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No.1033『ミミ』――03

「で、どうだった? No.1033は」


 アクリル板と、鉄鋼と、コンクリート諸々で囲まれた部屋。僕は、警備員さんと向かい合ってお茶を飲んでいた。警備員さんは紅茶が好きらしい。僕の知っている紅茶より香りがすごく上品で、ティーカップを手に取って思わず目を細めた。


 「いやぁ、思っていたより、こう? 危なっかしい? 感じでしたねぇ」

 「お前、やっていけるか? さっきも言ったが、No.1033はまだ優しい方だぞ」

 「そういえば、No.1033って。他に1000人近くも中毒者いるんですかぁ?」

 「馬鹿言え。大体発狂して自殺してるか、捕獲時に政府に処刑されるかしてるよ。ここにいるのは多くて二桁。お前も発狂して自殺すんなよ」


 頬杖をついたリラックスモードの警備員さんは、呆れたようにじろっと僕を見た。僕はツーンと横を向く。


 「ていうかぁ、なんで僕も『居室』にいるんですかぁ! 僕、中毒者じゃありませんよぉ!」

 「部屋、ここしか空いてなかったんだよ。清潔だし良いだろ。ってかそのNo.1033みたいなしゃべり方やめろ、お前がやるとキモい」

 「そんなぁ」


 僕は紅茶を飲み干して、テーブルに突っ伏した。ひどい。居室、確かに居心地良いけど、心理研究員じゃなくて中毒者みたいに見られそうでヤだ。


 そっと顔を上げる。警備員さんが、こちらを観察するように見ていた。ぱちり、と目が合う。青くて綺麗な目。ああ、かわいーなぁ・・・・・・。


 ゴンっ。


 次の瞬間、頭に衝撃。


 「よし、じゃ、明日の面談な。資料はこれ」


 「ってー・・・・・・」と頭を抑えながら、涙目で警備員さんを見る。片手に重そうなファイル。今、殴ったのか? 殴ったな。パワハラで訴えるぞ。


 「次、No.1088だから。じゃ、また明日10時に迎えに来る」


 そう言って、カードキーで居室の扉を開ける彼女。開けたらまた扉が出てきて、虹彩認証を求められる。


 「警備員さんはどこ行くんですか?」

 「宿直室」

 「えー、僕もそこ泊まりたいですぅ」

 「私と同じ部屋で過ごしたいか。セクハラで訴えるぞ。あと喋り方キモい」


 もう一段階、なんかよく分からないセキュリティを突破して、扉が開いた。


 「僕が自由に出入りできないのは何でですか」「ここのセキュリティは全部、私に対応してるから」「僕も外出たいです!」「諦めろ。お前が外に出ても私は安全を保証できない」「え、うわっ、怖っ! 闇見た! こわっ!」と軽口をたたき合いながら、警備員さんが出て行くのを見送った。


 そして、テーブルの上に載っていた資料を開く。表紙には、大きく「No.1088」と書いてあった。

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