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メタル・ニンジャ・ショウタイム④




 ◇ ◇ ◇




 日が昇り始めた頃、山と湖に挟まれた地点で、ハットリシティ側のビッグスーツ十一機が待機している。


(しかし……立派な機体だな、ワンオフか?アレ……)


 クロジに乗り込んでいるカリオは、突き出た岩の先端で、腕を組んで立つショウのビッグスーツ――「オールリ」を見ている。その青色のビッグスーツは一見して装備しているのは腰に携えたヒート忍刀のみに見え、背中には翼状に配置された、敢えて形容するなら貝のようなモノが二つ装備されている。


「なあ、あの二機……銃も盾も持ってないぞ……」

「大丈夫なのかよ……」

「でも実績あるんだろ?」

「ババ一家ってあの――」


 浮足立ちながら雑談するハットリシティ治安部隊をよそに、ショウはじっと動かず遠方を見つめている。


「生まれた時から忍者になるのは決まってんのか?」


 カリオはショウに声をかける。初めて見る忍者だ、気になることは腐る程ある。


「最近はそういう家も少なくなってきたけどな。ワイは他にやりたいことも別になかったし――」


 ショウのビッグスーツは腕を組んで直立したまま、カリオの方を見た。


「かっこええやん、忍者」


 ええっ? とカリオは少し引き気味に声に出す。


「そんなミーハーな感じで耐えられる仕事には思えねえけど……」

「そうか? そういう方面のモチベが一番大事やと思うけどなぁ」


 ショウはあごに手を当ててカリオを見つめる。


「傭兵か……なんでその仕事選んでるのかってのは――」

「秘密って事にしといてくれ」

「――やっぱそう来るわなぁ、傭兵っちゅうんは」


 そこまで話して、二人はレーダーに高速移動する小さな点の群れを見つける。


「そろそろかリンコ?」

「まだ目視はできないけど構えといて。すぐに見えるよ」


 その言葉の通り、程なくして山の裾の裏からこちらへ向かってくる集団が見えてきた。


 リンコはスコープ越しに集団を捉える。ビッグスーツと地上艦の集団。ミーティングで伝えられたそれぞれの外見の特徴、掲げてる旗と機体に貼られたエンブレム――バハ一家で間違いない。リンコはスナイパーライフルのトリガーに指を掛けた。


「……クソッ、あれって……」


 リンコはスコープを覗いたまま舌打ちする。ババ一家のビッグスーツの集団は背中にマウントしていたビッグスーツの身の丈程ある大盾を前方に構え、その状態で低空飛行しながら接近してくる。


「アレじゃ無理か?」

「貫けるとは思うけど一撃必殺とはいかない」

「構わねえ、盾だけ壊すのでも牽制でもいい」


 ニッケルの指示にリンコは了解、と返して再びスナイパーライフルのトリガーに指を掛ける。


「よし、あれだけデカい盾だ。何かしらしわ寄せが来てるはず。間合いに入ったところを遠慮なく叩くぞ!」


 ニッケルが叫ぶ。治安部隊のパイロット達は一斉に姿勢を低くしてビームライフルを構える。


 ガァン!


 リンコがスナイパーライフルを撃つ。ババ一家のビッグスーツの一機のシールドに命中、上側の四分の一程を破壊する。


 ガァン! ガァン!


 スナイパーライフルを撃ち続ける。次々に盾を破壊、あるいは弾き飛ばしていく。半数程の盾を使い物にならなくしたところで、敵機はニッケル達の間合いまで接近してくる。


 バシュバシュバシュゥ!


 治安部隊はビームライフルを敵機目掛けて斉射する。ババ一家側の残りのシールドが次々に破損、または弾き飛ばされていく。


 ニッケルは踏み込んで相手に接近する。


 バシュゥ! バシュゥ!


 ビームライフルを二発。ババ一家ビッグスーツ二機の銃器を持っている手を破壊、続けて治安部隊の放ったビームがババ一家ビッグスーツの胸に穴を空けていく。


 そのまま前進するニッケル。前方でババ一家のビッグスーツがヒートソードを抜いて迎え撃たんとする。


 ニッケルは地面を強く蹴って上方へジャンプする。釣られて上を向こうとするババ一家のパイロットの視界の下端に何かが映る。機体前方にニッケルの二機の浮遊砲台チョーク。直前までビッグスーツの陰に隠れていたのだ。


 バシュゥ! バシュゥ!


 チョークは二発のビームで敵機を一機破壊。


 バシュゥ!


 上空からニッケルがライフルでもう一機射抜く。


「もう四機……」

「いや、俺達もイケる! 撃て撃て!」


 勢いづく治安部隊。大盾の重量の分か、ババ一家の持つ銃器は少し小ぶり。頭数では負けるものの、威力も射程も治安部隊のビームライフル装備に僅かながら利がある。


「このまま押し切れば!」




 その時だった。突如ババ一家の集団の後方から高速で影が飛び上がり、治安部隊へと急接近する。治安部隊の内の一機は、迫る影が鋭い鉤爪かぎづめで自らを引き裂かんとするのを見た――判断が間に合わない。やられる。




 ガキィッ!


 咄嗟の事で目をつぶってしまった治安部隊員。その瞬間に響く衝突音。隊員が目を開ける。


 目の前ではカリオのクロジがビームソードで謎の敵機の鉤爪を受けている。


「食らいさらせ!」


 叫び声と共に、もう一つ影が宙を舞う。青いビッグスーツ、ショウのオールリだ。ショウの手には両刃の道具――クナイが握られている。カリオは鉤爪ビッグスーツの手を振り払い後方へ跳躍、ショウは上からクナイを敵機に投擲する。


 鉤爪ビッグスーツは下がってこれを回避、足元にクナイが刺さる。その後端には爆発物――


 ドォン!


 クナイが刺さった地点で爆発が起こった。煙が辺り一面に広がる。


「おい俺がいただろ! あんなもん使うなよ巻き込む気か!」


 カリオはショウの横に着地して文句を言う。


「いや~あんさんやったら避けてくれるやろと思ってな、信じとったで」


 ショウは怒られても軽い調子で言葉を返す。


「さて、アレが今回のボスキャラ〝達〟やな」


 煙が晴れて鉤爪のビッグスーツの姿が現れてくる――だが先程の一機だけではない。いつの間にか先程の鉤爪ビッグスーツの左右にもう一機ずつ、同じ型の鉤爪ビッグスーツが新たに現れた。


「ニッケル、リンコ。鉤爪の三匹はこっちで引き受ける」


 カリオとショウはそれぞれの得物に手を掛け構えた。



(メタル・ニンジャ・ショウタイム⑤へ続く)

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