体育館にみっちりと並べられた大量の椅子に、次々と生徒たちが座っていく。
ステージの反対側の椅子の列には、もう既に保護者たちが座っていて、始まってもいないのに目をハンカチでおさえたりカメラを構えたりしていた。
いつになく緊張した面持ちで、振り返るのはあの長く終わらせたかった日々。
しかしそれも過去のこと。
縋り付きたい気持ちを切り捨てて、前に進まなければいけない。
私もまた、その覚悟を持って自分の席に座る。
最初で最後の終わりの日、卒業式が始まった。
皆が皆真面目に取り組んでいるわけでもなく、静粛な会場の中で静かにふざけ合うような者たちもちらほら見受けられた。
しかしそれも、数分もすれば場の空気に押され静かになる。
実感するのだ。
この場に来て初めて、私も思い知る。
この式の意味を。
私たちの過ごした日々の重み、それは決して日常の中において強く主張されるものではなかった。
どこか遠い別の場所の話だと思っていた。遠い未来の話かと思っていた。
でもそれは、もう逃れられないくらい迫っていた。
3年間過ごした学舎、大切なことを教えてくれた教師。そして共に過ごした仲間たち。
卒業式には定番の大袈裟な表現だと思っていた。でも実際にそれらを見返すと、こんなにも適切な表現はないものだと感嘆する。
他愛ない話で盛り上がった教室。楽しくお弁当を食べた渡り廊下。気がつけば四季折々顔を変えて私たちを見守っていた中庭。その全てが忘れられないものだ。
面白おかしく時に厳しかった教師たちも、そして、かけがえのない親友との出会いも。
それは全て、今日ここで終わる。
そして、歩き出さなければならない。
ただ、ここで過ごした日々は、経験は、いつまでも私の力になるに違いない。
だから……この3年間で生まれたこの想いも、決して無駄にしてはならないのだ。
伝えなきゃ。キミが遠くへ行ってしまう前に。
私は決意を新たにする。
そして卒業式は、思いのほかあっさりと終わってしまった。
周囲からは鼻をすする音や嗚咽のようなうめき声がして、本当にこれが最後なんだと強く実感させられる。
あんなに長く、早く大人になりたくて過ごした日々が、ようやく終わった。
気づけば私もその感動の渦に巻き込まれて、涙を流していた。
「卒業生、退場!」
後輩や教師に見送られながら私たちは体育館を後にした。
本当は私たちを送り出す拍手や声に、いつまでも浸っていたかった。
でももうそれも、今この時だけ。
私たちは、前に進まなければいけないんだ。