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第17話 オーク戦

 休憩を挟んで下の階層へ行く

 道中は迅がぎ払い順調に進む

 8階層へ続く階段で千尋の身体が震える


「つ、次はボスの階層です」

「そうか、休憩を挟むか?」

「迅さんが大丈夫であれば私達はそのまま行けます」

「問題無い、中ボス後に休憩をしたからな」


 階層は少なく魔物も弱かった

 迅の体力は余裕がある


「な、なら挑みましょう」

「分かりました身体強化ブースト


 階段を降り切ってボスと相対あいたいする

 大剣を持った体格の大きいオークだった

 2人は後方で待機

 迅は剣を抜いて前に立つ

 少しオークの様子を窺う

 オークは大剣を片手で持ち上げて突っ込んでくる

 ドンドンと音を立てて走り大剣を振り下ろす

 迅は横に飛んで回避、着地後足を切る

 そして背後に回る


 ……背後に回った。移動しないと


 雫はすぐに位置を変えて迅の姿が見える場所に陣取る

 シールドを張るには迅が見えていないと難しい

 足を切られ体勢を崩したオークに迅は追撃を入れる

 浅く踏み込み素早く剣を連続で振るう

 浅い傷を複数与えるが大したダメージにはなっていない


 ……浅いか


 大剣の横薙ぎを後ろに飛んで避ける

 重量のある大剣を剣で防ぐのは難しい

 大剣による攻撃を避けて素早く剣で切りかかる

 僅かな動きで攻撃を躱して腕を切った


制限解除オーバー火炎球ファイア


 千尋が動く

 荒々しく燃え上がる炎の球を作り出す


 ……今はチャンス


 今オークは迅に夢中で千尋に背中を見せている

 今放てば確実に当てられるが止まる


 ……待った。チャンスだから狙わないと


 千尋は詠唱を続ける

 1つまた1つと炎の球が増えていく

 分割では無い炎の球を一気に叩き込む

 2人が見える位置に居た雫はすぐに千尋の行動に気付いて意図に読む


 ……ちーちゃん、なるほどね。これ迅さんに伝えたいけど


 千尋が準備をしている間、オークを迅に引き付けて欲しいと伝えたいが今迅はオークと斬り合っている

 そしてオークの巨体で阻まれて魔法を準備している千尋の姿は見えていない

 戦闘中の迅に伝えるのは難しい

 雫は頭をフル回転させて考える


 ……ボスとなると声は気付かれる。でも私にヘイトが向くかもしれない。引き付けられるけど……


 ……今がチャンスの筈だ。何故魔法を撃っていない


 迅は千尋が魔法を撃っていない事に気付く

 今背中を向けていて絶好のチャンス、なのに撃っていない

 攻撃を避けて素早く周囲を見渡す


 ……雫が居るな。あの位置なら


 雫を見つけた

 そしてあの位置からなら千尋が見えると考えた

 迅と雫は目が合う


 ……目が合った


 雫は素早くジェスチャーをする

 これは咄嗟に考えた物

 杖の先端を向ける

 手のひらを上に向けて4本の指をクイクイと指を動かす

 目が合ってからの僅かな時間で出来たジェスチャー

 すぐに迅はオークに視線を戻して戦う


 ……急だったからジェスチャーしたけど伝わらないですよね……やっぱり声の方が……


 ……今のは杖を向けてあれはかかってこい? どういう意味だ。杖を向ける……


 迅はジェスチャーから雫が伝えたい事を何とか解こうとする

 オークの攻撃を避けて一旦距離を取った

 剣を構え直す


 ……状況から今何を伝えたいか。杖を向けたのはオークに


 急いで思案する

 杖の先端は迅ではなくオークに向いていた


 ……杖、オーク、敵、魔法、攻撃魔法?


 今は戦闘中、思考する時間を長引かせられない

 無理やりな連想ゲームを行う

 攻撃魔法ならこの場だと扱えるのは千尋しか居ない


 ……千尋が準備してる? だとしたらもう1つのあれは……挑発、引きつけろか?


 大剣を横に飛んで躱す

 浅く踏み込んで素早く胴体に切りかかる

 オークが拳を振るってくる

 剣で防いで受け止めた

 魔道具を使い膂力を強化して押し合う

 雫の言いたい事が引き付けろならこの状態を保てばいい

 ジリジリと押し合い拳を弾く

 体勢を崩したオークに一閃

 大剣の攻撃を障壁が阻む

 深く踏み込んでオークの腹に横薙ぎを放つ

 直後、複数の炎の球が背後からオークに叩き込まれる

 炎がオークを呑み込んで焼く


 ……これ危ないな


 炎が大きい

 迅は炎に巻き込まれないように距離を取る

 オークは暴れるが炎は消えず焼き尽くされた

 魔石が地面に転がる

 魔石を拾い周囲を確認した

 魔道具は落ちていない

 2人が迅の元に駆け寄る


「ひ、引き付けありがとうございました」


 千尋がお礼を言って頭を下げる


「あぁ、いや、俺は普通に戦っていただけだ」

「良くあれで気づきましたね」


 雫はジェスチャー後、これじゃ通じないと思っていた

 迅の方も分かっていた訳では無い

 あくまで導き出した答えが偶然合っていただけ


「分かった訳では無い。杖を向けるで千尋の攻撃魔法、次のジェスチャーは挑発、引き付けろって意味合いだと思ってな」

「完全一致です」

「そうだったか」


 奥の転移装置の元に行き周囲を確認したが魔道具は見つからなかった


 ……流石に2連続で魔道具はありませんよね。借りてる魔道具の代わりになるような魔道具が欲しかったんですが


 ……魔道具は無さそう。残念


 ……まぁこんな物だよな。寧ろ最初に手に入ったのが運が良い


 三者三様の反応を見せる


「入口に行くか」

「魔道具はなさそうですし行きましょう」

「は、はい」


 3人は転移装置を使い入口に転移する

 ダンジョンは崩れて消滅した

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