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第2話 ダイゴくんは勇者への道を行く

異なる世界からダイゴくんの肉体に転生してきた、

悪とされた令嬢、私アイリスの魂は、

この世界のダイゴくんとともに日々を過ごしています。

ひとつの肉体に二つの魂がある状態ではあるけれど、

ダイゴくんの意識がはっきりと言語になっていない所為もあり、

私アイリスの魂とケンカすることなく共存しています。

ダイゴくんの意識に自我がしっかり芽生えてきたら、

もしかしたら私の意識は邪魔になってしまうかもしれないけれど、

それまでは、ダイゴくんをしっかり正しい道に導いていきたい。

あるいは、自我が芽生えた幼子になってからも、

ダイゴくんをそっと支えていければと思います。

ダイゴくんは愛される存在であってほしい。

それは、愛される勇者になって欲しいという私の願望であるとともに、

なによりダイゴくんに幸せになってもらいたい。

可能であるならば、

たくさんの幸せを感じて生きていってもらいたい。

肉体を共有しているけれど、

まずはダイゴくんという存在が幸せであってほしい。

私アイリスの幸福は、ダイゴくんとともにあります。


日常を過ごしていて、

私は本当に平和な世界に来たことを知ります。

まず、お父様もお母様もよき人です。

お父様は賢そうな方のようです。

お母様は心根が優しく繊細な方のようです。

お母様は少し心配性な節があるとお見受けします。

時々不安になられて泣かれています。

お父様はその不安を取り除かれるのがお上手なようです。

お父様の賢さは、そんなところにも発揮されているのかもしれません。

また、お父様は何事も何とかなるという考え方のようです。

その考え方も、お母様の不安を和らげるのによいのかもしれません。

お父様とお母様は、とても良き夫婦であり、

ダイゴくんの親御様として、理想的であると思われます。


ダイゴくんは力強い四つん這いで、

あちこちを行きます。

親御様たちの言うことには、ハイハイと言うそうです。

這うからハイハイと言うのかもしれません。

とにかくダイゴくんはハイハイであちこちを行きます。

赤ちゃん用の椅子に座って、美味しいものをいただいたりもします。

私の元いた世界にはなかったような味です。

家の中の作りも、私のいた世界とは全然違いますし、

本当に別の世界に来たのだなと思います。

私がこの世界を物珍しく思っていると同時に、

ダイゴくんもいろいろなものを新鮮なものとして見ているのだと感じます。

私は別の世界の記憶がありますが、

ダイゴくんは生まれて間もないので、

目にするものが全て新鮮なのでしょう。

私と共有しているダイゴくんの意識は、

イメージとして驚きや喜びなど、いろいろなものが流れていきます。

初めての人生というものは、

こんなにも鮮やかな驚きに満ちているのかと、

同じ身体の中で感じています。


また、親御様たちはダイゴくんをお散歩に連れて行かれます。

私の目にしたこともないような建物が並ぶ町です。

そこに、人々が暮らしているようです。

道行く人たちは、ダイゴくんに笑顔を向けられます。

かわいいね、大きくなったね、

いろいろな良い言葉が投げかけられます。

ダイゴくんは言葉を理解しないようですが、

笑顔を向けられると、自然と笑顔になっているようです。

真似をしているというのもありますし、

心地いいということを感じているのかもしれません。

ダイゴくんは道行く人々にすら愛されています。

愛される素質を持って生まれ、

そして、人々がダイゴくんを愛するような、

穏やかで平和な世界の平和な町に育っているのだと思います。


私もいろいろな言葉を聞いて、

ここが日本という国であると聞きました。

文字はまだ読めませんが、

お母様の絵本の読み聞かせなどで、

徐々に覚えてきています。

しばらくすればダイゴくんも覚えるでしょう。

お母様の絵本の読み聞かせは心地よく、

ダイゴくんもよく笑います。

私も言葉を覚える術として、

お母様の読み聞かせを楽しんでいます。


ある時、お母様はダイゴくんを車というものにのせて、

大きな建物に向かいました。

車というものは、馬のない馬車のようです。

仕組みはわかりませんが、そのようなものです。

大きな建物では、赤ちゃんのハイハイ競争が行われるとのことでした。

出場赤ちゃんはダイゴくんを含めて三名。

私は、ダイゴくんの輝かしい勇者への第一歩として、

この赤ちゃんハイハイ競争を制しようと思いました。


ダイゴくんを含めた赤ちゃんたちが位置につき、

一斉はお母様に向けてハイハイをします。

ダイゴくんの力強いハイハイです。

しかし、ダイゴくんは、隣の赤ちゃんに向けて笑顔でご挨拶します。

私はダイゴくんを競争に向けようと思いましたが、

ハッとしました。

ダイゴくんはすべての存在が友達のようなものであると思っている。

競争相手というものだと思っていないのかもしれません。

みんな友達。

それはなんと素晴らしいことでしょう。

まさしく大きな愛です。

ダイゴくんはハイハイ競争で二位になりました。

競争を制するよりも大きなものを私は感じました。

ダイゴくんはすべてを愛することができる。

そして、すべてに愛されると感じている。

愛される勇者として、これは大きな一歩であると思います。


平和な世界で、みんなに愛される存在。

ダイゴくんはそんな存在として、

日々を健やかに生きています。

私はそのダイゴくんを、良き方向に導いてあげたいと思いながら、

ダイゴくんとともに驚きに満ちた日常を過ごしています。

この世界は、優しく、鮮やかで、心地いいものです。

私にとっても、ダイゴくんにとっても。

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