目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第5話 防具改良

 店に並んでいる装備を見ていく

 剣や槍、短剣、鎧など多種多様な装備が並んでいる

 ここに並んでいる物は全て店長の式が制作した物

 武器や防具の種類も多く価格が比較的安価な為、金に困っていた迅はこの店の常連になった

 比較的安価と言っても他の店に品質が劣る訳ではなく性能はしっかりとしていて4級ダンジョンでも通じる性能を持つ

 迅は彼女の腕に全幅の信頼を置いていて防具に関しては全部式に任せている

 売っている装備の性能は良いが立地が悪いのか装備が余り売れないといつも式はなげいている

 装備を見て待っていると奥の部屋から式が顔を出す


「この防具、改良してもいい?」

「好きにしろ」


 今迅が使っているあの防具も式が製作した防具で定期的に式の手で改良がほどこされている

 その為、ダンジョン内の鉱石が使われ軽量な割に防御性能も高い

 定期的に改良が施された事で元々は店売りの防具だった物が迅の体格や戦い方に合うように作り直されている


「ちなみにこの損傷は誰から受けた物? ボス?」


 式が確認の為か迅に質問をする


「4級ダンジョンの中ボスだ」

「どんな中ボス?」

「人狼型」

「ほほう、人狼型か強かった?」

「あぁ、強い魔物だった」

「中ボスって事は……次は同じダンジョンのボスに挑む?」

「あぁ、その予定だ」

「なら余り重くならない程度に鉱石混ぜて防御力上げないと厳しいかな……うん、OK、後は任せて」


 式は呟きながら奥の部屋に戻っていく

 暇になり椅子に座って待つ

 その間にも群れの魔物の対策を考える

 迅は今までにも群れの魔物と戦った事はあるがその時は全て剣1本で仕留めていた


 ……群れの魔物用に他にも武器を買うべきか。短剣か剣か……持ち運び考えて短剣だな。短剣は幾らだ


 短剣が並ぶ場所に行き値段を確認する

 値段は物によって違うが1万や2万円と書いてあった


 ……短剣で1万か高いな


 ダンジョン産の鉱石を使う装備はどうしても値段が高い

 この店は比較的安価、つまり他の店なら同じような物でももっと高い

 今まで迅が剣1本で戦っていた理由は金銭的な問題で他の武器を買うのを渋っていたから

 値段はするがその分の品質はある


「……諦めるか。この剣なら何とかなるか」

「よし、終わったよ」


 防具を抱えて式が奥の部屋から出てきた


「早いな。もう終わったか」

「鉱石部分は損傷してなかったからね。おや、短剣見てるけど買う?」

「いや、良い。この剣だけで充分だ」

「剣、あぁその魔道具?」


 式は迅が携帯している剣を見る

 この剣は式が作った物では無いのだ


「そうだ」

「本当に魔道具ってとんでもないよね」

「そうだな。そのお陰でこちらは助かっている」


 迅が使っている剣は魔道具である

 数年前に攻略したダンジョンで見つけた剣

 この剣は魔力を通す事なくある効果を永続的に発動している魔道具の中でも異質な存在


「防具はどういう改良を入れた?」

「全体的に防御性能を上げた。でも気休め程度、相変わらず無茶をしてるよね」

「確かに4級単独は少々無茶をしているか」

「理解出来てないんだ」


 式はため息をつく


「何を」

「ううん、なんでもない。防具破損したらまた来てよ。安く修復してあげるから」

「あぁ、その時は頼む」


 迅は防具をしまって店を出る

 コンビニに寄ってアイスを2つ買い家に帰った


 ……帰ってきてないか。忙しいか


 アイスを1つ冷凍室に入れて冷蔵庫に紙を貼り付ける

 そしてソファーに座り1つを食べ始めた

 食べてる最中に雫との会話を思い出す


「防具の修復終わったから明日ダンジョン行けるな」


 迅は雫との会話時点では防具の修復が明日までかかると思っていたから明後日以降と言った

 だが防具の修復は今日のうちに終わり明日もダンジョンに行ける


 ……明日はダンジョンで魔石稼ぎだけでいいか。急ぐ必要は無い


 時間をかければ先にボスを倒されて攻略される恐れがある

 しかし、今回の攻略は1人では無い

 なら下手に急ぐのは悪手になる

 明日挑むとなれば雫達の準備が万全になるか分からない

 準備が万全じゃない状態で挑むのは危険

 雫以外にももう1人居て2人とも4級ダンジョン経験者の後衛と聞いているが逆に言えばそれくらいしか聞いていない

 経験者と言っても2人がどのくらいの実力者かは詳しい事は分からない

 アイスを食べ終わり片付ける


「明日、少し下の階層も見ておくか」


 翌日

 ダンジョンの魔物を切り倒して魔石を集める

 少し下の階層で群れの魔物の動きを確認しておく

 魔物の攻撃を避ける

 周囲の魔物の数と位置を素早く確認する

 近くの魔物を剣で切り裂く

 次に近い魔物に接近する

 体勢を変えずに柄頭で魔物の顎を叩く

 下から弧を描くように振る

 剣先が地面を掠めて魔物を切り裂いた


「こんな感じか。問題は無さそうだな」


 攻撃を剣で防ぐ

 魔物を思いっきり蹴り上げる

 自由になった剣で一振り、切り伏せた

 落ちた魔石を回収する


 ……魔石も稼げた。このくらいでいいか


 明日の攻略に備えないと行けない

 疲れが残らないように早く切り上げて入口に向かう

 湧いていた魔物を仕留めて魔石を回収

 ダンジョンの外に出たら取引所に行き換金を済ませて家に帰る


「あぁ、そうだ。連絡」


 雫に送るメールを書く

 まだ連絡をしていなかった

 メールに明日と書いて手を止める


 ……明日の……何時にするか。朝5時は早いか。6時……もっと遅い方がいいか?


 迅は他の人より早くダンジョンに入るつもりでいつも朝早く挑んでいる

 1人ならそれでも問題無かった

 しかし、今回は他に2人のメンバーが居る

 いつもの1人で挑むのとは全く違う

 朝早くは来れない可能性がある

 雫はいつでも動けると言っていたが動けるのとパフォーマンスが万全は同じでは無い


 ……無難な時間……10時くらいにしておくか。途中、中ボスのエリアで休憩を挟むか


 無難に午前10時、現地集合と書いてメールを送る

 少し経つとメールの返信が来た


『分かりました! もう1人にも伝えておきます』


 メール文でも元気だと分かるような返信が届いた

 軽く見てメールを閉じる

 これで今日迅がやる事は終えた

 後は攻略に備えるだけ

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?