防壁の南側、施設の正門の前に、カリオのクロジはビームソードに手を添えて立つ。金属の大扉が立ちはだかるようにそこにある。
「結局正面突破かぁ」
「こっちの状況はもうバレバレだろ。敵さんも隠れる気はなさそうだけどな。こっちのレーダーにがっつり三機、映ってやがる」
「さっきと違ってスリー・オン・スリー、数の上では対等だ。さっさと片付けて今日は早めに寝よう」
カリオは居合の構えを取る。
カリオ・ボーズの特注ビームソード「青月」は、刃を生成する柄とは別に、それと連結するビッグスーツの握り拳大程の大きさのエネルギー
「俺の新装備心配してるけどよ、おまえのそのビームソード一本だけっていうのも相当だよな。すごい今更だが」
ニッケルとリンコが見守る中、カリオは抜刀する。青白い光がほんの一瞬のうちに三回、宙を走ったかと思うと、金属の扉が溶け出し、赤く光る傷が三本現れる。抜刀したままカリオが扉を蹴ると、扉はいくつかの破片となって吹き飛んだ。
目の前に正方形の空間が広がる。高い建物を中央に、倉庫などの小さな建物が散在している。敵機は三機とも律儀に中央の建物を守るように正面に陣取っている。
三機ともグリーン色の機体であり、一機は両腕にバックラーを持ち、一機は一見して兵装の類はわからず、最後の一機は二丁のサブマシンガンを携えている。
「ほう、伸び盛りの〝ブラックトリオ〟さんか。こりゃもう少し報酬吊り上げられそうだな」
サブマシンガンを装備したビッグスーツのパイロットは筋骨隆々かつ二メートル近い身長を有し、威圧的な「天誅」の文字が浮かぶサイバーサングラスを掛けている。
「ハン、お前は二丁拳銃。シンはライフルとシールドの方行け」
「おい、テン! お前の相手が一番楽そうなんじゃねえのか? ビームソード以外何も持ってねえぞ」
「そうだな……だから多分一番ヤバいだろうよ」
テンのサイバーサングラスの文字が「
カリオ達三人は跳躍して散開する。
◇ ◇ ◇
ハンのビッグスーツは速度を上げて、リンコのコイカルへ接近する。そのバックラーの中心の発振器からビームシールドが形成され、バックラーを緑色の光が覆う。
バシュッ! バシュッ! バシュッ! バシュッ!
リンコは後ろに下がりながらビームピストルを連射する。
カン! カン! カン! カン!
ハンはバックラーを動かし、4発のビームを正確に防御、そして――
ゴウッ!
右腕のバックラーでリンコに殴りかかってくる。リンコはこれをスウェーで回避する。
「へぇ……今の動きの癖、ひょっとして女か」
ハンは舌なめずりしながら至近距離でバックラーを振り回していく。距離を取ろうと下がり続けるリンコだが、ハンはぴったりと間合いを維持しながら前進してくる。
ゴウッ!
左腕のバックラーが振り下ろされる。
「
リンコは地面を蹴り、高く上方へ飛び上がる。上空からピストルを撃とうとするが――
「無防備だな女ァ!」
ハンのビッグスーツの背中に何かが見えた。箱状の背負いもの――そこから何かが煙を上げ、発射される。小型のロケット砲!
ドドドドン!
リンコのコイカル目掛けてロケットが連射される。一秒と掛からず、激しい金属音と爆音が響く。全弾命中し、機体に致命傷を与え――たかと思われた。
煙を切り裂いてリンコのコイカルが現れ、着地する。
「痛っ……クソっ、少し食らった!」
コックピットのリンコの右太腿に血が滲む。
「コイツ……あの距離でロケット数発撃ち落しやがった」
バシュッ!
すぐさまピストルで射撃する。脚にダメージを受け機動力が落ちた今、敵機に攻撃する暇を与えたくはない。
カン!
初動が遅れるハンだが、それでも正確にバックラーで防御する。
バシュッ! バシュッ!
続けざまに左のピストルから一発、間髪入れずに右のピストルから一発ビームが飛ぶ。
カン!
一発目のビームをハンが左腕のバックラーで防御する。
カン!
間を置かずに二発目のビームが全く同じ場所に着弾する。正確無比の射撃技術! 衝撃でハンの体勢が崩れ、左腕が大きく外側へ開く。
バシュッ!
ピストルからもう一発発射される。ハンの左腕のバックラー、中央の発振器に向けて。
ボン!
ビームは正確に発振器を射抜き、左のバックラーから緑色の光が消え、火を噴く。
「クソがぁ!」
ハンは左のバックラーを捨て、突撃せんと動こうとする。だがリンコは攻撃の手を休めるつもりはない。
バシュッ!
射撃。ハンは右腕のバックラーで防御する。
バシュッ!
射撃。ハンの左太腿をビームが貫く。ハンはうめき声を上げ、その場で膝を折る。
バシュッ!
射撃。負傷しながらもなお、ハンは正確にバックラーでビームを防ぐ。しかし――
バシュッ!
射撃。ビームは防御が手薄になったハンのビッグスーツの頭部を正確に射抜いた。
「ガッ!?」
コックピットのハンが大きく仰け反り、その額に穴があく。ハンはそのまま力なく首を前に垂れ、動かなくなった。
右腕でバックラーを前に突き出したビッグスーツの頭部は大きく破損し、溶けた金属の縁が赤く光る。動きを止めたビッグスーツは火花をあげながら、ゆっくりと横に倒れた。
「……よし、おしまいかな? だよね?」
リンコはふぅっと息を吐き、両手の銃を降ろした。
(極秘書物を奪還せよ!④へ続く)