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第3話:国王の謁見と王宮見学

 プルミエ国はこの世界で最も古い歴史ある国。

 建国間もない頃から兵力強化のため開催してきたという武術大会は、剣術部門・槍術部門・弓術部門・徒手空拳部門・魔法部門ごとに優劣を競うという。

「オリンピックみたいですね」

 渡辺から説明を受けて星琉は言う。

「くぅぅ~チェスとか将棋とか囲碁の大会ならそこそこいけるのにぃ」

 残念がってる森田は身体を動かすのは得意ではないらしい。

「シロウ様が地球の娯楽を広めて下さったので、そうした大会もありますよ」

 イリアが教えてくれて、森田はおぉっ、と期待に満ちた顔になる。

「来月その大会があるぞ。アーシアの優勝者を地球に御招待だけど」

「えぇぇぇ~そりゃないですよぉ~」

「本場はこっち(地球)なんだからしょうがないだろ」

 渡辺から残念なお知らせをされて、がっかりした森田。


 一般の街道は大混雑しているが、王族用の馬車は専用道路を通るので渋滞は皆無。

「この専用道路は高速道路をヒントに社長が造ったらしいよ」

「あ、それでこの高架、なんか高速道路っぽいんですね」

「コンクリートやアスファルトの代わりに土魔法で固めたらしい」

「社長、色々凄すぎますw」

 またも瀬田の偉業に驚かされる星琉と森田。

 揺れが少ないので乗り物酔いも無く、馬車は城門の中へ入り停車場に停まった。

 城門の中にも更に門があり、馬車は門番のチェック後それをくぐった。

 その向こうには幅広い堀に囲まれた敷地があり、王城は最奥に位置していた。

 堀に架けられた跳ね橋を通り、敷地内にあるコロシアムを横目に王城へと向かうと、お城の周りにも更に堀と跳ね橋、もちろん門もついている。

「門、いくつあるんだろ?」

「この門で最後ですよ」

 思わず呟く星琉に、イリアが笑って答えた。

 お城なんてゲームかアニメか写真でしか見た事がない星琉には、ほとんど未知なるものだった。


「セイル様は私の命の恩人ですから、お父様に会って下さいね」

「王女様のお父上といったら…国王陛下…ですよねっ?」

 イリアに言われ、焦る星琉。

「あ、じゃあここで待ってるから」

「いってらっしゃ~いっ」

 いきなり他人事みたいに星琉から離れる渡辺&森田。

「ちょっ…俺だけ?!」

「旅の思い出に謁見用の広間も見学して下さいね」

 ニコニコしながら言うイリア。

「ま、待って、渡辺さんと森田さんは護衛の人たち治療してたよ。一緒に行った方がいいですよねっ?」

 慌てて言う星琉に、イリアの護衛騎士たちがウンウンと頷いた。

「もちろんですわ。お二人も行きましょう」

 イリアに微笑まれ、観念して同行する渡辺たちであった。


「地球の方々、よくぞ参られた。人が多過ぎては落ち着かぬであろうと思い少人数にとどめておる。作法など気にせず気楽に過ごされよ」

 国王ラスタ・ロワ・プルミエ陛下は理解ある人だった。

 立場上玉座に座したままではあるものの、穏やかな表情で話しかけてくる。

「セイルよ、我が娘を救ってくれた事、心より感謝する」

 公式の場なら「王女」と言うところを「娘」と言う辺り、こういう場に不慣れであろう星琉を気遣ってくれたようだ。

「ところでヨウイチ」

 続いて、陛下は渡辺に視線を向けた。

「そなたいつから大神官並みの治癒魔法なぞ使えるようになったのだ?」

「きょ…今日からですw」

 いきなり話を振られ、珍しく慌てる渡辺。

「今回の転移の際に女神アイラ様より授かりました」

「なるほど。剣術大会でセイルが負傷した時に備えたのであろう」

 実際はその逆なのだが…今は説明するのは控えたい渡辺は、はいと答えて済ませた。

「それにしても最上級の治癒魔法使いが2人とは…滞在中に神殿を手伝えば大神官から【特別手当】を貰えるかもしれんぞ」

「そ、それ凄くいいですね!」

 出張手当ボーナスだぁ!と大喜びな森田。

 世間一般的に知られる王族とは異なるくだけた調子の国王に、ガチガチに緊張していた星琉も森田もほぐれた様子になった。


 その後、星琉への褒美の話になり、欲しい物は何かと聞かれた星琉は異世界グルメを土産に持ち帰りたいと希望した。

 お金や爵位など貰っても地球に帰れば役に立たないので、家族への土産を貰う事に。

 出発前に母から渡されたメモには「味見して美味しかった物を買ってきて」と書いてある。

 更に祖父母・両親・兄弟8人分の「好み」を言い聞かせられていた。

「お土産を買って頂けるなら母に渡された土産代を返せて二重に喜んでもらえます」

「返さずに土産代もらっとけばいいのに」

 嬉しそうな星琉に、渡辺が言う。

「いやいや俺んち貧乏ですし、土産代浮いたら生活費にしますよ」

 笑って答える星琉を、国王が興味深げに眺めていた。


 その後、星琉たちは王女に案内され王宮や庭園の見学に向かう。

「8人も兄弟がいるの?」

「うん。兄・姉・俺が3番目、あとは弟と妹が3人ずついるよ」

 イリアから敬語は使わなくていいと言われた星琉は、同い年という事もありタメ口で話している。

「いいなぁ~私は兄弟いないから羨ましい」

「メシ食う時は弱肉強食みたいになるけどねw」

 楽しそうに話す2人を、ちょっと離れて眺めている渡辺&森田。

「ねね、主任、あれ【フラグ】立ってません?」

「あ~、それっぽいねぇ」

 何やら意味深な会話をする大人たちに、17歳男女は気付かなかった。





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