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四十二話 神殺しは迷宮の中で 其の拾参

 レイルが握る共鳴器は形を変えるとバサラが見たことのない武具へと変化した。先端に細かな機械の様なものがついており、指を動かすのすらままならない、そんな印象をバサラは受けた。


 だが、だからといってバサラが加減をする事はなく、涅槃静寂ニルヴァーナをレイルに向けて振るう。


 レイルはそれを簡単に避けると共鳴器・五色の糸パラダイス・ガイドの力を使うために指を動かした。五本の指を動かすと機械の先端から糸が出て来て、続け様に仕掛けていたバサラの攻撃を防いだ。


 防いだと同時、左手の指を動かし、手を振るうとバサラはその攻撃から見えた大きな氣に気づき体を逸らす。手から放たれた糸が一つとなり、鞭の様になると刃の如き鋭さを見せ、部屋の中の黄金を簡単に切り裂いた。


(あの糸も共鳴器、なのか? 糸による防御は涅槃静寂ニルヴァーナの一撃も防げるし、攻撃では黄金をも簡単に切り裂く殺傷力。攻守共に隙のない武器だ。でも、あの共鳴器には多分、明確な弱点がある。まぁ、分かっててもそこをつけるかどうか!)


 そんなことを考えているとレイルの猛攻は止まらずバサラは涅槃静寂ニルヴァーナを使い、糸の斬撃を弾く。


(バサラとか言ったか? コイツ、俺の糸の攻撃を簡単に防いだ。五つある糸での斬撃は不規則であり、細やか故に、ああも簡単に防げないはず。何故だ? 目か、あの目が俺の斬撃を視認させているのか)


 互いに相手の動きを見ながら思考する。

 バサラとレイルは気付いていないが、彼らの戦い方は似ており、戦いの最中に分析し、相手の弱味を明確に突き詰めるモノであった。


 一挙手一投足、全てが互いの癖と弱味を曝け出すことでありながら止まることなく、得物を振るい続けた。


 レイルは涅槃静寂ニルヴァーナによる斬撃を簡単に避けながらも自身の糸で攻撃を放つもバサラもまた、それを切り裂く。


 攻防一体による応酬の中、その分析を一歩早く終えた者がいた。


 レイルは右手の糸を使い、斬撃を放つと次に、彼は距離を詰め、蹴りを放った。


 ここまで一度も蹴りなどを使わなかったレイルの行動に一瞬、驚くもバサラは涅槃静寂ニルヴァーナを用いて防ごうとした。


 共鳴器・五色の糸パラダイス・ガイドの本質、それは強化。


 糸を強化し、攻撃防御両方を担わせており、糸のみを強化することに絞ることでその能力を跳ね上げさせていた。


 そして、蹴りの直前、左手の糸を纏わせており、その一撃は糸の斬撃同様の効力を発揮する。


 涅槃静寂ニルヴァーナを挟んでいたがバサラ諸共吹き飛ばし、互いの均衡が今ここで崩そうとレイルは追撃した。


 バサラは砂埃を纏いながら立ち上がるも既に、レイルは動いており、彼の左頬へ拳が振るわれる。


 バサラはハスターとの戦闘時、左目を傷つけられており、そこにレイルの一撃を喰らい、この瞬間の間は完全に使い物にならなくなってしまった。


 左目からは血が流れ、一度目を開けるも視界は赤く染まっており、紅くボヤけるためにすぐに閉じた。


(やられた、左目が見えない。ぼんやりと、氣を捉えれるかどうか。これ不味いぞ?!)


 レイルの分析の結論。

 それはバサラの目が持つ特殊な感性であるとし、その強みを潰すために彼から手での攻撃以外のカードをわざとない様に見せかけることで奇襲を仕掛けることした。


 その策は完全にハマり、バサラの視界を潰すことを成功すると左側を中心に動き、徹底的にバサラの身体を傷つける。


 迷宮ダンジョンに入ってから連戦に次ぐ連戦。


 それでもバサラの傷をつけるものはおらず、邪神ですら彼の破壊を前に、蹂躙してきた。


 だが、その彼の命を脅かす存在を前に、吟千代ぎんちよが動いた。肋を三本折られた事あれど、恩人が傷つけられる姿を見ることが出来ず、レイルへと飛び掛かり抜刀する。


馘無侍くびなし流、 蛇比礼へびのひれ


 レイルの糸はその場にいる人間の動きを把握する様に出来ており、吟千代ぎんちのの一振りは簡単に防がれてしまう。


サムライ、お前、俺に傷つけられたこと、忘れたか?」


 その瞬間、彼の意識が一瞬だけ吟千代ぎんちよに向いた。


 そして、その一瞬を、バサラは逃さない。

 吟千代ぎんちよに向いた意識の隙を着き、レイルの体に目掛けて横振りで涅槃静寂ニルヴァーナの一撃を打つけ、彼を吹き飛ばした。


 殺意を極限まで減らし、いつか空くであると確信した隙を吟千代ぎんちよが生んでくれたことにより、この戦闘でレイルに初めてまともに攻撃が当たった瞬間でもあった。

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