースにいたんですか?」
エイムがエンビデスについてムルカに尋ねているとギンが反応を示す。
「エイム、エンビデスが気になるのか?」
「はい、やっぱり私も魔術師ですし、ルルーさんの話を聞くとすごい人のようですし、そんな人がどうして帝国にいるかはやっぱり気になります」
エイムの問いにムルカが答える。
「彼も長くボースに宮廷魔術師として仕えていた。だが、彼もおそらくギガスの思想に感化され、親ギガス派に加わったのだろう。これは私の推測だがな」
「そうですか、ごめんなさい。変なことを聞いて」
「いや、構わぬ。魔術師同士何か思うことがあるのだろう」
エイムがエンビデスのことを気にし始めた。これは同時に帝国もエイムの存在に気付くのではないかという予感を感じるギンであった。