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メタル・ニンジャ・ショウタイム⑥




 ◆ ◆ ◆




「今は昔とは違う。やりたいことをやって、なりたいものになりなさい」


 今にして思えばワイには忍者よりもっと平和な生き方を選んで欲しいって、おふくろと親父は願っとったんやろなぁと思う。


 まだ反抗期にもなってなかったガキの時に忍者やった親父は死んだ。


 複数個所での武力攻撃を計画していた強盗団の潜伏先に突入した時に、身体に何十発と鉛玉を食らって。そんな死に方でも清められた親父の顔は、しわとシミが結構増えてたにも関わらず、とても綺麗に見えた。


 その後何日かボーっと過ごしてたんやが、何を思ったんかおふくろに親父と同じように忍者になるって言うたんや。むちゃくちゃ反対されたしむちゃくちゃ泣かれた。

 まあ流石に言うタイミングは考えりゃよかったなと今は思っとる。


 その時、何で忍者になろうと思ったんかって言われるとあんまり上手く言えへんねんな。別に名誉の死を迎えたいとかやないねんけど。


 ただ……親父の葬儀や墓に来てくれた、武力攻撃のターゲットになってた――親父達忍者が救った――人達が手を合わせてくれてる光景は今でもはっきりと覚えてるし、時々、無意識に思い出す。


 親父が命を懸けて救った人々の顔を思い出すたびに、雑念が鳴りを潜めて胸が少し熱くなる。あの時から何気ないハットリシティの街の風景は、ワイにとってはただの風景やなくなった。


 街の陰で、今日も体張ってるかっこええ奴らが――忍者がおる。


 そいつらや親父が必死で守ってきたものを、ワイも誰にも奪われたない。




 ワイは忍者として生きる。




 ◇ ◇ ◇




 カリオのビームソード・青月がちょび髭のビッグスーツを斬り裂く。


(……ッ!? コイツ、背後を取られても粘るかよ!)


 カリオは舌打ちする。ちょび髭は背中を斬られたものの傷が浅い。寸前で体を反らせ、致命傷を避けたのだ。


「ぬおおおおお!」


 ちょび髭はカリオの方へ向き直り、両の腕を広げて 腰を落とし、鉤爪を構える。


「ええ加減に!」


 打打ダダン!


 ショウはちょび髭の背後を取り、背中に拳打を放つ! まともに食らったちょび髭は大きく仰け反り体勢を崩す。


 カリオは姿勢を低くし、身体を捻る。今度は逃さない。


 逆水平!


 水平方向の剣閃けんせんが、ちょび髭の鉤爪ビッグスーツを腰の部分で真っ二つに斬る!


 宙に浮いたちょび髭の機体の上半身はゴドン、と音を立てて地面に落ち、下半身は数秒ふらついた後、力を失って倒れる。コックピット内部ではおびただしい量の鮮血がディスプレイを赤く染める。二つのスクラップと化したビッグスーツは、再び動き出すことはなかった。


「よし……よしっ。さてと――」


 カリオとショウはふぅっとため息を吐くと、戦闘を続けるババ一家と治安部隊の方へ向き直った。




 ◇ ◇ ◇




 昼下がりのハットリシティ。


 元から混沌とした雰囲気を持つ街だが、人の往来が増すと更に賑やかになる。買い物に出かけるキツいパーマをかけた主婦、忙しなく携帯通信機に向かって話すスーツ姿のビジネスマンなど、建物同様、様々な色を持つ人々で溢れかえるのだ。




「二回だぞ? 二回! 味方に爆発物投げつけやがって!」

「別にアンタに投げたわけちゃうし、避けられたんやしええやん」

「コイツ一向に悪びれねえ!」

「悪いことしてへんもん」


 ババ一家とのビッグスーツ戦は勝利に終わり、無事にハットリシティへの襲撃を阻止出来た。敵側の生き残りを捕え、NISオフィスに帰還して事後処理を進める中、カリオとショウは口喧嘩を繰り返している。


「いいねえ~いきなり仲良くなってんじゃん」

「カリオって時々、妙に生き生きと口数が多くなる時あるよな」


 野次馬二人、もといリンコとニッケルは口喧嘩を見守りながら、ハットリシティ産のお茶を飲む。


「ババ一家の動向は?」


 NIS頭領のタケノは部下に尋ねる。


「オカダシティの調査員から報告メッセージが届いています。大きな動きはなさそうですね」

「今回の戦闘で戦力を大きく削げましたか。とはいえ、こちらがメンバー数人を捕えているのを黙って見逃すことはしないでしょう。引き続き監視をお願いします」


 タケノはそう指示を出すと、座ってお茶を飲むカソックの方へ歩み寄る。


「助かりました。こちら側は治安部隊も含めて一人の死者もなく、素晴らしい戦果です。」

「俺達の仕事はここまでかい?」

「ええ、報酬は先程振り込みましたのでご確認を」


 カソックはクレジット端末を確認すると、タケノに礼を言う。


「……そうだ、タケノさん。聞きたいことがあるんだが」


 続けて、カソックは尋ねた。




「……荒野に記憶喪失の子供ですか。また随分穏やかじゃないですね」

「流石にわからねえか」

「わかっていることがそれだけだと、すぐにはこちらで把握している事件・事故から絞り込めませんね……力になれず申し訳ありません」

「とんでもねぇ、ありがとう」


 タケノとカソックは言い合っているカリオとショウの方を見やる。


「一戦、共に過ごすとああまで仲良くなれるものなのですかね?」

「何かしらの波長でも合うんだろう、本人達も無意識のうちに」

「また何か依頼する時のことを考えるといい流れです」

「リピーターになってくれんのか、ありがたい」


 カソックはよっこいしょ、と声に出してゆっくりと立ち上がった。


「そろそろ行くよ。あの丸刈りの坊主、チビと観光する約束してやがるから時間作ってやんねえとな」




 ◇ ◇ ◇




「カリオ、カリオ! あの人形欲しいです! 忍者!」

「ニッケル、立て替えておいてくれね――」

「嫌に決まってるじゃねえか」

「リンコ――」

「嫌よ、レディを大切にして?」


 翌朝。ハットリシティを発つ前に、カリオ・ニッケル・リンコ、そしてマヨの4人は市街を観光していた。


 随分作りこまれた忍者のフィギュアをマヨに買わされ、中身の減った財布を見てカリオはため息をつく。


 ふと、カリオは大きな窓から外を見る。忍者のフィギュアを買ったおもちゃ屋のある、ショッピングモールの3階からはそこそこ遠くまで街の景色を一望出来る。




(――なんで傭兵やってるか、か)


 カリオは目を閉じる。浮かび上がるのはあの日のあの町、燃える建物に、そして――




「ぶぼぼぼぼぼ!!」


 マヨが奇声を上げながら、カリオの太腿に忍者のフィギュアをぷにぷにとぶつけてくる。


(……コイツ見てると、そんなこと考えてても、どーでもよくなっちまうのな。いいのか悪いのか……)


 カリオはマヨの頭をコツンと叩くと、エスカレーターのある方へ歩き出した。




(メタル・ニンジャ・ショウタイム おわり)

(金色の略奪者 へ続く)


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