椅子の背もたれに体重をかける
……よく考えたら4級ダンジョンに連日潜ってましたもんね迅さん
助けて貰った翌日にダンジョンに来ていないか淡い期待を抱いて向かったら居た
連日でそれもその日に中ボスを倒している
……中ボス倒して1日休んでボスに挑むのもハイペースですし数日休むべきとか思いましたが……
今日の解散後に気付いた
ボスと戦ったのだから数日休憩を挟むべきだと
あの場では実績作りをしないとと雫は焦っていた
そして迅はいつでも行けると言った
千尋は明後日以降なら行けると
だからその場で最速の明後日にダンジョンアタックすると決めた
家に帰ってから今からでも変えるべきか悩んでいたところ
……心配は無用でしたね
迅は数日休むどころかその日のうちにダンジョンアタックをしている
前衛で魔物を引き付けて戦っていた迅がその調子なら明後日挑むでも問題は無いだろう
雫や千尋は余り動き回っていないので体力の消耗は少ない
魔力は1日あれば完全に回復が可能
「次は5級のダンジョン、ちゃんと迅さんの動きに合わせられるようにしないと」
再度録画を再生して迅の動きの確認を行う
〜〜〜〜
家に帰った迅は冷凍食品を取り出して温める
……2箇所は初めてやったな。流石に疲れた。体力ねぇな。もっと鍛えるべきか
いつも以上の疲れを感じる
6級は魔物は弱いがダンジョンなだけあって最深部まで距離があった
魔物の数も多く思っていたよりも体力を消費した
もっと鍛えるべきだと考える
「おや? 遅かったね」
丁度夢が風呂から出てきた
バスタオルを巻いて居間に現れた
「帰ってきていたか」
「いやぁ、今日は休みだよ。昨日クランの精鋭で3級ダンジョンに挑んだからね」
夢は喋りながら冷蔵庫から麦茶を取り出してコップを注ぎ飲んでいる
「休みか……3級」
3級ダンジョン、迅達が攻略した4級よりも危険度の高いダンジョン
3級ともなると攻略された数は少ない
未だに3級以上のダンジョンの大半は残っている
道中の魔物もボスも4級の比では無い程に強い
迅は挑んだ事も無い
「順調か」
「あぁ、順調だとも明日、中ボスの討伐に向かう」
「そうか、気をつけろよ」
「おや、心配かい?」
「あぁ、心配だ」
迅にとって血の繋がった唯一の家族、例え自分より強い探索者でも心配はしている
「お兄ちゃんに心配される程弱くないんだが……」
「そうだな」
それから少し雑談を交わした後それぞれの自室に戻る
翌日、迅は少し遠出をした
迅の住んでいる所から少し離れた場所にある4級ダンジョン
今日は攻略などは考えておらず魔石集めの狩りだ
端的に言えば金稼ぎ
……3級か。確かこの近くにもあったな
挑もうとしている4級ダンジョンの近くに3級ダンジョンがある
階層に湧く魔物も数や質が違う
4級ですら1人で挑む人は珍しい
3級となれば挑む者は居ない
「……試しに行ってみるか」
試し、あくまで1階層で魔物と戦うだけ
そのつもりで迅は4級ダンジョンは辞めてアプリで位置を確認して向かう
思っていたよりも近く10分程度で着いた
……ここか。近かったな。見た目は……これは水晶か?
入口の見た目は硬そうな岩に水晶が生えている
こんな見た目のダンジョンは初めて見た
暫く観察をする
触って確認すると水晶も相当硬いと分かる
「3級ともなると入口の見た目から変わるのか」
入口から覗くと階段が下に続いている
迅はそのまま1階層に降りていく
初めての3級の為、念の為に予め剣を抜いて身体強化の魔法を自身に掛けた
1階層に降り切る
洞窟型と同じような見た目だが形様々な水晶が輝いて照明のように周囲を照らしている
周囲を見渡す
周囲に魔物は居ない
「このダンジョンの魔物は
複数の種類の魔物が同じ階層に存在しているダンジョン
複数の種類が湧くのは珍しいが無くはない
そうして周囲を見渡して歩いていると魔物が現れた
蠍型の魔物だった
蠍と言っても小さくは無く1m以上はある蠍だ
それも1匹では無い
わらわらと湧いてくる
……想定より数が多いな。余り見たくない
群れの魔物でも5体くらいだと思っていたが蠍は10匹は見える
迅は蠍が嫌いな訳では無いが1m以上の蠍を10匹居る、同時に見るのは少しきつい
剣を構える
見た目からして外殻が硬い
そして針の着いた尾が危険と分かる
尾を伸ばした攻撃を剣で受ける
受け切れるが軽くは無い
もう1匹尾を伸ばして攻撃してきた
半身を逸らして避ける
距離を少し取った後、迅は剣と腕のリーチを利用して素早く振るう
外殻に当たり音が響く
本気の一撃でもヒビも入らない
素早く複数回切りかかる
尾を振るう攻撃を避けて少し距離を取る
「無理か、なら狙うのは関節部か」
節足動物は外骨格同士の間に関節を持つ、関節部は基本的に外骨格よりも柔らかい
動いてる魔物の関節部を正確に狙うのは難しいがここを打開するにはそれしかない
深呼吸をして集中
蠍は迅を囲むように動いている
意思疎通をしているかのようにスムーズだ
……時間をかけたら不利
真正面に居た蠍は尾を突き出して攻撃を仕掛ける
身体を軽く逸らして躱す
そして伸びきった瞬間に狙いを定める
動き出す前に素早く剣を振るう
関節部を切り裂いた
迅の想定通り、外殻よりも柔らかく関節部は切れた
しかし、尾を失っても蠍には
鋏で襲いかかってくる
他の蠍は尾を伸ばして援護するように攻撃を行う
攻撃を躱し靴で脚力強化をして蹴り飛ばして壁に叩き付けた
尾の攻撃は避ける
避けきれない攻撃は剣で捌く
何とか攻撃を凌いだ
しかし、すぐに次が来る
息を吐く
……足りないな。もっと深く
周囲の音が聞こえない程に深く集中をする
敵を倒す為に全神経を注ぐ
今日は試しの予定
3級の魔物に今の力量でどのくらい通じるか試す良い機会