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第3話 勧誘

 人狼は大きくよろめく

 深い傷を負っているがまだ死んでいない

 迅は追撃する

 踏み込み剣を強く握る

 今の体勢から繰り出せる一撃は1つ

 軌跡をなぞるように剣を切り上げた

 人狼は体勢を崩し隙を晒している

 それ故に回避が出来なかった

 胴体に再び大きな斬撃の傷を負う

 人狼は叫び声を上げて消滅していく

 そして人狼が居た場所に魔石が転がる

 道中の魔物が落とす魔石よりも大きい魔石

 回収してバックに詰める


 ……魔力にはまだ余裕ある……傷も指輪で完治したし行くか


 下に続く階段を降りて8階層に行く

 そして少し歩いて魔物を探す

 ダンジョンによっては中ボス前後の階層で魔物の種類や数が変わる事がある

 これはその確認だ

 周囲を確認しながら先に進む

 すると四足の狼の群れと遭遇した


 ……狼の群れ……数は1、2……5体か


 剣を構えて後ろをチラッと一瞥する

 群れの魔物の厄介なところは数

 特に囲まれると1人で対処は難しい

 通路の幅が広くは無い

 しかし、魔物が迅の隣を通れる程度の幅はある

 突っ込んで剣を振るう

 狙うのは中央に居る魔物

 大抵群れの魔物は中央に居るのがリーダー格

 振るった剣は当たらなかった

 後ろに飛び退かれて躱されたのだ

 剣を振り終わる前に隣に移動していた2体が動く

 多数である群れの魔物らしい連携

 同時に迅へ飛びかかる

 二方向同時は防御は不可能

 地を蹴り後ろに下がる

 飛びかかってきた魔物が着地するタイミングを狙う

 着地直前に一閃

 一筋の剣閃が走り2体を切り裂く

 真横に移動していた1体が迅に噛み付こうと飛びかかる

 剣を片手に持ち拳を振るう

 鼻を殴りひるませる

 片手で剣を振るう

 殴られて怯んだ魔物を切り裂いた

 すぐ標的を変えて接近する

 剣の間合いに入り浅く踏み込んで剣を振るう

 避けられる

 振り切る前に一歩踏み込んで距離を詰める

 二撃目で切り払う

 最後の1体

 迅目掛けて飛びかかってきた

 噛み付こうと大きく開けた口を狙う

 口の中に剣を突き刺す

 魔石を回収する


 ……魔物の種類は分かった。家に帰って群れの魔物対策も考えないとな


 迅は道中の魔物を倒して魔石を回収しながら入口に向かう

 中ボスを撃破出来た

 それだけでなく下の階層に出てくる魔物の種類を確認出来た

 充分な成果だ

 入口に着いて外に出る


「あっ!」


 大きな声が聞こえて足音が近付いてくる

 チラッと声の主の姿を確認した

 するとそこには昨日助けた少女が居て駆け寄って来ていた


「良かった。今日も居た。ええっと、今はダンジョンから出てきたところですか?」


 少女はホッと胸を撫で下ろす


「あぁ、そうだが」


 迅は周囲には確認するが誰も居ない

 1人で来たようだ

 服装は昨日とは違うが似ている、ダンジョンに入る用の装備だろう


「それで何用だ」

「あ、あの、クランに所属していますか?」


 緊張した様子で質問をする


「クラン?」

「はい、あっ、クランと言うのはスポンサーの支援を受けている探索者の集団の事で」

「知っている。俺は所属していない」

「勧誘はされてません?」

「されていない。それがどうした」


 勧誘されるのは探索者の中でもごく一部

 クランに勧誘された探索者と言うのはかなり少ない

 夢は数少ない勧誘された側の探索者


 ……流れが読めないな。俺がクランに所属していると不都合でもあるのか?


 迅には少女の質問の意図が分からない

 クランに所属しているかはスポンサーが公式で出しているリストを見れば分かる話

 最も本人に聞くのが確実ではある

 少女は深呼吸をして口を開く


「私が所属しているクランに入りませんか?」

「は?」


 迅は思わず声が出てしまう

 少女がクランに所属している事にも驚いているがそれ以上に勧誘された事に驚く

 勧誘されている理由が分からない


 ……助けたから? いやその程度で? なんの意図があって……


 クランに所属する探索者は探索者の中でも精鋭揃いだ

 スポンサーが金を出すのだから実績を積める強い探索者が必要になる

 クランに所属していない強い探索者は探せば多くは無くとも何人かは居るだろう


「クランに? どういう事だ」

「クランと言っても小規模でスポンサーの会社も大きい会社ではなくて……今人集め中なんです」

「あぁ、成程、だから俺を勧誘したのか」


 迅は4級ダンジョンに1人で潜れる人物

 最低でも中堅ちゅうけんと呼ばれるくらいの実力はある

 小規模で人を集めているのなら丁度良いくらいの人材だろう

 クランに入れるのは探索者にとってメリットだ

 相性の良いクランメンバーとパーティを組める

 探索者同士の交流が出来る

 武器や防具の購入費を一部負担してくれる

 実績によって給料が振り込まれるなど

 例え小規模でも恩恵を得られるのは大きい


 ……別に断る理由は無いな。それに多少の恩恵でも欲しい


「そのクランに所属するメリットはなんだ? クランと言えば幾つかのメリットがあるが」


 迅は二つ返事で入るとは言わずに質問をする

 このクランが探索者にどのようなメリットを与えるのかを知るのは重要

 メリットが無ければ入る理由も無い

 少女は待っていたかのように語り出す


「メリットですね! クランメンバーとパーティが組めるのとあっ、武器や防具の修復と購入費の一部を負担してくれます」

「一部とは何%だ?」

「ええっと……ちょっと待っててください」


 少女はメモを取り出してページを捲る

 何ページか捲って目的のページを見つけたのか食いつくように確認している

 あるページの文字を読むとバッと顔を上げた


「2割です! 20%です!」


 ……2割か。悪くないな


 大手ならもっと負担してくれるだろう

 しかし、それは大手の話に過ぎない

 迅は大手に勧誘されてる訳でも所属している訳でもない

 クランに所属していない迅からすれば2割負担でもかなり魅力的な話だ

 防具が特に破損しやすいせいで金が掛かる


「それでクランメンバーは何人だ?」

「今2人です。私ともう1人後衛が」

「2人とも後衛か」

「で、でも異能持ちです! それに4級ダンジョン経験者でもあります」


 必死にアピールをしている


「異能持ちか珍しい」


 異能持ちは珍しい

 強力な異能を持っているだけでもクランに勧誘される事があるレベルでだ


 ……異能持ちでもあまり期待は出来ないな


 逆に異能持ちだと分かっていて大手から声がかかっていないとなると強力な異能では無いと考えられる

 そもそも戦闘向きの異能とも限らない


「ど、どうですか? 不満があればもうすこしであれば交渉も何とかしますが」

「分かった。入ろう」

「良いんですか!」

「あぁ、小規模と言ってもクラン所属のメリットは大きい」

「やったー!」


 少女は飛び上がって喜んでいる

 暫く喜んだ後落ち着いたのか迅に向き合う


「これから用事はありますか?」

「取引所に行く用事があるくらいだ」

「ならスポンサーの社長に会いませんか」

「そう簡単に会えるのか?」

「今日は余裕あるらしいので」

「そうか、分かった向かおう」


 迅は少女の案内を受けて会社に向かう

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