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四十一話 神殺しは迷宮の中で 其の拾弍

 バサラの荒々しい戦い方、目つき、口調、それらを見ていた吟千代ぎんちよはゾクゾクしていた。


 優しくも強い、それがバサラに対しての評価であり、まだまだ、底が知れぬ実力をいつかは引き出して見せると意気込んでいた。


 だが、そんな彼が人ではないモノにだけ見せた暴力性。吟千代ぎんちよの胸はバクバクと高鳴り、止まらない。


 そんな彼女を心配してバサラは先ほどとは打って変わって別人の様な口調で喋りかけた。


吟千代ぎんちよ!!!! 大丈夫?! 」


「は、はひ」


「呼吸も絶え絶え!? 息して! 息!」


 バサラが心配し、顔を近づけると吟千代ぎんちよのドキドキは止まららず、声が掠れてしまう。


「…ラ殿」


「え?! どうたんだい?」


「…かいです」


 更に顔を近付け、吟千代ぎんちよの言葉を聞こうとした。


「近いです!」


「あ?! ごめんよ!」


 吟千代ぎんちよは胸の音が聞こえていないよなと確認し、自分を落ち着けようとする。


 バクバク、ドキドキと鳴り止まぬ鼓動をなんとかして止めようと必死になるもそれは止まらなかった。


 それを気づかれぬ様に、悟られぬ様になんとか取り繕うと一生懸命に普段通りに接しようとした。


 だが、その胸の高鳴りは一瞬にして鳴り止んだ。


 ザッ、ザッと音を立て、その地では見れない格好をした青髪の青年が部屋に現れた。


 顔は中性的な顔立ちで、ジャラジャラと鎖や指輪を身につけたその時代には似つかぬ見た目の青年は吟千代ぎんちよに目を向けると声を上げた。


「何をしてる、サムライ。この迷宮ダンジョンの宝を持ってこいと言って何日が経ったと思う?」


 青年の威圧的な声を聞き、バサラも目を向けると吟千代ぎんちよは彼を睨みつけながら応えた。


「申し訳ない。こんなに深くまで潜るとは聞いてなかったものでな。拙者も苦労していた」


「言い訳なんて聞いてない」


 青年は目の前から消え、吟千代ぎんちよとの最短ルートを辿り、彼らとの距離を詰めると彼女の命を奪うためにガントレットをつけた拳を振り下ろした。


 それをカツラギ・バサラが許すはずはなく、青年の突きを涅槃静寂ニルヴァーナで弾くと彼は口を開いた。


「いきなり会ってそれはないんじゃないかな」


 吟千代ぎんちよの頑張りもここに至るまでの道のりを何も評価せずに襲い掛かる青年に対して、バサラは敵意を示すと彼はそれに苛立ちを露わにした。


「五月蝿いな、現地人おっさん。俺はあんたと喋ってない。仕事が出来ないメンバーに罰を与えてるだけだ。痛い目見たくなければ退いとけ」


「そうなんだ、でも、吟千代ぎんちよ迷宮ダンジョンを攻略し終えた。これは彼女の功績だ。そこに目を向けないで攻撃するなら僕が許さない」


 バサラは構えると再び吟千代ぎんちよを守るために立ち塞がる。だが、バサラの許さないと言う言葉が青年の怒りの琴線を刺激した。


 髪をかきあげ、両腕を前にし、彼もまた交戦の構えを取るとこの世全てを憎む様に敵対する相手に自分という人間を認知させるために名乗る。


廃棄孔アクタール三席掃除屋クリーナーレイル・カラマーゾフ、お前に死を与えるモノだ。名前は手向けで覚えてけ」


 神にも至るオーラを纏う相手の名乗りに対して、バサラもまた返すために答えた。


「カツラギ・バサラ、そっちが名乗るなら僕も名乗るのが礼儀だ」


「バサラか、なるほど、そうか、殺し合おう。俺とお前は相容れない。殺し合う以外に自分と言う存在を認められないだろうからな。我が運命は壊滅。求めるは終焉、目覚めるは破壊者。共鳴器・五色の糸パラダイス・ガイドよ、我が運命の導に従い解き放て。その真なる姿を」

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