目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第14話 蠍の群れ戦闘

 深く集中した状態で剣を構え直す

 自然と型が変わっていた

 尾を切られた蠍が突っ込んでくる

 群れの中で一番槍なのだろう

 尾を切られたと言うのに果敢に突進をしてくる

 そして他の蠍は別方向から尾で援護をする

 先程と同じ手、単純で数の利を活かした連携

 鋏が一番最初に届く

 迅は鋏の攻撃が自身に届く前に蠍の全体をよく見た

 関節部がどこにあるかを確認する

 外殻は切れない、狙いの関節部の位置を記憶する

 鋏が当たる瞬間に剣を振るう

 静かに素早く振るわれた剣は鋏を容易く切り裂いた

 先程見て確認した関節部を素早く丁寧に切り捌いていく

 力任せの大振りはしない

 関節部を狙うならそこまでの力は要らない

 剣が波が打つように軌跡を描く


 ……鋏と尾を切っても倒せない。胴体か


 尾と鋏を切っても動いている

 攻撃手段は失っているから攻撃は出来ない

 ほぼ無力化はした

 しかし、目的は無力化では無く討伐

 片足で軽く飛び上がり蠍を上から見て的確に外殻の隙間を狙い胴体を両断する


 ……胴体の関節部も分かった、次


 着地と同時に尾の攻撃を剣で受ける

 剣を傾け尾を流す

 踏み込んで尾を半分に両断

 蠍の頭を踏み付けて胴体を2つに分かつ

 胴体を切ると動かなくなり消滅した

 先程倒していた蠍も既に消滅していた

 4級の魔物より透明度の高い魔石が地面を転がる


 ……もっと早くか。無駄が多い


 次の蠍に接近する

 尾を伸ばそうとした瞬間、深く踏み込み関節部に鋭く突きを繰り出す

 刺し切り落とす

 続けて胴体を刺し貫いた

 迅はもう蠍の動きを見切った

 10匹も居れば大体一気に何パターンか見れる

 もう何度も見た

 尾の攻撃も鋏での攻撃パターンも大体分かった

 足りない分は予想と経験で補えばいい


 ……この程度か


 3級の魔物は強い

 実際外殻は剣が通らなかった

 攻撃も早い部類で軽くない

 それに数も多い

 迅も同時に10匹は初めて見る


 動きを見切り尾の軌道上に剣を置いて攻撃を受け流す

 近付いて剣を振るう

 伸びた尾を切って胴体を切り裂く


 ……慣れてきたな


 次々と蠍を切り倒していく

 10匹目を倒し終えた

 戦闘が終わり大きく息を吐く

 10個の魔石が地面に転がっている


「これならもう少しやれるな。想定よりは楽」


 魔石を回収してバックに詰める

 迅はもう少し先に進む

 また蠍の大群が湧いてきた

 また10匹だがもう動きは分かっている

 脚力を強化する

 地を蹴り瞬間的に距離を詰めた

 蠍の攻撃は待たない

 先手速攻、頭を踏み付けて逃がさない

 胴体を切り裂いた

 そこで止まらずに素早く標的を変えて近づく

 次々と切り倒していく

 尾による攻撃は軽く身体を逸らし躱す

 下から上へと切り上げて尾を切る

 そして切った尾を蹴り飛ばす

 少し離れた位置に居た蠍に叩きつけて怯ませる

 手馴れているかのように蠍を捌く


「これならもっと倒そう。3級はどのくらいの値段か知らないが4級よりは高いはずだ。特訓にもなるしな」


 蠍型の魔物を倒して魔石を集める

 ただ迅は身体強化の魔法と魔道具で魔力を使っている

 長時間の戦闘は出来ない

 魔力残量に気を付けて戦っていく

 時間はある為、湧くまで休憩をする

 出てくる数は10、11匹程度

 単体の魔物より群れの魔物の方が魔石集めには良い

 それから暫く蠍の魔石を集める

 途中から魔道具無しで倒し始めた

 鋏を切り飛ばして胴体に剣を突き刺す


 ……一気に10匹倒せるし稼げるな。明後日も来るか。少し遠いけど


 明日は5級ダンジョン攻略がある

 流石の迅でも今はダンジョン攻略後に3級の魔物は挑まない

 次挑むのは明後日以降になる

 住んでいる場所からは少し遠いがその分運動になるから悪くは無い

 暫く休憩と狩りを繰り返して魔石を集めた


「魔力もかなり減ってきた。そろそろ終わりにするか」


 最後に1回蠍の群れを倒してから外に出る

 入口から出たら丁度探索者のパーティが来ていた

 何やら会話をしていて迅には気付いていない

 人数は5人、防具も武器も高級そうな見た目をしている

 性能も高いだろう

 だがそれ以上に目立つ見た目をしている

 前衛と思しき人物の付ける鎧や兜には金色のマークが書かれていて後衛と思しき人物がつけてるローブにも同じようなマークがついている


 ……あれはクランのマークだったな。何処だったか


 迅はそのマークに見覚えがあった

 クランの1つ迷宮狩人のマークだ

 そのマーク以外にも派手な物が付いている

 貴金属類を身に付けているのだ

 迅は最初魔道具かと思ったがそれにしては派手な見た目過ぎる

 見た目はともかく3級に挑むという事はメンバーの中でも精鋭なのだろう

 別に関わる事も無い為、5人の横を会話を邪魔しないように静かに通る

 そして魔石の換金をする為に取引所に向かう


 〜〜〜〜


「探索者……1人?」


 他のメンバーが会話に夢中の中、1人だけ迅に気付いた

 5人の中で派手な装飾が1番少ない人物


 ……ダンジョンから1人で……あれは何者だ


 3級ダンジョンからたった1人で出てきた探索者の迅をジッと静かに見る

 仲間が居る様子は無い、クランのマークも付けていない


 ……声を掛けるか


 興味が湧き迅に声を掛けようと追い掛けようとしたところ、後ろから呼び止められた


「どうかしたか」

「……いや、なんでもない。準備は出来たか」


 チラッと後ろを確認すると既に迅の姿は無かった


「あぁ、出来てるぜ」

「今日は3階層に続く階段捜索だよね」

「そうだ。今回はマッピングだ。だが気は抜くなよ!」


 5人は準備を終えてダンジョンに入る


 〜〜〜〜


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?