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第8話 決断

「1つ目のトラップに引っかかったようだね」

 ベルテが岩の上から遠眼鏡で覗きながら、そう呟く。

 けが人を介抱するガーフィルド一家の手下たち。中には先日酒場で見た顔もいた。

「ひいふうみい......これで五人か。まだ数十人は残っているはず。どこに隠れてるのかな?」

 そう頭の中で分析しながら、家の裏手を見る。

「やっぱりこっちが本命だよね。正面は陽動で」

 一〇人近い手下が我先にと裏手の扉を壊そうとしている。手には斧やハンマーを持ち上げて。

 手の鏡を大量にかざすベルテ。キラッ、と鏡が輝く。それが合図だった。

「待っていたぞ!」

 屋根の上の少女。それはリズ。ほっそりとした装束をまとい、舞うように飛び上がる。

 着地と同時に煙があがる。

 リズが煙幕を焚いたのだ。

 突然の出来事に手下たちは混乱する。

 煙の中をまるで見えるように、小太刀で手下たちを始末していくリズ

「忍びの真似事をするとは思わなかったが――ベルテのためならばしょうがあるまい」

 そう言いながら、縦横無尽にたち振る舞うリズ。あっという間に男たちを斬り伏せていく。

「これでだいたい片付いた――はずなんだけどね」

 そうベルテが呟いた瞬間、彼女ははっと気づく。

 とてつもない殺気の塊が近づいていることに。

 遠眼鏡を放り投げ、岩の影に飛び込もうとする。

 しかし――そんな彼女を銃弾がとらえた。

(......!)

 高速で動いているベルテを撃ち落とせる技量。そんな技量を持っている奴は、このあたりには一人しかいない。

「つめが甘い。最初から罠だとわかっていました」

 聞き覚えのある声。それはとても不快なメロディーにも聞こえた。

「マルカム!」

 ベルテは右腕の傷を押さえながらそう叫ぶ。

 長い拳銃から紫煙を曇らせながら、男が近づく。

 マルカム=ガーフィールド、それ以外の何者でもなかった。

「しかし、ずいぶんとやってくれたもんですね。これは高くつきますよ、え?さしあたっては武器庫の場所と鍵をもらいましょうか」

「嫌だと言ったら」

 ふん、と鼻で笑うマルカム。

 そして、拳銃の銃口をじっとベルテの鼻先に押し付ける。

「そのかわいい顔が、メロンのようにぐちゃぐちゃになるだけです。私がいかに紳士とはいえ、限界がある。『火薬のベルテ』、決断しなさい。命を取るか、武器をあの世まで持っていくか」

 目を閉じるベルテ。

 マルカムは無表情にそれを見つめる。

 少しの沈黙。

 そしてマルカムは、拳銃のトリガーに指をそっとかけた――


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