目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
ぐるぐる目が重なった
ぐるぐる目が重なった
ドナタか
文芸・その他ショートショート
2025年03月10日
公開日
1,374字
連載中
疑う。破滅。震え、問う。嘘。


 忍びないね。甚だに。


 ねえ、神様っているのかい。ああ、いるさいるさ。そりゃ心にあるんだ。そう呟く女は、私よりずいぶんと年下で、それでいて地味な見た目ながらも、その感情豊かさと笑顔の小悪魔感がしんみりと自然でいて、彼女がいう言葉全てがお遊びのように軽々しいけど、だが、それを全て軽く見ようとしても出来ないくらいに、何か意味があるような気がしてならなかった。


 彼女はよく笑い、よく真顔になり、よく訝しい顔をみせる。長いワカメみたいな髪の毛を揺らし、可愛らしい大きな目をぱちぱちとさせて、彼女はまた小悪魔感満載な笑顔をして、はにかんでいう。そりゃもう、神様ってのは、アタシのことさい。彼女はいう。私はそれを聞いてからにわかに、彼女の背後から後光を感じた。


 しかし彼女はそんな私を見て、飽きたように、つまらなそうなため息を零して、ことさら不機嫌そうに目を細めてから、途端に、訴えかけるようなまなざしを私に向け、狂わせる。彼女は続けた。


 そそ、疑えば良い。信じなければいい。それで、真相が、みつかるかもしれん。


 にわかに震えた。全てが透明度百パーセントで耳に挿入され、脳みそに焼き付いて行った。彼女がいうありがたきお言葉に目がくらみ、はて、まるで催眠でもかけられたかのようなグルグル目を披露しているような感覚が、しんから身に迸る。それに私は星をみた。一番星だ。そこにある圧倒的な一等星。それに震えた。しかし、すると、彼女はまた怪訝な顔を添えて、つまらなそうな顔をみせて、にわかに肝が冷えた。


 きみは、騙されやすすぎるね。そりゃ、脳みそが足りていない。彼女は見下すようにいう。途端にその言葉に私は身震いして、稲妻を身に受けたくらいの衝撃が走ったと錯覚するほどの、攻撃をうけた。心が枯れた花のようにボリボリと瓦解してゆき、して、次の瞬間に、全てが枯れ木になり、へたりと沈み込んで、摩擦でいきなり火があがり、炎となる幻想をしてしまう。

 彼女は甘い声で、私をみていて、刹那に、私の顎に手を添えて、覗き込んできた。


 使えそうだ。でも、使えなさそうだ。ねえ、神様を知りたいと? 所在をしりたいと?


 私は震えながら首を縦に振った。


 そうかい、じゃあ祈るがいい。そして忍びなさい。甚だにね。それでそうだね、突破しよう。全てを破壊して、一緒に何かしてみようか。討伐だ。大きな大敵を適当につくって、一緒に退屈を紛らわせよう。ねえ?


 私は彼女の黒い瞳に吸い込まれ、心は完全に奪われてしまった。彼女の底知れない思考が、底知れないセンスが、感情豊かな一面が、それが全部嘘でありそうな儚さが、カリスマ性が、踊りが、口調が、声が、全て、染み込んだ。


 私からみるに彼女の全ては、大いなるロマンスだったのだ。


 グルグル目が更に重なった。それで彼女は私に小悪魔感の微笑をみせて、一緒に破滅しようと願った。私はそれを断ることはできなかった。何か、彼女の体内にありそうな、空虚な孤独感に触れた気がして、乗せられてもいいかもしれないなんて、錯覚した。


 それすら嘘だったかもしれないけど、そんな事はどうでもよかった。


 また彼女は訝しい顔をして、つまらなそうにため息をついて、でも今度は唇をぎゅっと歪ませて、まるで普通の人で言う所の「悔しい」ような感情をそこから滲み出していた。

 その日から、彼女は私の地区のステージには上がらなくなった。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?