「おわああああああああああ!!」
マヨは無我夢中でソラマメを走らせていた。すぐ後ろには先ほど運悪く遭遇してしまった盗賊の一団。数はビッグスーツ十六機に陸上艦四隻。ビームガトリングやらバズーカ、モーニングスターなど、ド派手で危険な武装で固めた見るからにガラの悪いロボ達が、見るからにひ弱な作業ロボを追い回す。
「やめてくださいいい!! 見たまんまお金なんて持ってないですよ私ぃいい!!」
涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになっているマヨの悲鳴など無視して盗賊団は鉛玉とビームをこれでもかと撃ち込んでくる。
「ちょこまかちょこまか動き回りやがって! 中々当たんねえじゃねえか!」
「ド下手糞が! さっさと当てろよ! 奴隷にするか内臓売るかとかは後で考えるからよ!」
「言い出しっぺのてめえがまず当てろや! この××で××の××××が!」
無線から聞こえてくるモラルと治安と教養が皆無のセリフの数々が、年端もいかない少女を更に
「どこか! どこか隠れられるところとか! いやでもあっ――」
ぐらり、とソラマメが急にバランスを崩す。地面の岩に足を取られてしまったのだ。
「NOOOOO!!おた、おたすけえええ!!」
そのままソラマメは無様にうつ伏せに倒れてしまった。マヨは号泣しながら操縦桿をガチャガチャととにかく倒しまくる。
必死のガチャガチャも空しく、ソラマメはごろんと仰向けに向きを変えただけで起き上がれない。巨大な
「うぅ……ぐひっ……幸の薄い人生でしたぁ……!」
マヨは恐怖でぎゅっと目を瞑る。
ガァン!
響いた轟音に驚いたマヨは目を開いた。盗賊の巨大な斧に斬られてしまったのかと思ったが違う。目の前の斧ビッグスーツの片腕が無くなっている。
斧ビッグスーツもまた、突然の出来事に驚き周囲を見回す。
ガァン!
二回目の轟音、今度は斧ビッグスーツの胸部――コックピットに風穴が空いた。心臓を撃たれた人間と同じように、パイロットを失った斧ビッグスーツはドスンと音を立て倒れた。
ガァン! ガァン! ガァン!
「ぬおおお!?」
連続で響き渡る轟音にマヨは思わず耳を塞いだ。モニターに映る光景に釘付けになる。轟音が響く度に、少女を追いかけまわしていたガラの悪いビッグスーツの四肢が吹き飛び、胴に穴が空いていく。
「なんだ!? 狙撃!?」
混乱する盗賊たち……一キロメートル程離れたレトリバーの甲板から、リンコが狙撃しているのだ。
「九時の方向だ! くそっふざけ――」
バシュゥ!
狙撃に反応した盗賊のビッグスーツを、少しずれた別の方向から飛来したビームが貫いた。
マヨは先程とは別の意味で混乱しながらも、ソラマメの体勢をなんとか立て直す。ドンと着地音が正面から聞こえた。見ると、黒塗りのコイカルがソラマメを庇うように立っている。ニッケルだ。
ソラマメの通信機が着信音を鳴らす。目の前のコイカルからの通信要請。マヨはすぐに繋いで半狂乱で叫んだ。
「うおおお! 味方ですか! 優しい人ですか! おたす、お助けえええ!!」
「待て、待……ちょ、落ち着け!落ち着……」
ニッケルは泣き叫びまくる無線の相手を、なんとか落ち着かせようとした。
「落ち着いて聞いてくれ、ここは俺たちが引き受けるからアンタは今から送る座標に――」
「死ぬかと思いました! もうだめです死んでしまいました違う死ぬかと思いました!!」
「待って落ち着いて!?」
ボン! と爆音がまた別の方向から響いた。音の方を見るとカリオのクロジが盗賊の機体をビームソードで切り伏せていた。
「どしたい!? 何突っ立ってんだ!?」
カリオはニッケルのコイカルに向かって叫んだ。
「逃げていたパイロットが混乱状態だ、誘導したいんだが……」
ガガガガガ!
会話する二人に向けて盗賊が発砲! ニッケルはシールドでいなし、カリオはマヨのソラマメの腕を引き、大きく跳躍して回避!
「ちっ!」
「くそっ、
毒づく二人にリンコから通信が入る。
「ゴメン、二人とも! 狙撃に反応して何機か私の方来てるから、そっちの残りはお願いね!」
リンコはそう通信すると、レトリバーに接近中の敵機に向けて照準を合わせる。
「カリオはそいつと一緒に一旦距離を取れ!」
ニッケルはそう叫ぶと跳躍して盗賊を二機、素早くビームライフルで撃ち抜く。続いて接近してきた一機をシールドで殴打し、更に迫る一機に対して迎撃態勢を取る。
「よしこのまま離れ――」
カリオがマヨのソラマメを退避させようとした時である。
ドスンと音を立てて盗賊のビッグスーツが一機、カリオ達の前に立ちふさがった。他の盗賊の機体より一回り大きく、左肩には「すごくえっちなことかんがえています」と書かれた
「む」
カリオはソラマメを後ろに庇い、ビームソードの切っ先を相手の頭部に向けて構えた。
「こいつが親玉か」
(マヨ・ポテトの災難④へ続く)