埃っぽいこの世界――アメリカ西部。
人々は金を求めて西へ西へと移動していった。たった数粒の砂金が数万の人間を西のかなたに呼び寄せたのだ。
――ゴールドラッシュからすでに半世紀がたとうとしていた。
それまで何もなかった西部では開拓が進み、町が形成され、鉄路がそれらを結んでいった。
かつてはカウボーイのみが、この大地を我が物顔に跋扈していた。大地を覆いつくさんばかりの牛の群れを率いる一団。ロングドライブと呼ばれるこの風景は西部の象徴でもあった。
二十世紀もそろそろのこの時代、そういった「西部」的なものはだんだんとなりを潜めつつあった。有刺鉄線の普及により、草原は囲い込まれまた鉄道の発展は彼らの仕事を奪っていった。
そのような変化が見られつつも、アメリカ西部はいまだに個人の能力が幅を利かせる、実力主義の世界であった。すでにフロンティアは西海岸に達したものの、開拓熱は冷めることはない。農民も悪党も、当然保安官も常に武器を持ち自らを守ろうとしていた。それはこの国の人民の権利なのだから。
「おいしい?」
ベルテは頬杖しながら、そう尋ねる。
目の前の
がっつくわりには下品さを感じさせないのが不思議だった。
小さな町の、酒場。ちょっとした料理も食べられるし宿もやっている。西部にはこういう形態の店がたくさんあった。
「目的地までもう少し。ここですこし休みましょう。
ベルテの目的。それは町から町へと武器を運ぶこと。
拳銃、小銃、そして弾薬。場合によっては火薬そのものを扱うこともあった。
西部の人たちはベルティーナ=レヴァッキーニのことを、『火薬のベルテ』と呼んだ。
彼らにとって水のように必要な武器を適正な価格で売ってくれるベルテに敬意をこめて。
「ベルテは食べないのか?」
おかわりをしつつ、
横に首を振るベルテ。口に手を添えて小声でつぶやく。
「――あんまりこのあたりの料理は口に合わなくて。はやく、新鮮なトマトと玉ねぎ、あとパスタを手に入れたいねぇ......」
「ベルテはグルメだからなぁ」
お代わりの皿を運んできた老人が、そう漏らす。店のオーナー兼料理人兼給仕係の老人である。
「パトリスさん、ごめん!そういうつもりじゃ......」
パトリスと呼ばれた老人は柔和な表情でうなずく。
「しょうがない。わしだって新鮮なジャガイモを腹いっぱい食べたいものだ。どんなやつでも、食べたいものは母国のもの。ベルテはイタリアだし、わしはアイルランドだ。気にすることはない」
皿を片付けながらパトリスは
「見たことのない、御仁じゃな」
「最近雇った用心棒で、なんでも日本から来たんだって」
「ニホン?聞いたことないなぁ」
「ほら、ペリーが行った国で――」
その時、入り口のほうで大きな音が鳴る。それは銃声のような――