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やっぱり引っ張りだこのキミ

「お~っす」

居酒屋に入ってすぐに声をかけてきたのは真人だった。

肌が若干黒く焼けていたがあの笑顔は変わらない。

「久しぶり!」

そう言って恵子が真人に飛びつこうとする。

「こらこら、真人は私の」

調子に乗る恵子を牽制するために自然と間に入ってしまったが、言いかけた言葉を反芻して赤面する。

「ん~?私の、なになに~?」

そんな私の様子を見て、下から私を見上げるように顔を覗き込んでくる。

……無視無視。

「それで、最近どうなの?」

真人の隣の席に腰掛けて近況を訊く。

「あぁ、順調だよ。うまくやってけそう。……そっちは?」

「ふふ、実はね……」

私が言いかけると流れるように他の同級生たちが居酒屋に入ってきた。

「あーっ!ひっさしぶりじゃんかこらぁ!裏切り者!」

同級生のひとりが、真人を目に入れて開口一番そう叫び、それを機に多くの同級生が真人を囲み出し小突かれている。

「あてて、悪かったって!」

当たり前だけど唐突に真人がいなくなって気にしない者なんていなかったのだ。

「もうお前今日主役だから」

主役を主張する文言が書かれた安っぽいたすきを無理やり真人に引っ掛けると各々空いた席についた。

「はいじゃあ、揃った?」

しばらくして満席になった頃合に幹事が声を上げる。

「よし、まとりあえず、我々の再会と、今後益々の発展を祈りまして……乾杯!」

それからはもう大騒ぎ。当然主役の真人はあらゆる同級生に囲まれ近づく隙もなくなってしまう。

私は隅っこで恵子とちびちびお酒を飲みながらぼーっとする。

「私のなのに……」

「勝手に人の心読まないで」

私が言ったみたいに呟く恵子のほっぺたをむにむに引っ張る。

「でもさぁ~久しぶりなのにいいの?もっとベタベタしとけばいいじゃん!」

恵子は悪酔いしてるのか知らないが、焦れったいといった風に急かしてくる。

「もうちょいの我慢なんだから。別に今じゃなくてもね」

「ま、そうだけどね」

そう言って恵子はジョッキを傾けると中の酒をすっかり飲み干した。

「おかわりっ!」

こいつ、飲むなぁ……。

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