「グェ!? グェェェェ!?」
ゼマの放った【刺突乱舞】は、空中でララクを攻撃しているシームルグの背中に全てヒットする。
いくつもの棒先の形をした跡が、大怪鳥の体に刻み込まれていた。
おそらくシームルグはさっきの激突で、ゼマを倒したと勘違いしたのだろう。だから止めを刺さずに、ララクへと突っ込んでいった。
その思い込みが仇となったのだ。
致命傷にはならないが、【ソニックバード】を中断するには十分な攻撃だった。
嘴が剣から離れ始めた。
(反撃するなら今しかない!)
突進を避けることは出来なかったが、逆にこれでシームルグにララクは近づくことが出来た。
攻撃を当てる絶好のチャンスだ。
「【フレイムショット!】」
ゼロ距離での火炎攻撃。シームルグに炎系統のスキルが効果的なのは、【フェザーウィンド】を燃やしたことで立証済みだ。
ただ、それを本体に当てるのが難しかったが、この距離であれば、間違いなく体に引火する。
「ジュレェェェ」
生きたまま火あぶりにされるシームルグ。ララクの放った【フレイムショット】は、いとも簡単にその体を包み込んでいく。羽があるので火が燃えやすいようだ。
問題はここからだ。
その距離で炎を使えば、当然ララクにも引火する。
自分の放ったスキルが自分に効かないというわけではないのだ。
「【アーマークリエイト・ハード】!」
ララクが言い放つと、彼の体が瞬時に紅蓮の鎧に守られていく。
スキルで耐熱効果を持った防具を作り出し、それを体の周りに出現させることで、一瞬で換装したのだ。
兜も作ってあるので、全体をしっかりと守られる設計だった。
それでも、パッシブスキルで強化されすぎた【フレイムショット】は防ぎきれない。耐熱の鎧が熱をすべて遮断できず、ララク本体に流れ込んでくる。
彼自身【炎耐性】を所持しているのだが、それでも炎の熱ダメージを完全に押さえこむことは出来なかった。
「っぐ、ぐぅぅ」
熱による痛みを堪える。微かに肌が焼け始めていた。
さらに、痛みと鎧の重量が加わったことにより、使用していた【空中浮遊】が強制的に解除されてしまった。これにより、鎧の塊となったララクの体は真下へと落下して、地面にぶつかった。
幸いなのは、耐熱の鎧には炎が引火していなかったので、これ以上炎のダメージを受け続けるということはなかった。
それに反して、シームルグの全身にはいまだ火炎がまとわりついていた。
熱に耐えきれなくなったシームルグは、その場で【ソニックバード】を発動して、炎を消そうとした。
風の力も相まって、炎は収縮していくが、完全消火までは時間がありそうだ。
「はぁ、はぁ。やっとまともなダメージが入ったのか」
あおむけで地面に落下したララクは、そのままの態勢で空中を暴れまわりシームルグの姿を見ていた。
彼の意識ははっきりしているので、ダメージは受けたが無事なようだ。
鎧が熱を保持したままなので、解除して元の軽装備に戻った。
「……はぁ、あんた大丈夫?」
そんな倒れているララクに近づいてきたのは、もう普通に歩いているゼマだった。頭の血はまだ拭ききれていないが、傷口は見事に塞がっていた。
「やけど、したみたいです」
全身がひりひりと痛みだす。炎系統の特徴の一つで、当たった相手を火傷状態にすることがある。しかも、治りが遅く跡に残りやすい。
「そう。なら、治せるよ。【ヒートリカバリー】」
ゼマは回復の一種であるリカバリー系のスキルを発動した。これに該当するのは、【ヒートリカバリー】【ポイズンリカバリー】【スリープリカバリー】などだ。
特徴として、継続的なダメージや効果を対象に与える、いわゆる『状態異常』を打ち消すことのできるスキル群だ。
【ヒートリカバリー】は火傷を治し、ある程度であれば皮膚も再生する。炎系統はメジャーなスキルなので、単純な回復スキルと同じぐらい重宝されている。
「ありがとうざいます。一通りの回復スキルは持っているんですね」
ララクの体中から、火傷が綺麗に消え去っていく。耐熱の鎧を着ていたおかげで、そもそも重症ではなかったようだ。
「まあね。ほら立ちなさいよ。まだ、戦いは終わってないんだから」
寝転がっているララクに、ゼマは手を差し伸べる。
「はい。勝ちますよ、ゼマさん」
「もちろん。負ける気はない」
ララクは彼女の手を取り、力を借りて起き上がった。
2人は土ぼこりなどを掃うと、作戦会議を行う。