「飛び道具は結局、接近戦では役に立たん。多勢であれば、勝ち目もあるが一対一の戦いであれば刀が勝つのが当然だ。拳銃の弾丸は線、それに対して刀の身は面を貫く」
背中の大太刀の位置を正しながら、
「くそ......鍵束などに木をとられなければ......私の腕なら......」
「気づかなかったのか?」
きょとんとした表情で
呆然とするマルカム。何に気づかなかったというのか。
「モールス信号だ」
マルカムは思い出す。何でも最新式の通信方法――
「まばたきで
ほこりを払いながらベルテが立ち上がる。
「上院議員を目指そうというものが、無学では困ってしまうね。まったく」
ベルテの皮肉めいた言葉にマルカムは打ちのめされる。
「なぜ......東の小国の野蛮人が......そんな......」
「居敬窮理、東洋にも科学の精神はござる」
なんでも
「わが藩は常に新しいものを導入してきたのだ。しかし――なぜ薩長どもに――」
「話が変な方向に行きそうだからやめようか」
そういいながら、ぽんとマルカムの前に袋を投げ出す。
「二日分の食料と水。それと薬だ。運が良ければ助かるかもね」
「武士の情け、情けは人の為ならず。巡り巡ってわが身なるかな。マルカムどのわかるかの?
?」
「なぜ、見逃す。とどめをささない」
まあ、とベルテは遠くを見つめる。
「私たちもあんたの手下にひどいことしてしまったし。これでお互いちゃら、ということで」
マルカムが何やら呪いのつぶやきを放つと、その場にばたんと倒れこむ。
「行こうか、
振り返りそう促すベルテ。
「もう馬が一頭しか残ってないな」
それにひょいと乗るベルテ。そして手を
「一緒に行こうよ。
首をかしげる
「――
そういいながら、燃えてしまった家を見つめるベルテ。
無言で
「よかったのか?」
静(リズ)が馬をいなしながら背中のベルテにそう問う。
うん、と頷くベルテ。
「武器商人として――まだ再興できるのでは」
手綱を握りながら、そっと横にベルテは首を振る。
「大丈夫。武器を売る以外の生き方を教えてもらえそうだから。静(リズ)に」
そういいながら
「路銀は十分にあるし、
「我が国には――」
「そば
「そば粉《バックウィード)?そんなんでパスタが作れるの?」
「私は父に教えてもらった。次の街で手に入ったら、早速打ってやろう」
ニコッとベルテが微笑む。
乾燥した風が吹く。
有刺鉄線が荒野を分断し、かつて西部劇の時代は終わろうとしていた――
十九世紀末の、アメリカ西部の物語である。
第1章完