リチャード、アレックス、ニーナの三人は慌ててタクシーを捕まえ飛び乗った。
「ピュリファイン本部まで!」
しかしタクシー運転手は目的地を聞いて恐れてしまう。
「え、今そこに向かうんですか……?」
そう言って座席についたモニターを指す運転手。
そこにはニュース映像が映し出されていた。
「マジかよ……」
ピュリファイン本部のビルは一部から炎が上がり周囲には多くの見物人や報道陣が溢れていた。
「我々こういう者です、どうか連れてって下さい……!」
リチャードが冷静に浄化警察手帳を見せる事で正体を理解しようやくタクシーは動き出した。
その際にアレックスは疑問に思った事を問う。
「何で本部がやられてるんだ? 脱獄したってなら収容所からそのまま逃げれば良いのに……」
「私たちが居ない間に本部潰そうって事?」
「だとしたらマズいな……」
しかしアレックスとリチャードは更なる疑問が浮かぶ。
「でもマイクがそんな事するのか……?」
ビヨンドか人間かはさて置き、マイクがそのような事をする者には思えなかった。
☆
そして例の現場、ピュリファイン本部ではマイク達ビヨンドがテレサを探して走っていた。
やって来たカオス・レクスの残党からガスマスクと無線機を受け取りここまで来たのだ。
「クソッ、カオス・レクスのヤツ……! 暴れ過ぎだ!」
違う階層にいるレクスが暴れる衝撃がここまで伝わって来てヤツの強さとヤバさを実感してしまう。
「でも好都合じゃない? 出来る限りここを壊せれば逃げた後に追って来られないだろうし……!」
しかし合流したラミナはこれを良い機会だと言う。
確かに今後の事を考えれば今のうちに破壊しておいた方が良いだろうが。
「確かにそうだが……」
悩み続けるサムエル。
その一方でジークが声を上げる。
「あった、制御室!」
このビル全体を管理する部屋へ辿り着いた。
ジークならばそこの機械を操作しテレサの居場所を掴む事が出来るだろう。
「えっとテレサは……」
部屋に入り監視カメラやデータの情報を調べ始める。
そして遂に掴んだ。
「見つけた! テレサは最上階にいる!」
「でかした!」
一同は外に出てテレサの所へ向かおうとするがジークは部屋を出ようとしなかった。
「僕がここから管理するから皆んなは行って!」
ジークは司令塔のような役割を担う事となった。
そしてその護衛にカイルが名乗り出る。
「ならば俺がジークを守ろう。テレサは任せた」
サムエル達にテレサを託しカイルはジークを守るために制御室の扉の前で立っていた。
「こっちに兵士が向かって来てる、サムエル達は早く行って!」
「あぁ、分かった!」
そのジークの声と共にサムエル達は走り出し上へ向かう事となった。
「じゃあ死ぬなよ!」
そして走り出す三人。
サムエル、ラミナ、マイクはテレサの所へ向かう事となった。
***
最上階を目指して階段を駆け上っているとジークからの無線が。
『マズい、上から兵士が来る! 結構な数だよ!』
ピュリファインの強力な戦士は多く出払っている。
しかしその代わり力は劣るが数が多い兵士たちが今守っているのだ。
「それくらいっ!」
エレメントを出して迎撃体勢に入るラミナだったがサムエルが静止する。
「よせ、この狭さで銃撃戦になったらマイクを巻き込む!」
階段の狭さ、そして敵は上から来るという不利な状況。
更にその中で銃撃戦ともなれば戦えないマイクは巻き込まれてしまうのも無理ないだろう。
「チッ、アンタ本当迷惑!」
そう言って三人は仕方なく一度このフロアで階段から降りる。
まだまだ最上階までは遠いが一度ここで迎え撃つしかない。
「くっ、来てるよ……!」
足音が階段のある扉の奥から聞こえて来る。
流石のビヨンドでも銃を撃って来る兵士の軍勢を相手にするのは骨が折れるのだ。
「っ……」
サムエルは少し考える、悩んでいるようだった。
そんなリーダーの様子を感じたラミナは大きな溜息を吐く。
「はぁぁ、先に行きな!」
「……え?」
「どの道コイツ巻き込んじゃうでしょ? それにアンタの触手なら壁を伝って登れる!」
なんとラミナはサムエル達に先に行くように言ったのだ。
そのタイミングで扉が開き兵士たちが入って来る。
「いたぞ! うわぁ⁈」
ラミナは兵士たちが入って来たタイミングで扉の方に砲撃を放ち煙幕で目眩しをした。
「ホラ早く!」
これを自分らのために行ってくれたと悟ったサムエルは感謝をする。
「すまないっ!」
そしてマイクを片腕で強く抱きかかえ忠告した。
「しっかり捕まってろ、振り落とされるなよ!」
「えっ、えっ⁈」
マイクは状況が理解できていないようだがそんな暇はない。
サムエルは急いでマイクを抱えたまま窓ガラスへと飛び込み突き破り外へ出た。
そのまま落下する前にエレメントを繰り出し触手で外壁を登って行く。
「うわぁぁぁっ⁈」
初めての経験にマイクは恐れていたがそれでもサムエルは止まらず最上階まで一気に登って行った。
「ここだぁ!」
そしてガラスを蹴破り最上階に突撃しようとした。
迫るガラス、マイクの視線の先には大切な人の姿が見えていた。
☆
一方、最上階で機械に拘束されていたテレサは。
「ぐっ、うぅっ……!」
父親である総司令は市長との食事会に出掛けているため研究者であるアルフと二人きりで体を調べられている。
「総司令も冷たいものだよな、娘が苦しんでいると言うのに……」
アルフの持つパソコンのモニターに映されている数値はもうすぐ100%に届く。
それはテレサを侵食する汚染物質や彼女に宿るゲートという存在を探知し終わるという事だろう。
「もうすぐスキャンが終わる。そうすれば総司令の指示により君はエレメントの源、テイルゲートを取り除かれる」
「ぐっ……」
「総司令はその力を君に持たせておくべきではないと判断した、あまりに強力過ぎる危険な力だ。現に君の体を大きく変貌させているからね」
その話を聞いたテレサは自身の推測が限りなく正解に近かった事を知る。
そして人間からビヨンドになった原因も。
「やっぱりね、私の力はエレメントの中核……っ! だから与えられたエレメントを宿すビヨンド達の体を癒せたっ」
仲間たちを癒せた理由に気付く。
テレサの推測を聞いたアルフは少し歯切れの悪い返事をした。
「あぁ……その力と君自身が元より宿すエレメントが合わされば危険だ、暴走するかも知れない。でも取り出そうにもその際に君のエレメントと触れたらマズい」
これまでの実験の意味を語り出す。
「だからこそ総司令は先に君のエレメントを取り除きテイルゲートに侵食させないようにしたのさ」
「子供の頃からの実験って……!」
幼い頃に受けた実験の内容を遂に知るテレサ。
彼女にとっては嫌な伏線回収だ。
「だけど君は途中で逃げ出したから。だから今もこうしてやってる、もうすぐ終わるよ」
再度パソコンのモニターを確認するアルフ。
その表示は95%を超えていた。
「これで純粋と成った君から安全にテイルゲートを取り出せる、ひとまず世界から危機が去るんだ」
そして遂に表示は100%へ。
テレサに宿るエレメントが取り除かれた印だ。
「よし来た、これで君に汚染物質はもうない。安全にテイルゲートを取り除けるよ」
機械に近付きモードを切り替えるアルフ。
その際にテレサは項垂れながら質問をした。
「ねぇ、何で私にテイルゲートがあるの……?」
それは何よりも気になる事だ。
全ての答えに繋がるかも知れないから。
「さぁ? 私は知らない」
そう言いながらもテレサの体を調べるアルフ。
「そう……」
テレサは少し項垂れた。
そしてアルフはパソコンのモニターに目を向けながらテイルゲートの存在を探した。
「ん……?」
しかしそこで何かがおかしい事に気付く。
そのタイミングで勢いよく扉が開いた。
「おぉっ!」
そして現れたのはなんとカオス・レクスであった。
エレメントを思い切り剥き出しにしておりその全身に返り血を浴びている。
「む、カオス・レクス……!」
少し顔を顰めるアルフだった。
するとレクスはアルフに向かってテレサを指しながら言う。
「残念なお知らせだ、もうソイツにテイルゲートはねぇ」
そのレクスの言葉、そしてモニターに映るデータ。
アルフはこれまでにない焦った表情を浮かべる。
「ではどこに……っ」
そう言ったタイミングで勢いよく窓ガラスが蹴破られる。
サムエルとマイクが到着したのだ。
「テレサっ、無事か⁈」
仲間たちが来てくれた事で喜んだテレサは苦しみながらも口角を上げたのだった。
☆
研究者たちがサブマシンガンを構える。
サムエルとマイクを狙っている事が分かった。
「うぉぉっ⁈」
そして一気に撃たれるがサムエルはエレメントで防ぎマイクは机の後ろに隠れる。
その際にテレサまでの距離を測っていた。
「マイクッ、今のうちにテレサを!」
「もちろんだ……!」
机の裏から隣の机の裏に隠れるように移動するマイク。
徐々にテレサの所へ近付いて行った。
「テレサッ!」
そしてとうとう彼女の所へ辿り着いたマイクは必死に拘束具を外そうと努める。
しかしマイクの力では外れない、鍵が必要らしい。
「マイク、来てくれたんだ……」
「当たり前だろっ! 待ってろ、今鍵を……!」
項垂れて弱りながらも感謝を伝えてくれるテレサに胸が痛む。
そして彼女を助けるため視線を動かし向こうの机に医療用のメスがあるのを見つける。
走ってそのメスを持ったマイクはアルフに駆け寄り彼を人質に取るような形で首にメスを突きつけた。
「おいテレサの鍵を外せ! じゃないと首を切る!」
「おいおい、早まるなよ……」
鋭い刃を突きつけられ少し焦るアルフは仕方なく鍵をポケットから取り出しテレサの拘束具を外す。
人質に取った形のため部下たちもマイクを撃てなかった。
「はぁ、しかし君はエレメントを使わないのか?」
鍵を外す作業をしながらマイクに問うアルフ。
その質問をされたマイクは戸惑ってしまう。
背後では激しい戦闘が行われていたにも関わらず時が止まったようだった。
「え……?」
窓際ではサムエルが、入り口付近ではレクスが迫る兵士たちと戦っている。
そんな中でレクスが敵を片付け終えたのかアルフに語った。
「おい気を付けろよっ、コイツぁやばいぜ」
アルフに向かって馴れ馴れしく話すレクス。
この二人の関係性も謎だが何よりも話す内容が衝撃的だった。
「テイルゲート、今はソイツにある」
その発言でアルフは衝撃を受け、マイクは意味が分からなかったが何かとてつもない嫌な予感がした。
「……なるほど、そういう事か」
そしてアルフは一瞬にして振り返りマイクの首に隠し持っていたスタンガンを当てる。
「は? 何言って……ぁがっ⁈」
衝撃で倒れてしまうマイク。
アルフはテレサを解放する手も止めてマイクを見下す。
「マイクッ! ……がっ⁈」
サムエルもマイクを心配し叫ぶがすぐにレクスに押さえ付けられてしまう。
「お前は寝てろ」
そのまま気を失ってしまったサムエルの上にレクスは座りマイク達の様子を見た。
「な、何でお前が……⁈」
アルフとレクスが協力的な様子を見て衝撃を受けるマイクだがすぐに体を持ち上げられる。
アルフはテレサを機械から外し床に転がす。
そのままマイクを代わりに機械に座らせた。
「別に良いじゃないか、それより君だ」
そう言いながらパソコンを更に動かすアルフ。
テレサも床に倒れながら動けずにいた。
「ダメ……っ」
しかしアルフはマイクの体を調べるためにテレサにも当てた光を照射する。
「ぐぁぁぁっ……⁈」
あまりの苦しさに悶えるマイクのデータをモニターで確認したアルフは大きく喜んだ。
「本当にある……! テイルゲート、移していたのか」
何を言っているのか分からない。
しかしテレサは謝っていた。
「くっ、マイク逃げて……!」
何を言っているのか分からない。
テレサに助けを求めるように彼女の方を見た。
「分かっていない顔だね」
疑問が顔に出ていたマイクにアルフは答える。
「テレサが持っていたエレメントの中核、テイルゲートは君に移されたようだ」
「え……?」
更なる疑問が生じ慌ててテレサの方を見る。
するとテレサは謝りながら真実を伝えた。
「ごめん……貴方を受け入れた時、私も貴方を受け入れるって決めた。だから託す事にしたの」
初めて戦った時、敵ビヨンドに捕まったテレサを助けた時だろう。
確かにあの時エレメントに貫かれ重症だったマイクをテレサの力が助けてくれた。
しかしそれはただ力を使っただけでは無かったのか。
「貴方がビヨンドになった時、私の血をあげた。その時に力が貴方に引き寄せられてる気がしたの……」
まさかマイクに適性があるのか。
「私にはその力を使えなかった、でも貴方なら私たちのためにその力を使い熟してくれると思って……!」
それを聞いたマイクは少し項垂れた。
なんと勝手な事だろうか。
「はぁ……適性があるかも知れないからって勝手に託したのか」
「うん……」
「本当、俺のお人好しに縋りすぎだ……」
しばらく沈黙が訪れる。
そんな中、マイクは力を思い切り振り絞った。
「でも俺にその力があるならっ……!」
何とかそのテイルゲートの力を発揮させてみようと踏ん張るが何も起こらない。
拘束具を外す事も何も叶わなかった。
「暴れるな、今取り除く」
そしてアルフは冷静にマイクのテイルゲートを取り除くための準備をした。
先程のテレサに当てられたものとは違う、更に強力な光をマイクに向けて照射する。
「ぐぁぁぁっ!」
感じた事のない苦しみがマイクを襲った。
感覚が失われていく中でテレサの叫び声だけが聞こえている。
「やめて! マイクーッ!」
その叫びが聞こえる中、マイクには走馬灯のようにテレサの以前の声が聞こえていた。
「(あぁ、テレサ……)」
その声とは捕まる直前に家族と認められた時の事。
あの時の笑顔の意味を知る。
『ふふ、これで私たち家族の仲間入りだ!』
テレサにとっての家族という言葉。
カイルの言葉も思い出し、それが自分の血を分け与えた存在だという事を知る。
「(じゃあテレサの力を丸ごと託された俺は……)」
その意味とは。
考える、というより胸の奥に感じる。
テレサの意志がそこに宿っている気がした。
「(あぁ、やっぱ俺ってお人好しだな)」
やっと分かった気がする、力の使い方。
胸に託されたテレサの意志を感じ力を込める。
それにより遂にマイクは覚醒した。
***
マイクの体から赤黒いエネルギーが凄まじく放たれる。
「ふぅぅ……」
まるでその力を感じるように深呼吸をするマイクは簡単に拘束具を破壊し力強く立ち上がった。
「何っ⁈」
瞳は赤く髪がより逆立ったマイクは強く優しくテレサを見つめ彼女に歩み寄った。
「テレサ、俺を頼れよ」
その言葉にテレサは強く安心をした。
完全に覚醒したマイクはカオス・レクスとアルフを睨み彼らに立ち向かう姿勢を見せた。
TO BE CONTINUED……