一瞬の出来事であった。
マルカムらとベルテの間に『盾』ができる。
瞬時に盾になったテーブルを撃ちまくるマルカムたち。
しかし、まるで風のごとく
「ひえぇ!」
男の一人が右手から血を流しながらそう叫ぶ。
もう一人は足を切られて地面に崩れ落ちる。
まるで舞うように狭い酒場の中を、走り抜ける
マルカムはその様子を凝視ししていた。
残ったのは自分だけ。
眼の前には、少し長めのナイフを逆手に構えた
「聞いたことがありますね」
マルカムは長い銃身のピースメーカーを小刻みに揺らしながら口を開いた。
「私の家は代々軍人でしてね。お祖父様がかつて、東の果ての島国に軍艦で行ったことがあるのですよ。サツマ、とかいったかな。彼らはサムライと呼ばれる身分で腰にサーベルをさし、まるで舞うがごとくそのサーベルで兵士たちを切り倒したと。当然、大英帝国相手にサツマは負けはしたものの、十分に奮戦したとも聞いています。お嬢さん、あなたもサツマのサムライかな」
「薩摩にあらず!なれど、我が身は日の本の
静かでゆっくりとはしていたが、その口調はとてつもない殺気を感じさせるものであった。
ベルテは
この狭い酒場の中でその刀はその特徴を遺憾なく発揮しているようにも見えた。
それなりのレンジがありつつ、狭い空間でも取り回しがきくという利点だ。
一方、マルカムの長い拳銃は威力こそありそうだが、この場面では不利に感じられた。
それを
――静かな時間が流れる。
それを、最初に破ったのはマルカムの方であった。
一発、床に向かって発泡する。
前かがみになりマルカムに突進する
大きな金属音。
それは、銃の発射音ではない。
ベルテは目を見開く。
床に刀を掲げて膝をついている
「この拳銃の銃身が長いのには理由があって――」
拳銃の銃身と刀の刀身がぶつかり合い拮抗する。
「鉄棒として、鈍器として使うことができる。格闘戦の武器として」
そういいながら、すっと態勢をかわし
「......!」
完全に体ががら空きになってしまった
そこに、マルカムが銃身を棒のようにして彼女の体に叩き込んだ――