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メタル・ニンジャ・ショウタイム③

「部屋に案内するわ。おかしらがちょっと野暮用で来るのが少し後になるさかい、ゴメンやけどちょっと待ってな」


 ショウ・G・ジャンジャンブルと名乗った男は手招きしながら歩き始めた。四人もその後に続いて廊下を歩く。


「……その、ショウ。俺たちここに来るまでに何というか……人がまったく別の人になる場面を見たんだが……」


「ああ、変化の術やな。最近はNISここだけやなくて、お巡りさんとか治安部隊の連中でも使える奴おるからな」


 ニッケルの問いに対して、ショウは淡々と答えた。


(そんなサラリと答えられても……!)


 動揺する四人の表情を見てショウはハハハと笑う。


「……そないウケる顔するって事は、ここら辺は初めてか?」

「もう少し南側ならいくつか訪れたことのある街があるんだがな」

「なるほどなぁ」


 カソックの返答を聞いて納得しながら、ショウはまた小さく笑った。


「思ったより広まってないんやなぁワイらの評判って」

「すごい優秀だってのは知ってるんだけどね~」

「もうちょいテレビとか出た方がええやろか……いやお頭がアカンて言うわ」


 リンコとショウがそう話しているうちに部屋に着いた。ショウが扉を開けると、長机と十脚ほどの椅子、大型のモニターがある一般的な会議室のような、しかし綺麗で落ち着いた空間が現れた。


「えーとこの場合は奥の方か、奥の方座ってくれるか? お頭が上座やら下座やらうるさくてなあ」


 レトリバーの四人が入口と反対側の椅子に座ると、ショウは入口側で、モニターのある壁から離れた椅子にドカッと座り、そのまま足をテーブルの上に乗せて組んだ。

 どう見ても行儀が悪く、やはり他のNISの人間とは大きく違うタイプのようだ。


「……ホントにいるもんだなぁ、忍者」


 カリオが背もたれに寄りかかりながら呟く。


「こっちからすると思ったよりらんもんやなあ忍者って感じや。あんま遠出はしたことないけど、ハットリシティ以外で見たことないからなぁ」


 ショウはポケットから何か丸い飴のようなものを取り出して口に放り込んだ。


「ハットリシティと言えばもう一つあるな――ハイパーマイクロボットの産地。この辺ではここが一番かい?」


 カソックが聞いているのはこの街で出土した古代テクノロジーの事だ。


 ハイパーマイクロボット――テエリク大陸各地から出土している、惑星マールにかつて存在していたであろう古代文明で使われていたと言われているオーバーテクノロジー。その古代文明が作り上げたモノとも、地球の文明が作ったものが渡ってきたモノとも言われている。百ミクロンより小さいロボットで、調整次第で物の加工・制御・運搬・破壊など様々な機能を使用できる。


 ビッグスーツ関連において挙げられる例がビームソードである。粒子をまとわせた大量のハイパーマイクロボットを柄から浮遊させて「刀身」の形にして制御する(つまり実際には「ビーム」と定義されるものとは異なる)。威力は優れるものの、ビームソードを製造できる技術者は限られており、コストも非常に高くつくため、多くのビッグスーツ乗りは高熱実体剣ヒートソードの類か、より刀身の短いダガー・ナイフタイプを選択・使用することが多い。


 この例でも触れたが、ハイパーマイクロボットを扱える技術者は非常に少なく、そして彼らをもってしてもマイクロボットそのものを生産することはできないと言われている。故に、ハイパーマイクロボットを手に入れる手段は、今のところ古代の遺跡・遺物からの発掘のみとされている。


「調整次第で戦場の武器にも工場の工具にも病院の医療器具にもなり得る夢の機械……羨ましがる素行のよろしくない連中が多くて大変とは聞いているが……」

「実際大変や。この街はマイクロボットそのものとそれを扱う技術情報・人材、そこから生み出された品物やらで宝の山や。だから忍者のワイらがなるべくドンパチ沙汰にならんように対処してるんやけどな、今回は残念ながら派手なビッグスーツ戦にまで持ち込まれそうなんや」


 カチャリ、と静かに部屋のドアが開いた。百九十センチメートル後半と思われる長身の、糸目のベリーショートの男性が入ってきた。


「失礼、私はNISの――ショウ君、お客様のいらっしゃる時ぐらいは椅子にちゃんと座りなさい」

「スンマセン」


 ショウは口の中の飴を転がし、小さく笑いながらテーブルの上の足を降ろして椅子に座り直す。糸目の男性は入口側のモニターに近い椅子に座った。


「改めましてNISの頭領を務めております、タケノ・K・バンブウと申します。本日はようこそお越しくださいました」


 お頭――タケノが柔らかい声と物腰で丁寧に挨拶すると、レトリバーの面々も挨拶を返した。ショウはタケノに先程まで雑談していた内容を伝える。


「ありがとうショウ君……今度から来客の際は飴を舐めないように。では依頼の詳しい内容を説明致します」




 ◇ ◇ ◇




「オカダシティのマフィア、『ババ一家』のビッグスーツ隊を、地図上のこのラインにて治安部隊・ショウ君・レトリバーの皆さんで迎え撃ちます」


 レトリバーのクルーはタケノの話に耳を傾けながらモニターを見ている。


「ササキシティですぐ募集出しといてよかったな。明日の朝にはもう街の近くまで来るで」


 そう話すショウの顔を見るカリオ。


「ショウはビッグスーツに乗れるのか?」

「ええ、私が言うのもなんですが、いい腕をしています。」


(忍者のビッグスーツ乗り……!)


 レトリバーのクルーが驚きの表情を見せる。タケノは続けた。


「ですが、NISでビッグスーツを扱えるのは今のところ彼だけです。ついでに言うと治安部隊のビッグスーツ戦の練度もそれほど高くないと思います。数体規模の盗賊を追い払ったことがある程度でして……」


 タケノはモニターの画面を切り替える。遠方から撮影したであろう、ババ一家の所有するビッグスーツと思われる写真やパイロットの情報が映し出される。


「予想される相手側の規模は二十機以上、相当腕のいいパイロットも含まれると思います」

「こっちは治安部隊も含めて十一機か」

「難しいですか?」


 タケノはニッケルの顔を見て聞く。


「いや」


 ニッケルはすぐに否定した。


「このぐらいなら慣れっこだ」




(メタル・ニンジャ・ショウタイム④へ続く)

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