◇ ◇ ◇
ダダダダ!
テンはカリオのクロジに対し、距離を詰めながら両腕のサブマシンガンを射撃する。カリオは右斜め前方に弾丸を
次の瞬間、カリオは大地を強く蹴り、一気にテンとの間合いを詰め、右斜め上から青白く光るビームソードを振り下ろした。
袈裟斬り!
独特の衝突音が響く。ビームソードはテンのビッグスーツを傷つけることなく止まった。テンの両腕のサブマシンガンの下部がヒートソードに変形し、左側のそれがカリオの剣を受け止めていた。
「む、複合武器……」
「便利だぞ。おまえもどうだ?」
テンはサングラスの表示を「喧嘩」に変えるとビームソードを弾き返し、空いている右腕のヒートソードで水平に斬りかかる。カリオはまた地面を蹴り、今度は後方へ下がってこれを避けた。
テンは両手を交差させた状態で姿勢を低くし、一瞬でカリオとの間合いを詰める。カリオの足元に滑り込むと右の剣で斬り上げる。
再び衝突音が響く。カリオはテンの斬撃を防御、しかしテンの
左手による逆袈裟!
上空でもカリオは冷静に相手の攻撃を防御する。逆袈裟を凌ぐとビームソードを振りかぶり、切り下ろす。
真っ向!
飛び上がってきたテンをそのまま斬撃が襲う。テンはこれを右手の剣で弾くと再び斬りかかる。
両者は斬り結びながら高く空へ上昇していく。
横一文字! 袈裟斬り! 逆袈裟! 刺突! 逆真っ向! 袈裟斬り! 袈裟斬り! 逆水平! 真っ向! 逆袈裟! 袈裟斬り! 横一文字! 逆真っ向! 袈裟斬り! 逆袈裟! 横一文字!
ガキィン!
互いの位置が入れ替わる激しい攻防の中、テンは上を取った瞬間に左手を振り下ろす。カリオがこれを防御したところで右手も振り下ろし、カリオの剣に両手分の衝撃を乗せる。
その衝撃はビッグスーツの浮力を上回り、カリオを地面へと叩き落した。
ズドォン!
「むむ……!」
カリオは受け身を取り、後方へ転がりながら跳ね起き、体勢を整えた。落ちてきたクロジに押しつぶされた倉庫が激しく砂埃を巻き上げる。
「殺すつもりでやってんだが、なかなかどうしてケロッとしてやがるな。」
ダダダダ!
テンは上空からサブマシンガンを撃つ。カリオはバックステップで跳ねながら避けていく。
上空から急降下して接近するテン。着地してすぐさまサブマシンガンを連射しながら更に距離を詰めにかかる。カリオは両手で剣を自分の前方で回転させて、弾丸を弾きながら迎え撃つ態勢だ。
テンは強く地面を蹴る。瞬間的にスピードを上げ一気にカリオの目の前まで距離を詰めると、剣を回している手を強く蹴飛ばした。身体に対して垂直に強い衝撃を受けたカリオは大きく吹き飛び、防壁に叩きつけられた。
「ぐっ!」
「後ろはねえな、お侍さんよ!」
テンのサングラスの文字が「トドメ」に変わる。右手を振りかぶり、カリオを一刀両断せんと突撃する。
――ほんの一瞬の間に気づいた違和感であった。先ほどまでカリオ・ボーズと共にあった、青白い光が消えている。
テンがその理由に気づいた時には遅かった。そのような動作は一切見えなかった。
――カリオは「青月」を、充填部に〝納刀〟していた。
カメラのフラッシュのようにほんの一瞬、青白い光がテンの目の前を通り過ぎる。
またも動作は見えなかった。テンのビッグスーツの右腕の肘から先が斬り飛ばされる。痛みが来るより早く、今度は左腕が飛ぶ。
カリオの高速の居合術で勝負は決した。
「え……え?」
状況を把握できないテンのサングラスに「???」とクエスチョンマークが表示される。次の瞬間、テンの乗るコックピットは青白い光で埋め尽くされた。
両腕を失くし、コックピットをビームソードで貫かれたテンのビッグスーツは、仰向けにゆっくりと倒れ沈黙した。
「……アイツらも終わったみてえだな」
ニッケル・リンコの戦況を確認すると、カリオは倒れたビッグスーツを見下ろす。
「……いつかは俺も、こんな風に終わるんだよなぁ」
そんな事を独り言ちると、何故かマヨ・ポテトの顔が頭に浮かんだ。あの
「アイツの記憶とか諸々が片付くまでは死なない方がいいのか……」
カリオは盛大にため息をつく。
「嫌だな、死ねない理由がアイツなの」
もう一度、力の抜けるようなため息をつくと、カリオは中央の建物に向かって歩き出した。
(極秘書物を奪還せよ!⑥へ続く)