三十三話 神殺しは迷宮の中で 其の肆
バサラは自分が作った鍋を食べ落ち着くと美味しそうにご飯を掻き込む吟千代を見ながらかつてジータ達、四護聖に夕飯をよく食べさせて帰らせていたのを思い返していた。
(ジータ達に夕飯を振舞った時もこんなんだっけ。いい食べっぷりだなー。吟千代、こう見たら実は結構幼いよはずだよね? それなのにさっきみたいな氣の使い方が出来るなんて。どれほどの時間を鍛錬に費やしたんだ)
「バサラ殿! まだ、残っているのだが、この中のものは食べても宜しいか!?」
「うん、遠慮せずにお食べ。焦らなくてもまだまだ、あるし」
吟千代は嬉しそうに鍋から野菜ときのこを取り、汁を啜り、米を掻き込んだ。その勢いは止まることなく、パクパクと口に運び、いつの間にか鍋の中身も炊いておいた米も全て無くなっていた。
「ご馳走様でした!!!! バサラ殿は天才か?! 飯も作れれば強者! 恐れ入った!」
「あはは、お褒め頂けて何より。いい食べっぷりで僕も嬉しいよ」
「一食分の恩は重いぞ~、バサラ殿! 取りたい首があるのであれば拙者に申せ! すぐさま取って参るぞ!」
吟千代はそう言うと自身の鞘に収まっている得物をぶんぶんと振り回しており、バサラは彼女が握るそれを不思議そうに眺めた。
「吟千代の持ってるその武器は一体どうなってるんだい? 見た感じ丈夫ってよりも切れ味に特化してる? 感じるんだけど」
バサラが刀に興味を持ってくれたことに嬉しくなったのか、彼の顔に自身の顔を近づけると吟千代はとても嬉しそうに反応する。
「バサラ殿! お目が高いな! ふふふ、この一振り、名を妖刀・毘羯羅! 拙者が馘無侍流を継承した時に師匠から頂いたモノだ! 何せよ、打った瞬間に人が消えたと言う曰く付き! これで斬れぬものは無いぞ!」
「へえー、そんなに凄いものなんだ。たしかに、そんな形の武器を加工する技術、ここには無いかも知れない。僕が知ってる限り、一人しか出来ないかな」
「ほう! これを打てるとは! 腕利きの鍛冶屋いるんだな! カラカラカラ! お会いしたい!」
「そうだね、いつか会わせたいな。よし、片付けも済んだし、そらそろここを出ようか! ねえ、吟千代、もし良ければ一緒に迷宮を攻略しない?」
バサラの提案に吟千代はキョトンとした。人に力を共にすることを提案され、自分がそれに答えても良いのか少しばかり戸惑うも直ぐに思考を切り替えると嬉しそうに答えた。
「バサラ殿が良ければ! 拙者もお共させて頂きたい!」
迷宮攻略第二階層にて、馘無侍吟千代が仲間になった。