馬車は荒野を行く。
幌馬車には行きにつんだ武器がすべて売れて、金と生活物資が満載されていた。
「すごく、いっぱい買い物したな」
ん?とベルテは
「まあ、私の『店』は街はずれだし、買いだめしとかないとね」
「それにしても、安すぎはしないだろうか?」
「ベルテが売った武器である。相場に比して安すぎる気がしたが」
「ああ、そうかな?詳しいね
「......私の祖父が外国から武器を輸入していた。家にその帳面があり、よく見せられた。『あなたのお爺さまは、藩を守るために必要な武器を外国から輸入されていたのよ』と。その価格に比べれば破格の値段で売っていたようだが」
ベルテは手綱を握りながら、ゆっくりと話し始める。
「この西部には、弱い人たちがいっぱいいるんだ。子供、老人、女性......そういう人たちはガーフィールド一家のようなならず者に何にもできない。そりゃそうだよね。連中喧嘩は強いし、武器も持っている」
「......」
「そういった弱いものが、自分を守る手段が『武器』なのさ。相手より高性能な武器ならば、少々の技量の差は埋められる。例えば――」
そういいながらベルテはすっと右手を下に下げる。次の瞬間、
「デリンジャー。装填数はわずかだけど、それでいい。大切なのは丸腰の相手が拳銃を持っているということを示せば、大体のやつの戦意は失せる。女が荒くれ者に一対一で襲われたときとか、これをぶっ放すだけで相手は肝を冷やすはずさ」
小さな拳銃。掌にぴったりと収まりそうなくらい小さい。
「逆に、弱いものでも集団を組めば対抗できるんだよ。さっき、ある農場に大きな木の箱おいてきたよね」
うん、
「あれ、ガトリング砲だから」
「田舎の保安官はあてにならないからね。あれが一台、町の保安事務所に鎮座しているだけで変な虫はよらなくなる。盗むにしても重いし、運用方法が難しいからね」
実際ガトリング砲は使い方が難しい兵器である。しかし、防御兵器としては優れている。なによりその『抑止力』としての圧倒的な存在感が、大きな意味を持っていた。
「無理に戦う必要はないのさ。『こっちはこんなに強い力を持っている。戦ったら負けるかもしれないが、お前らもただでは済まないぞ』とアピールするだけで無用な戦いを避けることができるのさ――まあ、理屈ではあるんだけど」
言葉を止めるベルテ。
手綱を引き、馬車を止める。
そこがベルテの『自宅』兼『商店』であった――