『家、着きました?』
星矢は翔太にラインをした。約5分後、返事が来た。
『ああ、さっき着いた。今から飯。カレーライス。そっちは?』
星矢はすぐに返す。
『嘘、ウチでもカレーライスです。なんたる偶然』
星矢はうさぎのニコニコのスタンプを送る。翔太はホームランをしたパンダのイラストを送った。
『うちのカレーライスは中辛だ』
『うちでも中辛です。そして朝食はカレーうどんが定番です』
星矢は、ドキドキしながら返答する。
「星矢、スマホいじりながらやめなさい! ごはん、さっぱり終わらないから」
「あーはいはい」
星矢は母から注意されて、スマホをパタンとテーブルに置いた。翔太も同じで、途中でラインのやり取りをやめた。返したいのに返せないもどかしい気持ちになる。ご飯を食べ終えて、さっきの続きを送ろうと星矢はラインを開くと、翔太からのラインにびっくりして、思わず、ぶっと吹いた。
スタンプが20個も送って来ていた。最初は返事がこないことの不満スタンプにイライラスタンプニコニコスタンプかとおもったら、【今、掃除中】、【今、勉強中】とリアルと違うだろうというペースでどんどん送っている。
これは遊んでいるなと感じた星矢はお返事におやすみなさいスタンプを5個送った。
すると、そこにガーンがっかりした返事が来た。本気で落ち込んだようだ。
慌てて、ライン通話を開いた。
「先輩? 怒りました?」
「ん? 怒ってないよ」
「ガーンってどう言う気持ちでした?」
「いや、そのままっしょ」
「悲しい?」
「そうだな」
「冗談ですからね」
「マジか」
「そっちが先にスタンプ送って来たから真似してみたんですよ」
「そっか。ごめん」
「いや、別にいいんですけど。それより気になったことがあったんですが……」
気持ちを切り替えたようで、翔太先輩の声も高くなっていた。
「なんだ?」
「翔子先輩のことなんですが、いつもお昼一緒になるじゃないですか。このまま僕たちと過ごしていたら、彼氏できないんじゃないかと心配してました。大丈夫ですかね」
「お、お前なぁ、何を心配してんのよ」
「ちょっと、気になって。3人で過ごしたら、彼氏さんの入る隙間がないですよ」
「優しんだな、星矢は」
「まぁ、そんなことはないんですけど」
「んじゃ、超いじわるだな」
「けんか売ってますか?」
「いや、けんかは売ってないぞ。明日、翔子に直接聞いてみればいいだろ」
「そうですね。確認してみます」
「俺は、知らないけどさ。考えすぎだと思うぜ」
「まぁ、聞いてみないことには」
「おう。んじゃ、そろそろ寝るな。おやすみ」
「はい、それじゃ、また明日」
電話を終えて、通話終了ボタンを押した。まだドキドキしている。
翔太のプライベートを独占したみたいで、嬉しかった星矢だった。
翔太は、眠くなってきて、風呂に入るタイミングを失い、制服のままベッドにそのまま寝落ちしてしまった。