「
ベルテが声を上げる。
「......大丈夫......受け身は......とった......ちと......痛いが......」
ひゅー、とマルカムは口笛を吹く。
「さすがサムライというものは丈夫ですね。とはいえ、この45コルト弾の前では、紙に等しい」
ガチャっと拳銃を構える。長い銃身の銃口が
静かな時間。
最初にそれを破ったのはマルカムのほうであった。
「――やめておきましょう」
そういいながら、銃口を下ろす。
「私が撃つ。それを頭以外で受け止める。私にとびかかる。ぐさり、と。相打ちは割に合わない。私のかわいい部下たちもこんな状態なので今日はこのくらいにしましょう」
そういいながら背を向けるマルカム。
一見、隙が見えたように見えてそうではない。逆に飛びこめば返り討ちにされてしまう、そんな気配をマルカムは背中から放っていた。
傷を抑えながら、ほうほうの体でマルカムの手下たちが酒場を飛び出していく。
床には木の破片があちらこちらに散らばっていた。酒瓶も割れて、中から酒がゆっくり流れ出て、赤く床を染める。
「迷惑かけたね、パトリスさん。弁償するよ」
カウンターの陰に隠れていたパトリスがいやいやといいながら、立ち上がる。
「最近、あいつらにはわしらも困っていてね。ガーフィールドは気取ってはいるが単なる荒くれものだ。あんなのが上院議員を目指しているとは世も末さ」
「アンドリュー・ジャクソンだって、荒くれものさ」
そういいながらベルテは服のほこりを払う。
「ありがとう、
そういいながら
まるで舞うような剣技。マルカムに格闘能力がなければ、勝っていただろう。
「サーベルも得意なんだね」
「こっちが本職だ。銃はあくまでも余技である」
「助けてくれて......ありがとう」
「家臣が主君の助太刀をするのは当然のことである」
「うーん」
そういいながら、ベルテはぎゅっと
「そういうのはもういいかな。『友達』じゃダメかな?用心棒とは言ったけど、そういう関係あんまり好きじゃないし......」
「『友達』......?ああご同役みたいなものか。ベルテがそれを望むならそれでも良い」
ご同役、とはあまりな言い方だがしょうがない。当時の日本に『友人』という概念は存在しなかった。
うれしそうにベルテは
自分の背中を預けれらる『友人』にして『相棒』をベルテは初めて手に入れることができたのだった――