反帝国同盟にスールが加わることとなり、安堵するルルーとムルカ、その2人にスール国王が声を掛ける。
「特使殿よ今宵はそなたらをもてなしたいと思うておる。今ジエイより耳にしたが帝国軍を退けてくれたようであるし、ささやかではあるが礼をしたい」
国王の言葉を聞き、ムルカが慎ましく感謝を述べる。
「身に余る光栄感謝いたします。謹んでお受けいたします」
「うむ、では準備があるのでしばし待たれよ」
国王の言葉を聞いたルルーとムルカは兵士に案内されてギン達の待つ部屋へと向かう。
ルルー達が玉座の間を出ると国王がジエイに声を掛ける。
「さて、ジエイよ」
「はっ!」
「帝国は魔法の亜種と言える力を集めようとしている。間違いないのだな?」
「はっ!」
国王はジエイに改めて帝国の狙いを再確認し、ジエイは更に詳しい説明をし始めた。
「我がスールに伝わる忍術に関する古文書を帝国が狙っていたことは間違いありません。フィファーナ将軍に忍術を放ったことで私が忍術使いであることがばれるのも時間の問題でしょう。申し訳ございません陛下」
「いや、どの道その秘密は知られていたであろう。帝国の情報網の広さは我々の想像以上かも知れぬ。他国は古文書の存在自体知らぬはずだからな」
「陛下、実はまだお耳に入れたいことがございます」
「何だ?」
ジエイは静かに語りだす。
「特使殿達の護衛に魔法剣を使う者がおります」
「何?魔法剣とな」
「はい、彼の魔法剣は強力であり、私の火遁の術を上回る威力でした」
「まさかジエイ、その者も……」
ジエイは唇を噛みしめるように答える。
「帝国に狙われているのではないかと」
ジエイの言葉に国王はしばらく考えある事をジエイに述べる。
「ジエイよお前に新たな密命を下す」
「密命でございますか」
「彼らに同行し、帝国の情報を探るのだ」
「彼らと?」
国王はその真意をジエイに告げる。
「うむ、帝国が古文書の為に主力部隊の1つを我が国にまで向けてきた。ならばこちらからも積極的に動き、帝国の動きを見極め。仕掛ける機会をうかがうのだ」
「私も遊撃部隊のような役割でございますね」
「うむ、頼むぞジエイ」
ジエイと国王が話している中、ルルー達はギン達の待つ部屋へと着く。入室したルルー達にエイムが声を掛ける。
「あっ、お疲れさまです。ムルカ様、ルルーさん」
エイムの声掛けにルルーが答える。
「ありがとう、なんとか同盟交渉はうまくいったわ」
ルルー達の成果にギンが安堵の言葉を示す。
「そうか、良かった」
ギン達が安堵した様子で過ごしていると兵士が声を掛ける。
「特使殿、あなた方へお客様がおいでです」
「客?我らにか」
「誰でしょうね?」
ルルーとムルカの前に現れたのはミッツ教団の者であった。
「お久しぶりです。ムルカ様、ルルー様」
「貴殿はミッツ教団の者か」
「どうしたの?」
ムルカ達の問いにミッツ教徒が答える。
「司祭様より言伝を頼まれました。お2人並びに護衛の方々はこのまま北のグラッス国に向かって欲しいとのことです」
「このままグラッスへか?そういう事ならば貴殿から司祭様へお伝えして欲しいことがある」
「何でしょうか?」
ムルカは率直に教徒に伝える。
「魔法剣に関する書物をお確かめしてほしいとお伝え願う」
「承知いたしました。そのようにお伝えします」
新たな任務へと赴かんとする者達、彼らの明日はどっちだ。