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ボクっ娘剣士と奴隷少女の異世界甘々百合生活
ボクっ娘剣士と奴隷少女の異世界甘々百合生活
沢鴨ゆうま
異世界ファンタジー内政・領地経営
2025年03月10日
公開日
6万字
連載中
 剣士の町、レアルプドルフ。
 国に所属か独立のどちらかを選ぶことができる世界だが、隣接国から所属するよう強引に攻め込まれたことをきっかけに独立を選んだ。
 そこに住む剣聖の娘エールタインは、町の英雄である父のような剣士になることを決意する。
 十五歳になった見習い剣士エールタインは、デュオで活動するために奴隷を従者として付けるという剣士の伝統に従い、奴隷地区出身で従者となるための修練を完了した十二歳の少女ティベルダを招き入れる。
 優しいエールタインに心を奪われたティベルダは、主人に対する思いを日増しに大きくして愛を拗らせてゆく。
 主人への溢れる愛情が元々秘められていたティベルダの能力を引き出し、少女剣士の従者として大いに活躍する。
 エールタインもティベルダからの愛を受け止め心を通わせてゆく中、エールタインを慕う見習いの少女剣士がティベルダとの間に割って入ろうと英雄の娘に近づく。
 町の平穏と愛する者たちを守るために戦うボクっ娘剣士エールタイン。
 主人を愛して止まない奴隷ティベルダ。
 能力によって仲間となった可愛い魔獣を従えて、町を守るために戦う少女剣士たちの和み系百合異世界物語!

※この物語は完全フィクションであるため、それを念頭にお読みくださいませ。

  © 2020 沢鴨ゆうま All Rights Reserved. 
 転載、複製、自作発言、webへのアップロードを一切禁止します

第1話 剣士見習いⅠ

Szene-01 ダン家、庭


 剣士の住む町レアルプドルフ。

 その三番地区に、剣聖の家がある。


「はっはっは! 天性の才能を相手に剣を交えていると、どちらが師匠か分からんな」

「どこから見たってダンが師匠でしょ。冗談はやめて」


 剣聖、ダン・サロゲト。

 ダンは、家の前に広がる草原の中で弟子の修練に付き合っていた。

 相手である弟子は剣士見習いのエールタイン・カーベル、十五歳。

 銀髪に藍色の毛が混じるネオウルフボブ。

 細身で肌がとても白い。

 初見ならば、機敏に動いて剣を扱うような子には見えない。

 ダンの言う天性の才能とは、エールタインの動きの事だ。

 脚力がとんでもなく強いため、剣聖のダンも舌を巻くほど。

 しかし、剣さばきが追いついていない。

 そのおかげで師匠の立場を維持できていると、親しい者には常々語っている。


「おだてが通用しないか。だがなあ、腹が減ったんだよ。終わるぞ」

「えっ!?」


 師匠の言葉を聞いたエールタインは、あわててバックステップで離れる。

 あえて自身の動きをおさえることでエールタインを泳がせていたダン。

 この日の修練を終わらせるために、動いた。

 焦りのせいか、バックステップの高さを取り過ぎたエールタイン。

 着地する瞬間を狙われた。

 ダンの右足が地面を蹴ると、首にぶら下がるブルー・サファイアが夕日を反射した。


「くっ!」


 軽くまぶたを下げるエールタイン。

 ダンは突進していく中で振りかぶりのために左足を軽く上げ、エールタインの左側へ。

 続けて膝下を外側へ向けるとエールタインの両脚をかかえ込んだ。

 着地する手段を無くしたエールタインは地面を寝床にするように倒れる。

 しかし、抱え込んだ脚と剣を持った腕に守られ、衝撃に襲われることは無かった。


「飯にしようや」

「ほら、やっぱり師匠だ」

「うれしいなあ、褒めてくれるのか? でもな、それだとエールの師匠を卒業できないじゃねえか」

「ずっとボクの師匠だよ。いつまでも教えてくれなきゃいやだ」


 ダンは剣を地面に刺して杖替わりにすると、エールタインの半身を起こした。

 しっかりと抱え込んでいた脚も離すと、地面に腰を下ろしてあぐらをかいた。

 再び夕日がブルー・サファイアの中を通過して、存在を誇示した。


「こいつが光らなけりゃもう少しやれただろう」

「サファイアを見せて欲しいって言ったのはボクだし、それぐらいで失敗するようじゃダメでしょ」


 ダンが首にかけているサファイアは剣聖の証。

 位によって色が違う。

 剣士はブラック・サファイア。

 上級剣士はホワイト、剣聖はブルーのサファイア。

 証に使われる石の中には、暗くなると光る石が混ざっている。

 サファイアの採掘場では点々と光っている部分を掘り出して証用の石としていた。

 太陽が沈み、日の光が無くなると灯り出す。

 町の外に広がる山中などに生息している魔獣が死ぬと、光石になる。

 石になるのは相当な年月が経ってからのようだが、まだ解明されていない。

 この石は、剣士にとって暗闇での灯りとして重宝する。

 日常生活において使う灯りは主にランタン。

 戦場となると移動では使うが、戦闘時には不向きだ。

 そこでこの証の光が役に立つというわけだ。

 ただ、常に灯っていると困ることも多い。

 そのため、光が不要な時は石を包む革製の袋をかぶせている。

 綺麗な石を覆ってしまうため石の代わりにこの袋がアクセサリーとして扱われてもいる。


「親離れも必要だぞ?」

「親離れも師匠離れもする気が無いよ」

「おいおい、困った子だな。を超える日が遠そうだ」


 とはエールタインの父親、アウフリーゲン・カーベルである。

 十年前の戦いでダンに民の誘導を任せ、自身は一人で殿しんがりを務める。

 それまでの作戦が功を奏し、敵部隊の分裂に成功していた。

 敵の前衛部隊は少数になっていたが、構わずレアルプドルフへの追撃は継続された。

しかし相手は少数。アウフリーゲンは一人で対応できると考えたようだ。

 そして残りの敵前衛部隊を見事に単身で片づけたと思われた矢先、最後の一人から執念の一突きを食らい、それが致命傷となった。

 アウフリーゲンの異変に気づいたダンは即座に助けに向かうが、多量の出血を目にする。

 覚悟をしつつ応急手当をしているとき、アウフリーゲンが子供を頼むと言い残し息絶えた。


「アウフよ、お前からとんでもない幸せをもらっちまったな」

「ダン、急にどうしたの?」

「ん? お前がかわいくてしょうがないんだよ」

「ちょっと、急に恥ずかしいこと言わないでよ。ボクはカッコいいって言われる方がいいんだけど」


 言葉とは裏腹に割座で照れているエールタイン。

 かっこいいというよりはかわいいという方が当てはまる。

 ダン家の者の前では、緊張が解けてしまうからか、かわいい仕草が多い。

 町では、圧倒的にかっこいいと言われることが多いのだが、それにはわけがある。

 エールタインの父、アウフリーゲンは、自身の子の性別を明かしていなかった。

 もちろん、託されたダンやヘルマにヨハナ、それに町役場の一部の者は知っている。

 では、なぜ性別を明かしていないのか――剣士は男性が担うものだという風潮が、根強くあるからだった。

 剣士の町であるレアルプドルフに生まれた子は、少なからず剣士を目指す。

 エールタインが生まれる前から、アウフリーゲンは町の風潮を危惧していた。


「俺の前ではかまわんだろう。それにお前の親代わりでもある。かわいい所を見せていてくれ」

「もお……ダンは父さんだよ。じゃなきゃ生きてはいられなかった」

「こいつ、泣けること言いやがって。あいつに聞かせてやりたいな。そうだ、近いうちに墓参りに行くか。そろそろ寂しがっているはずだ。たまには顔ぐらい見せてやれ」

「うん。ちょうどボクも考えていたところなんだ。ヨハナたちも一緒にね!」

「もちろんだ」


 ダンが大きな手でエールタインの頭を撫でる。

 ニコっと笑うエールタインを見てダンもほほえんだ。

 二人は立ち上がり、沈みかけの夕日を背に家へと向かい歩き始めた。


Szene-02 ダン家、食卓


 ダンの家には二人の奴隷がいる。

 奴隷と言ってもレアルプドルフでは剣士の助手という扱いだ。

 ただ、危険な場所への同行となるために町民ではなく奴隷を、というのが理由。

 剣士の中には扱いが酷い者もいるが、ほとんどの剣士は家族として迎えている。

 身の回りの世話から戦闘時の補助までこなす。


「ヨハナ、まだあ?」

「今行きますから」


 ヨハナはエールタインの父が採用した奴隷だ。

 ダンがエールタインと一緒に引き取った。

 エールタインが少しでもアウフリーゲンを感じ、生活の変化を最小限に抑えるため、  面倒な手続きが必要な契約引き継ぎまでした。


「エールはヨハナがいないと飯も食えないからなあ」

「先に食べたらヨハナが可哀そうでしょ」

「私も加わっていいですか?」


 エールタインにうかがいを立てたのはダンの奴隷であるヘルマ。

 独身であるダンからはとても大切にされている。

 その気持ちに答えようと必死に尽くすが、必死さを出さないようにもしている。

 ダンに出来るだけ気を使わせないための配慮だ。

 当然ダンは気づいているが。

 エールタインが来てからはヨハナと一緒に二人を見守っている。


「だめって言うと思う? みんなで食べるの!」

「うふふ」


 ヨハナとヘルマもそろい、食事が始まると食卓は四人の笑い声に包まれた。


「ところで、エールも十五歳になったということでだな……」

「もうそんな時期なのですね」

「エール様が……アウフ様も喜ぶでしょうね」


 ヨハナは笑みを浮かべるが、その上を一筋の涙が滑り落ちる。

 ダンとヘルマもエールタインの成長をかみしめるようにほほんだ。


「……ねえダン。本当にボクも必要なの?」

「剣士になるってんなら当然だ。まあ実際に戦えばその理由が嫌というほど分かる」

「はあ」


 ヘルマがニコッと笑い、一言付け加える。


「エール様の家族が増えるんですよ?」

「ヘルマってさ、ボクの好きな事よく知っているよね」

「ヨハナもよーく知っていますよ。エール様のことなら隅々まで」

「むう。ボクがみんなに勝つ要素、どこにも無いじゃん!」


 エールタインはふくれっ面でそっぽを向いた。

 それはまるで、小さな子どもが拗ねたときのように愛らしく。

 ヨハナとヘルマは目を合わせ、唇をかすかに緩めた。

 エールタインの仕種がかわいらしいと、同意する無言の会話に笑みがこぼれた。


「この町では幸いにも奴隷の扱いが変わってきた。二人を見てきたお前なら分かるだろ?」

「うん。そろそろ奴隷って言い方を変えればいいのにね」

「……私がアウフ様に仕えたとき、町では奴隷という言葉が飛び交っていることに衝撃を受けました。剣士の助手として鍛錬してきたのに、どうして、と」


 ヘルマは、ヨハナの言うことに二回うなずいて同意を示した。


「私もそうでした。奴隷なのねと落ち込みましたが、ダン様がとてもやさしくて。それからは奴隷と言われることがあっても落ち込むことはありませんでした」

「俺が照れることをさりげなく混ぜるなよ」

「こんな時でしか感謝の言葉を聞いていただけませんから」


 今度は、エールタインが三人の様子を眺めている。

 ふくれっ面は消え、にやにやとした笑みを浮かべていた。


「俺のことはいいとして。エール、明日は町へ行くからな」

「……はあい。ヨハナとヘルマみたいにやさしい子がいるといいな」

「明日決めなきゃいけないわけじゃねえから。ゆっくり納得いく子を探そう」

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