「…で、今何をしているんだい、ホウジ少年?」
立っている状態からしゃがみ込んで、そのままうつ伏せになる。腕立て伏せの要領で体を立ち上がり、その勢いで一気にジャンプ。
これをひたすら繰り返す。
私は汗だくになりながら息を切らした。息を吐くたびに、口からビリビリとした甘酸っぱい匂いが漂う。
「おはようございます、オルソンさん」
「ああ、おはよう。 ここ数日は毎朝空き地で行ったり来たりしていたのに、今日からはまた変な体操を始めたな?」
「その行ったり来たりはシャトルランっていうことで…今やってるのはバーピーと言いです」
「バーピー?」
オルソンは理解できないように首をかしげた。運動と労働の境界が曖昧なこの世界の人々には、筋力トレーニングという概念がないため、当然のことだ。
「何だか知らないけど、そんなに汗をかくのを見ると、かなりきつそうだね」
「そうです。短期間で体を作るにはこれ以上ないくらいですから」
「あぁ…そっか。よく知らんが頑張ってよ」
数ヶ月以上運動を休んでいた体を作り直すのは容易ではなかったが、少なくとも小学校の時から高校に至るまで10年近く続けてきたあらゆる筋力トレーニングのメニューだけは頭の中に残っていた。 それは私が思っていたよりもはるかに大きな価値があった。
コバフ村で…いや、この世界で一人前の役割をしようと思う今、私はできるだけ短い間にアスリート時代以上の体を作る必要があった。
ただし…
「うぅっ…この地獄の筋肉痛…」
その反動は夕方の頃、指一本動かせないほどの酷い筋肉痛になって訪れた。ベッドの上に釘付けされたように身動きも取れず苦痛の中で苦しむはず…………だったが私にはもう一つ大きな武器があった。
「アドメライアサチハンドラニ…」
「あぁ…体に染みる…」
「これが筋肉痛にも効くなんて」
瀬戸先生の『ヒーリング』がもう一度私に効く様子を、沙也は信じられない目で見ていた。
「アヴサラの力をサOンパスのように使うとは…」
「筋肉痛も結局は筋肉にできた傷が回復する過程の一つだから。『ヒーリング』が適用されれば、十分にやってみる価値はあると思ったよ」
「私も足原君が最初にアイデアを出した時は半信半疑でしたけどね。お役に立てて良かったです」
実際、筋トレは運動自体よりも運動後に休息と回復がより重要で時間がかかる。これを省けるのは大きなメリットだった。
瀬戸先生の『ヒーリング』が終わって、私は関節をあちこち動かしてみた。動きに負担がかかってはいないかの確認だった。
「よし。痛みもないし、動きも軽い」
むしろ、ぐっすり眠った直後のような爽やかさまで感じられるほどだった。私は再び服を取り上げた。
「どこに行くの?」
「せっかく回復したんだから、もう一回走ってくるよ」
「また?もうこんな時間だよ、法次…あぁ、行っちゃった」