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メタル・ニンジャ・ショウタイム②




 ◇ ◇ ◇




 ササキシティを出て丸一日程、レトリバーはハットリシティの船着き場へ到着した。


 建物は瓦屋根の長屋からモダンな高層ビルなど、形や色に統一性はなく様々で、良くも悪くも賑やかで混沌とした印象を受ける。店や企業の看板で目に付くのは古来より伝わる「カンジ」「ヒラガナ」「カタカナ」と呼ばれる曲線・画数の多い文字。街の第一印象が与えるインパクトは強く、外から来た人間の記憶に確実に残るだろう。


「いや~すごいねこのゴチャゴチャ感、迷子になりそう!」


 リンコは街の様子に興味津々であちこちの店の中をウインドウ越しに覗きながら歩く。その後ろをカリオとニッケル、艦長のカソックの男性陣がついていく形になっている。


 今回の依頼元はハットリシティ治安部隊。内容はハットリシティに向けて進軍しているマフィアの部隊の迎撃であり、街の人員との合同作戦である。彼らとの待ち合わせ場所まで、徒歩で移動することとなった。


 ふと、反対側の歩道を見やると、ワイシャツの上に防弾ベストを着用し、帽子を被り警棒を携えた男性がいる。この街の警察組織の人間だろう。遠くを見ている様子で少し動きに落ち着きがない。怪しい人物でも捉えたのだろうか。


 警察官らしき男性は唐突に、胸の前で両手を組んで人差し指を立てた――




 ボンと音が鳴ったと思うと、突然警察官は煙に包まれた。一秒程して煙の中から彼が歩いて出てきたと思われたが――出てきたのは先程の警察官とは似ても似つかない顔のトレンチコートの男性であった。




「……今の、見たか?」


 ニッケルはトレンチコートの男性に釘付けになりながら聞いた。四人は目の前で起こった出来事にその場で立ち止まり、目を丸くした。


「いや疲れてんだろ。ほら、アレだよ……ササキシティでの買い物で」

「買い物で……?」

「四人とも同じ光景を見てんだぞ……?」 


 三十秒程驚きと混乱で硬直していた四人だったが、考えてもらちが明かず、結局そのモヤモヤを抱えたまま待ち合わせ場所へと向かった。




 四人が辿り着いたのは、かつては和菓子店であったと思われる廃店舗の前であった。


 辺りに人の気配を感じない。場所や時間が間違っていないか、カソックは通信端末を取り出し地図やメッセージを確認する。


 その時である。突然、上から影が四人の背後に降りてきた。振り向くとそこにはタートルネックにハンチング帽、ショートヘアの女性が片膝をついて頭を垂れていた。


「お待ちしておりました、『レトリバー』の皆様」


 女性は顔を上げて立ち上がる。この数秒の所作だけで相当の訓練を受けているものだと予想ができた。


「ミーティングを行う場所までご案内致します。お手数ですがご同行願います。」


 女性はそう言うと歩き始めた。


「……今、上から降って来たよね?」


 戸惑うリンコに同じく戸惑う三人が頷く。とは言え、やはりついていく他はなかった。


 ハンチング帽の女性は路地裏を進んでいく。人目につかない場所へ、ということだろうか。路地裏らしく、ゴミが散乱し、地面のアスファルトは傷み、薄暗い。何事もないのに妙な緊張感があった。


 一、二分程歩くと駐車場に出た。四方を建物で囲まれており、表の道路からはほぼ見えない。質素な黒色のワンボックスカーが一台とまっている。


「お乗りください」


 ハンチング帽の女性はお辞儀をすると、後部座席のスライドドアを開けた。乗り込む四人に対し、女性はアイマスクを一枚ずつ渡していく。


「お手数ですが、合図があるまでそのアイマスクを着用願います」


 四人が着席し、言われたとおりにアイマスクを装着すると、女性は運転席に座り車を発進させた。どうやらどこに向かうかは秘密、ということらしい。


「……なあオヤジ、もしかして今回の仕事仲間さんって……」

「ハットリシティの人間と一緒に仕事をするとは聞いていたが……悪ぃ、てっきり同業者か治安部隊の連中とだと思ってよ」


 目隠しをされたままカソックに聞くニッケルであったが、カソックも詳しくは聞いてない様子だ。


 しばらくすると車が停車した。四人はアイマスクを取るように促され、その通りにして降車する。降りた場所は周りを全てコンクリートの壁と天井で覆われている。地下の駐車場のようだ。


 女性とレトリバーのクルー達は、駐車場の端にあるエレベーターに乗り込む。ハンチング帽の女性がパネルを操作すると、エレベーターは駐車場から更に地下深くまで下りて行った。




 エレベーターのドアが開く。目的地に到着だ。


 地下に居ることを忘れそうになる明るい空間。壁や床、椅子や机、調度品などはどれもモダンなデザインで高級感があり、辺りを小奇麗な服装の人々が忙しなく動いている。


「お疲れさまでした。すぐに担当の者が向かいますので少々お待ちください」


 ハンチング帽の女性は丁寧に礼をすると、胸の前で両手を組んで人差し指を立てた。ボンと音を立ててその場から煙が上がったと思うと、煙の中から先ほどのハンチング帽の女性と似ても似つかない顔のスーツ姿の女性が現れて、廊下を歩いて行った。


「……ひょ、ひょっとしてホントにいるのか? 忍者……」


 カリオは去っていくスーツ姿の女性の背中を見つめる。


「……ここってやっぱ例の諜報機関って奴じゃねえのか?」

「なんかさ、なんか、入っちゃいけない場所に来ちゃった感じするよね……」


 ニッケルとリンコは辺りを見回し、落ち着きがない。


 しばらくすると廊下の奥から足音が近づいてきた。四人がそちらを見る。歩いてくる人影は明らかに周りと様子が違う。かっちりしたオフィスカジュアルの人がほとんどという中で、その男の服装は異様だった。上下共に濃紺、股上が深くダボっとしたボトムスの裾をブーツに入れ、上半身はノースリーブという装い。


 ツンツンしたショートレイヤーのその男は、片手を上げて四人にフランクに挨拶した。




「レトリバーっちゅう船の人らやね? ショウ・G・ジャンジャンブルや。ようこそNIS(Ninja Intelligence Service)へ」



(メタル・ニンジャ・ショウタイム③へ続く)





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