どうして人を好きになるのに制限をかけなくてはいけないのか。
純粋に好きをアピールできたらどんなに
嬉しいか。
差別とか批判とかどうでもよくてお互いが好きなら結果オーライじゃないかと考えてしまう。
星矢はトイレに行くと言いながら、屋上の風を浴びに向かっていた。
ドアを開けた瞬間、頬に強く風が吹いた。
ここはオアシスのように癒される。
都会の景色を楽しめるし、少し角度を変えれば、緑もある。
風もすがすがしい。
上を見上げれば、青空が広がって、遠くで白い飛行機が小さく見える。
綿雲がもくもくと浮かび上がっている。
明日も同じで晴れてるといいなと感じる。
屋上のドアが開く音が聞こえた。
誰かが来た。
「星矢、大丈夫か?」
翔太先輩が気にかけてくれて追いかけてきた。
翔子先輩はいない。
心臓がバクバクと激しく動く。
緊張が高まった。
さっきまで流れていた涙が少し引いた。
「泣いてたみたいだったけど、目のゴミ入ったって。見せてみろって」
翔太先輩は、そっと星矢の両目を両手で伸ばして見せた。
あっかんべーの顔になってしまっていて恥ずかしくなった。
首をブンブン振った。
「だ、だ、大丈夫ですって。本当。目にゴミ入っただけで」
「俺が言ったわけじゃないんだけど、ごめんな。ひどいよな。気持ち悪って」
「え? あー、そのことですか? 全然気にしてませんよ。もう、先輩大げさなんですね」
(真っ赤な嘘だ)
「星矢、嘘つくなよ」
翔太先輩は本音を隠して話しているのがわかった。話しながら、目から涙がしたたり落ちている。
星矢の頭をポンポンと撫でた。
触れられるだけで癒された。
ずっと近くにいてほしいって願ってしまった。
「もう、放っておけないな。お前のこと」
翔太先輩は、星矢の額に軽くキスをした。
肌が白く、女の子みたいに華奢だった。身長も翔太より小さい。
守ってあげたくなる気持ちになっていた。
「せ、せ、先輩?! ど、どういうことですか??」
両耳と顔全体をお猿のように真っ赤にさせてパニックになっていた。
「ちょっと、チューしてみたくなった。おでこだけど」
「え? 急に?」
まんざらでもない様子の星矢に翔太先輩は喜んでいた。
「いやだったか?」
「え? あ、あの。別に問題ないです。受け入れ可能です。はい」
「そっか。よかった」
「はい」
星矢の涙が乾いて、とびっきりの笑顔になった。
翔太先輩は嬉しくなって、星矢の唇にキスをした。
「せ、せ、先輩。それは。ちょっと早すぎます〜〜」
そう言いながらも嬉しそうな星矢だった。
翔太先輩も、終始笑顔で過ごしていた。
想いが自然と伝わっていたのかと願いが叶って、星矢の興奮が冷めなかった。