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ごめんねお母さん

真人から逃げるように走った私はそのまま涙も拭かずに帰り道を急ぎ、家に駆け込んだ。

ただいまの挨拶もせずに、ぐしゃぐしゃになった顔のまま家に入る私を見てお母さんは驚いた。

「あんたどうしたの!」

慌てて私に声をかけてきたが私ももう返事を返せる余裕はなかった。

「うぅ……うぅぅ……」

そのまま廊下で崩れるように泣く私を、お母さんは優しく慰めてくれた。

「何があったかわかんないけど……ううん、多分昨日の話のことかしらね……」

案の定見抜かれてしまったわけだ。観念する他あるまい。

「実は……」

嗚咽まじりにたどたどしく事の経緯を説明する。その間もお母さんはうんうんと頷きながらじっくり話を聞いてくれた。

「なるほど……好きだった人が卒業と同時に遠くに行っちゃうのか……」

「もう、会えないんだよ」

そう言ってまた自分の言葉から現実を思い知り、ポロポロと涙を零した。

「恵美。あのね、そういう運命だってあると思うの。想い合ったって絶対に結ばれない人だっているし、逆にお母さんみたいに予想もしなかったところで結ばれる人だっている」

「でもっ!じゃあもう私は絶対に真人とは一緒になれないってことっ!?」

「……その人が、どうしてもいいのね」

相手の名前も知らないお母さんにまくし立てるように言ったって、現実は変わったりしない。

わかっているけど、止められなかった。

「当たり前じゃんっ!そうじゃなかったらこんな風に……」

「本当に、できること、ないの?」

「ないよっ!だって外国行っちゃうんだもん!」

癇癪を起こした私はもうお母さんの話を聞くのもうんざりだった。

「もういいっ!お風呂入るから!」

「恵美……」

お母さんが心配そうな顔をしていたのには気づいていたけれど、それでも私は自分の感情を抑えることはできなかった。



お風呂から上がって少しだけ冷静になった私は、無責任に八つ当たりしてしまったことをお母さんに謝ることにした。

「ごめんね、お母さん……お母さんは何にも悪くないのに、私……」

「ううん、いいのよ。でも元気出してね。大学にも行くんだし、たくさんたくさん楽しいことあるはずよ」

お母さんは怒るでもなく、ただ優しく私のことを慰めてくれた。

「それは……うん……」

「ほら、明日で最後なんだから、しっかり眠っておきなさい」

「おやすみなさい……」

お母さんは暗に諦めるように私を諭していたようだったが、眠りにつくその時まで私、はいつまでも真人のことを考えていた。

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