「部活お疲れ様」
翔子は、ちょうど良く部活終わりの翔太に声をかけた。
校舎を出てすぐの職員専用の駐車場パンジーの花が植えられている花壇に
いつも翔太はそこに座って星矢の演奏を聴いていた。
今日は翔子も一緒に並んで一緒に聴く。
「おう。そっちもな。ていうか、珍しいな。翔子がそこにいるの」
特等席が取られたように感じた。
「星矢くんが、今度の演奏会出られないからここでプチ演奏会するって言ってたの。さっきラインで送ったでしょう。見てないの?」
「え。うそ。見てないし」
翔太はポケットからスマホを取り出して、ラインを確認した。
せっかく作っプチた演奏会のチラシ風メッセージを今見ていた。
「お、すっげー。本格的な宣伝だな。もっと観客集めればよかったな」
「やめてください!! 人が多いと……緊張して吹けませんから」
音楽室の窓から体を乗り出して叫ぶ星矢がいた。翔子と翔太の声が丸聞こえだったようだ。
「何言ってるのよ。いつもたくさんの人の前で演奏してるでしょう!」
「それはそうですけど、僕は、翔子先輩と翔太先輩に聴かせたくて吹くのにそれ以上に人が増えたらどこに想いをぶつければいいかわからなくなります」
その言葉に翔子はキュンと心臓が動いた。悩ましげな星矢が可愛く見えた。
「だよな。俺らのため、つーか、俺のための演奏が意味なくなるもんな」
「な、何言ってるのよ。私も入ってるわよ!!」
ちょっとした小競り合いが起きていた。その様子を見て、星矢はなぜか泣きそうになった。もうすぐ、ここから離れてしまうと思うと、2人と過ごす時間が短い。もっと一緒に過ごしたかった。もっと話をしたかった。悔いが残る。
こんなに優しくてあたたかい2人がいて、嬉しかった。猛烈に寂しくなる。すぐにいなくならないのに、涙が流れる。
「せ、星矢くん? どうした??」
翔太の短い髪の毛を引っ張っていた翔子が星矢の様子を見て、びっくりした。1人音楽室でフルートつかんだまま顔を伏せていた。
「ほら、お前のせいだぞ。俺と2人きりにさせないから」
「は?! んなわけないでしょう。さっき、楽しみですって星矢くん言ってたから」
「んじゃ、なんで泣いているんだよ」
「……翔太、ほら、やっぱり音楽室で聴いてあげよう。ここ、暗いしさ」
翔子は気を利かせて、翔太の腕付近のジャージを引っ張って誘導する。
「いや、伸びるから引っ張るなって」
「大丈夫、多少伸びた方が長持ちするって」
「どんな解釈だよ!?」
そんなことを言いながら、2人は星矢のいる音楽室に向かった。
外はどっぷりと暗くなっていた。遠くの方でフクロウが鳴いている。
星矢はまだ気持ちが落ち着かなかった。