虎の落とした魔石を見る
「この魔石……」
魔石に妙な違和感を持つ
片手しか使えない為、剣を先に仕舞い虎が落とした魔石を拾い確認する
一旦虎の魔石を地面に置いてバックから1つ魔石を取り出す
この魔石は1階層で倒した蠍が落とした物だ
地面に置いておいた虎の魔石の隣に置いて見比べる
見比べて虎の魔石は蠍の魔石より大きいと分かる
……この魔石大きいな。中ボスくらいある
中ボスやボス以外の魔物の魔石は同じ大きさ、が迅の知っているダンジョンの規則性
だが目の前にある魔石はその規則性を否定する物だった
……3級ともなると種類が違えば道中の魔物でも大きさが変わるのか?
迅が3級に挑むのはこのダンジョンが初めて、3級は入口の見た目も違っていた事からダンジョン内でも下の等級とは色々と違う可能性があると迅は考える
ダンジョンが現れてから20年
20年は短くない時間だが未だにダンジョンの中で解明されているのはほんの一部で未知に溢れている
魔石をバックに詰め込む
……取り敢えず帰るか。治療はどうするか
治療で迅が取れるのは3パターン
1つ目は大人しく病院に行く
金と時間はかかるが確実
2つ目は治癒の指輪での治療
今負っている傷であれば雫に渡した治癒の指輪で完治は難しくともほぼ回復は出来るだろう
3つ目は夢に頼む事
夢の異能は治療が可能な異能、本人曰く能力の応用との事
……夢は忙しいだろうから最後だな。雫は忙しいか分からないし一旦連絡を取って確認するか
魔法の効果が切れる前に1階層を走り抜ける
虎を倒すのに時間がかかっていたせいで既に蠍の群れが湧いていた
素早く正確に関節部を切り裂いて倒す
関節部を切るのは片手で事足りる
蠍の攻撃より先に突っ込み反応される前に切り伏せる
魔石を回収してさっさと入口から出た
止血をしつつ雫にメールをする
『今時間あるか?』
『時間大丈夫ですよ。どうしました?』
『良かった。治癒の指輪を貸してほしい』
『治癒の指輪ですか。何処で落ち合いますか?』
……ここからだとどこが近いか。あの工場は少し遠いな。近いのは取引所だな
迅は今の位置から近い場所を考える
スポンサーをしている社長の居る工場はここからでは遠い、となると近いのは取引所
『なら取引所で頼む』
『分かりました。今からだと20分くらいで着きます』
……ここからだとどのくらいだろうか。30、いや余裕もって4、50分くらいにしておくか
『急がなくていい。こっちは20分以上かかる。多分4、50分』
『分かりました』
取引所に向かう
20分以上は掛かり取引所に着いた
取引所に入ると迅に視線が集まる
それもそのはず、迅は今負傷しているのだ
止血は済ませているが傷口も見えている
探索者は怪我が多いが怪我をしていても目立たない訳では無い
「怪我してる」
「凄い傷、ダンジョンで負ったのかな?」
「凄い痛そう」
「あれは病院行った方がいいんじゃ……」
周囲がザワザワしている
……流石に目立つか。さて、雫は何処にいるか
周囲を見渡して雫を探す
……そろそろ迅さんが来る時間のはず、治癒の指輪という事は強いダンジョンに潜る予定でもあるんでしょうか
雫は椅子に座って飲み物を飲み待っていた
迅は急がなくていいと言っていたが雫は連絡から20分で着いて待機している
雫は丁度やる事を終えてやる事がなく暇だったのだ
……あれ、入口が騒がしい。何かあったんですかね
騒がしくなった事に気付いた雫が入口に視線を向けると迅を見つけた
そして騒ぎの中心が迅だと気付く
……迅さんだ……あれ?
雫は目を見張る
その理由は迅の傷を見たからだ
軽傷と言えない程の傷を負っている
雫は急いで立ち上がり駆け寄る
「ちょっ……迅さん!? うわっ、酷い傷ですね」
近付くと迅の傷の酷さが更に分かる
ただ既に的確な応急処置がされていた
「来ていたか。治癒の指輪を貸してくれ」
「私が治療します」
雫は渡さず治癒の指輪を自分の指に着けた
魔力を注ぎ治癒の効果を発動させて指輪を向ける
光が傷口を包み込む
「この席に座ってください。あっ、背中に傷はありますか?」
「いや、背中は無い」
迅は雫に言われて近くの席に座らされる
「この傷は魔物ですね。何があったんですか?」
……迅さん程の実力者がこの傷を負ったとは戦っていたのは相当強い魔物だったかな
「あぁ、そうだ。想定外だったが強い魔物と戦って負傷した」
軽くざっくりと何があったか説明をする
「中ボスとかですか?」
「いや、違う。あれは普通の魔物」
2階層は中ボスの部屋では無かった
湧き方も普通の魔物と同じだった
「普通の魔物……それでこの傷ってどのダンジョン行ったんですか?」
「3級ダンジョン」
「へぇ、3級ですか。誰かとパーティ組んでです?」
「いや、1人で」
「……ちょっと何言ってるか分かりません」
雫は耳を疑った
単独で3級ダンジョンに挑む人なんて初めて聞いたからである
「うん? 1人で3級ダンジョンの2階層で出会った魔物に苦戦した」
「寧ろ何故1人で勝てるんですか……いや、4級ボス単独出来るなら行けてもおかしくないですかね」
迅が単独で4級攻略したと言うのは迅本人から聞いていた
だから雫は何とか説明を飲み込み納得が出来た
「1階層の魔物はそんなに苦戦しなかったんだが2階層の魔物はかなり強くてな」
「そ、そうなんですね。苦戦するなんてそんなに強い魔物でしたか」
「あぁ、新しく魔法を習得出来なければ死んでいた」
「新しく魔法を習得ですか? それはどんな魔法ですか?」
雫は新しい魔法に興味津々で聞く
……聞いた事はありますが本当にとは
絶体絶命に陥った時、突然新しい魔法が習得出来るようになる。そう言った話は探索者の中では噂程度で流れていて実際に魔法を得た者も居ると言われている
だが噂程度で信憑性は薄かった
「魔法名は
発動後、迅の動きが早くなっていた
使おうとしていた
「おぉ、特化強化の魔法ですか。良いですね」
雫や迅が使っていた身体強化の魔法ブーストは身体能力を全体的に強化する魔法
一方
特化強化は身体能力を全体的に強化する魔法よりも高倍率のケースが多い
「治癒の指輪ではこれが限界ですね」
治癒の指輪での治療が完了する