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金色の略奪者②




 ◇ ◇ ◇




 レトリバーの三人以外の傭兵達も状況を察知し、謎の機影が接近してくる方向、被災地域の西側へと集まってくる。


 カリオ・ニッケル・リンコの三人は、アイカメラの倍率を調整して接近する影の正体を捉えようとする。三人のビッグスーツの頭部前面、中央に配置された円形レンズのアイカメラが、倍率の変更に合わせてキュルキュルと音を立てて動く。


「地上艦一隻、あれは……ビッグスーツ……三機?」


 ニッケルは目を細める。コックピットのディスプレイに映るのは黒い地上艦と、その甲板の上にピンク、グリーン、そしてゴールドに輝くビッグスーツが一機ずつ。


「全部特注ワンオフ機? やっぱ隣街の治安部隊さんってワケじゃなさそう……だよね?」


 リンコはビームスナイパーライフルを構える。


「とはいえ敵と断定するのは……通信、試してみるか」

「待て、ニッケル」


 通信を試みようとするニッケルをカリオは制止する。ニッケルの行動を否定したわけではない。ビッグスーツのコックピットにいながら、カリオは何らかの違和感を覚えていた。本能か直感か、非論理的ではあるが幾度となく頼ってきた感覚が何かを知らせようとしている。




 三人の足元に鳥の影が走る。




 否、鳥ではない。




「!!」


 三人は上空を見上げる……一機のビッグスーツがこちらを見下ろしながら飛行している!


「クソッ、ドジッた!」


 上空のブルーのビッグスーツは巨大な翼を背部に、腕部と脚部ににコンテナを装備している。そのコンテナから何かが複数投下される……恐らくは、爆弾!


 バシュゥ! バシュゥ!


 ニッケルとリンコはビームライフルとビームピストルで爆弾を迎撃する……が全て捌ききれない!


 ドドドォン!


 爆弾は数発、カリオ達の位置に着弾して爆発する! 巻き上がる煙が辺りの視界を奪う。


「爆発……!?」

「向こうだ! 別の傭兵連中が見てたんじゃねえのか!?」


 少し離れた別の地点で構えていた傭兵達の動きが慌ただしくなる。レーダーや通信で状況を察知すると、爆撃があった地点へと集まってくる。




「……しっかしアレだな、毎度毎度フリクに上から爆弾ばら撒かせて、相手さんがわちゃわちゃしだすのを眺めるのは中々悪くないな」


 街へと接近する地上艦の甲板の上、ゴールドのビッグスーツ――「ハオク」に乗ったパイロットが笑う。


「ユデン~、そろそろあーし達も行こうよ~」

「ああ、タヨコ。そうだな、そろそろいいか、いくか、いくぜ。チネツもほら、なあ」


 ユデンと呼ばれたブロンドのショートヘアに緑の瞳の男が乗ったハオクは、甲板を強く蹴って大地に飛び出した。


「アイツらの仕業か!?」

「こっち来やがる! 撃て撃て撃て!」


 突然の空爆による混乱の中、傭兵達はユデンを敵とみなし、一斉に各々の銃火器をユデン目掛けて発射する。


「よーしよしよし、いい展開だ、なあ、こうじゃねえと、なあ」


 ユデンは姿勢を低くして走り出す――あろうことか自分に向けて撃たれたビームや弾丸に対して真正面から。


 ハオクの右腕にはかなり大きな実体剣が装備されている。ユデンはそれを振る。


 バシィ! バシィ!


 ユデンに向けて放たれたビームと弾が大剣に弾き落とされる! ユデンはそのまま速度を上げていく。


 バシィ! バシィ! バシィ! バシィ!


 神業と言う他ない。襲い来る何十何百ものビームと弾を、高速で走りながら大剣一本で次々と弾いていく!


「ハーーーーーッハハハハハ!!」


 バシィ! バシィ! バシィ! バシィ!

 バシィ! バシィ! バシィ! バシィ!


「おい、おいおいおいおい! 何だよアイツは!」


 ユデンのハオクは傭兵達との距離百メートルにまで迫っていた。次元の違う脅威に恐怖を感じた何人かの傭兵が銃を捨てて逃げ出す。


「クソっクソクソクソ!」


 毒づきながら実弾ライフルを連射する傭兵に更に速度を上げたユデンが接近する。


 ユデンは大剣を水平に薙ぎ払うように振る。大剣は目にも留まらぬ速さで傭兵のビッグスーツを腰で両断した!


「う、うあああ!」


 斬られたビッグスーツは火花を散らしながら力なく倒れる。仲間が真っ二つになるのを眼前で見た傭兵達が叫びながらビームサブマシンガンや実弾ライフルを連射する。


 左右から何人もの傭兵に撃たれる形になったユデンだが、全く怖気づいていない。素早く滑るように移動・回避しながらまた大剣で弾の嵐を弾く!


 その間、一秒もかからずにユデンはまた一機の傭兵に狙いを定め急接近する。彼にとって目の前の傭兵達は何ら障壁にもならない、ただの的に等しい。


 先ほどと同様、ユデンは大剣を恐ろしい速度で振る。格が違う戦闘術に、傭兵はなすすべもなく一刀両断されようとしていた。




 ガギィン!




 傭兵は尻餅をついた。死んだかと思った――が死んでいない。斬られていない。


 目の前で起こっていることに気づくのに数瞬かかった。ユデンの大剣を黒いビッグスーツが、青白く光るビームソードが受け止めている。




「へえ……!」


 ユデンは笑う。大剣を握る手に力が入る。


 黒いビッグスーツのパイロット――カリオ・ボーズは死闘の予感をいだき、舌打ちした。




(金色の略奪者③へ続く)

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