ピュ〜〜〜
2人は、地面めがけて真っ逆さま。まさに絶対絶命のピンチである。
崖から落ちる瞬間、オージは夢見た王の姿を思い浮かべた。いや……このまま死ぬわけにはいかない。
「こうなったら一か八か……俺に捕まれ!」
オージは、少年の手を取り、もう片方の手を広げて地面に向けた。
地面に直撃しそうになるその瞬間
「
オージが唱えると、2人の身体はフワッと宙に浮いた。宙に浮いたのも、束の間、魔法が解け、2人は、地面に落っこちてしまった。
「いててて……間一髪だったな……」
「君は本当にすごいな! 今のは浮遊魔法かい? こんなの見たことないよ!」少年は先ほどのピンチも忘れて、オージに興味津々だった。
「いやぁ僕は魔法はからっきしダメだからだなぁ。ホントに尊敬するよ!ところで魔力切れは大丈夫だったのかい??」
「まあ走ってるうちに少し魔力が回復してたんだろ。それに気持ちが乗れば魔力は
あたりを見渡しても目印になるようなものはなく、断崖絶壁と森の木々だけがそこにあった。
「このあたりには、村がたくさんあるのかい?」
オージは、立ち上がり、土埃を払いながら、聞いた。
「ん? いや、俺が住んでるヒガーシ村ぐらいのはずだが?」
「それじゃあこのケモノ道をまっすぐだね!」
「なんで知ってるんだ?お前この辺やつじゃないだろ?」
「崖から落ちる前に村が見えたからね!!」
「あんな状況で景色を見てたっていうのか?」
オージは怪訝そうな顔で少年に問いかけた。
「その顔は疑ってるな〜? よし! じゃあ助けてくれたお礼に村まで僕が案内しよう!!」
そういうと少年は、身なりを整え、ケモノ道を歩き出した。
「おい! ちょっと! まてよ!」
慌ててオージも立ち上がり、とりあえず後ろからついていった。
「なぁ、お前王都からきたんだろ?」
オージが尋ねた。
少年は、少し驚いたような顔をして、
「あぁ! そうだよ! なんでわかったんだい?」
と聞き返した。
「まあ格好をみればなんとなくね、このへんでそんな綺麗なカッコしてるやついないぜ。なんでこんなところに?」
「なるほど! 気をつけないとだな! 私は、ある調査で旅をしていたんだ。調査が終わって王都に戻ろうとしていたら、道に迷ってしまってね……」
「なんだ、おっちょこちょいなやつだなぁ……まあいいや! なぁ! 王都にはさ! スゴイ魔法使いがいっぱいいるんだろ?」
どうやら、オージも王都の話には前のめりだ。
「う~ん、もちろんすごい魔法使いはいるけど、いっぱいってわけじゃないかもね! 君のように2種類の魔法を使えるのは王都でも珍しいんじゃないかな!!」
「まぁ、毎日ジーヤに稽古つけてもらってるからな! 魔法には自信あるぜ!」
「ジーヤというのは君の師匠かい?」
「師匠ってよりは育ての親かな? 俺の話はいいからもっと王都の話を聞かせてくれよ!」
村までの道中、2人は、王都のについての話に花を咲かせた。
……………………
「じゃあ王都の授業も中身は、あんまし変わんないんだなぁ〜」
「それこそが王が目指したこのクニの姿だからね!」
「やっぱり王様はさすがだぜ!! いや〜、一度でいいから王都にいってみてぇなぁ〜」
オージにとっても、少年にとっても王都の話をするのは楽しかった。
「オージは、よほど王や王都に関心があるんだな!」
オージにとって少年の話はどれも刺激的だった。だからこそオージは少年には打ち明けたることにした。
「俺さ実は、王様を目指してるんだ! 無謀かもしれないけど、俺の夢なんだ!」オージは、頭かきながら、ほんの少しだけ照れくさそうにしていた。
オージの言葉に少年はハッとした顔をした。そして
「そういうことか! 無謀なんかじゃない! 素晴らしい志しだ! それだったらまずは私が王都を案内するよ!」と提案した。
オージは、「本当か!!」と自然と笑顔になった。
しかし、 少し考え込んで顔を曇らせる。
少年の提案はオージにとってはこれ以上ない提案であったはずだ。そして、また話しだした。
「ジーヤが王都は危ないってうるさくてさぁ! それに、ほら、あれなんだよ。この村さ、ジーヤが獣とかから守ってるんだよ、まあ今は平和だけど、いつ昔みたいな危機が訪れるかも分かんないだろ?ジーヤも歳だし、これからは俺が守る番ってわけよ!」笑顔で話すがその顔はどこかぎこちない。
「まあ王都のことはちょっと興味あるけど、教育はこの村でも変わらないものが受けられることが分かったし、魔法のことならジーヤが、教えてくれるしな! それに王都にいないから王になれないってわけでもないしな!」オージは、なんとか言葉を紡ぐ。
「だから……わりぃけど俺は行けない。誘ってくれてありがとよ!」オージの強がりであることは、誰の目にも明らかだった。
「そうか、少し残念だが、君が言うなら仕方ない」
少年は少し寂しい顔をしながらも、オージの言葉を受け止めようとした。
だが、オージの目には熱いものが浮かんでいた。
そんなオージをみて、こう続けた。
「オージ。確かに、君が言うことは大義だよ。間違ってないとおもう。だが、それは本当に君の意思かい?君はそれでは良いのかい?」
「それは……」オージは少年の問いに答えることはできなかった。
そうこうしていると2人は、村の入口までついた。
「本当に見えてたんだな……」
「だからそういっているであろう! じゃあ僕はここで失礼するよ!」少年は足をとめた。
「なんだよ! せっかくだし、ちょっとぐらいよってけよ!大したもんはないが、もてなすぜ!」
どうやら、オージは、まだ王都のことが聞きたいりない様子だ。
しかし、少年は、すこし考えこみ、答えた。
「お誘いありがとう。だが、実は王都にいそいで戻らなければ行けなくてね。あまりゆっくりしている時間はなさそうなんだ。」
オージは残念そう顔を浮かべたが
「そっか、時間使わせちまって悪かった! まあいつかまた村に遊びに来いよ! 今日はありがとよ!」
と少年をおくりだした。
少年も最後に
「そうさせてもらうよ! こちらこそありがとう!僕も君が王都に来る日を待っているよ! その時はかならず僕を尋ねてきてくれ!」と伝えて村を後にした。
オージは少年を見送るとジーヤの待つ我が家に戻っていった。
「あ、そういやあいつの名前聞いてなかったな……」