昨日、小花衣さんからの告白を断った俺。
好きな人からの告白は嬉しかったけど、まさか相手にドMだと思われていたとは……。
「(俺はリードできるような、かっこいいドSを目指しているんだ! だから、断ったのはしょうがないよな?)」
告白を断ってしまったことに、もったいない気持ちもあるけどしょうがない。
価値観の違い? ってやつだから、きっと付き合ったとしてもうまくいかないだろう。
俺の心は少し吹っ切れていた。
「(さてと、いつものようにラノベでも読みますか)」
いつものように学校へ登校。
いつものように教室でラノベを読む。
「おはよう小花衣!」
「小花衣ちゃんおはよう」
「おはよう。みんな」
ラノベを読んでいる途中、教室内が騒がしくなった。
どうやら小花衣さんが登校してきたようだ。
チラッと声のする方を見ると、小花衣さんがクラスメイトたちに囲まれていた。みんなに囲まれながら素敵な笑顔を浮かべる小花衣さん。
「(やっぱり、小花衣さん。素敵だな)」
小花衣さんの笑顔は、まるで天使のようだった。
「(はっ! いかんいかん、小花衣さんを見るのをやめなきゃ。俺は吹っ切れたんだから)」
ブンブンと頭を横に振る。が小花衣さんの声を聞いていると昨日言われたことが何度も頭をよぎる。
「そんなの、椿くんをドM堕ちさせればいいだけじゃない」
小花衣さんは俺をドMに堕としたいといったが、きっとそれは無理だ。
だって学校での小花衣さんと俺の接点はないに等しいから。
「(みんなのいる前で、ドSな姿を見せるとは思えないし。小花衣さんとの接点はあれで最後かな)」
少し残念に思いつつ、ラノベを読もうとした時、
「椿くん。頼まれていた書類持ってきたよ」
俺に話しかけてくる声が聞こえた。
聞き覚えのある声。
「(ま、まさかな)」
ゆっくりと顔を上げる。
そこに居たのは、天使のような微笑みを浮かべる"小花衣さん"だった。
まさか話しかけられると思わなかった俺。
「な、なんの話かな? 小花衣さん。書類って」
「もぅ、忘れちゃったの? 部の立ち上げの書類だよ。私たち"2人"で部活を立ち上げるって話したじゃない」
小花衣さんの顔はニコニコしていて、でも圧があった。断るなよっていう。
「小花衣ちゃんが、椿に話しかけてる」
「ふっ2人ってどういう関係!?」
今まで俺たちが話している姿を見たことがないクラスメイトたちの、ざわつく声が聞こえる。
無理もない、誰だって学園のマドンナと隠キャが実は部を立ち上げるくらい仲良いとは思わないから。
「(まだ会話したの3回目なんだけどね)」
俺はコホンと咳払いをする。
このまま流されたら小花衣さんの作った謎の部活に入れられ、攻められるのは目にみえてる。
「こ、小花衣さん。ボッチな俺を心配してくれて、声をかけてくれたのは嬉しい。でも、昨日も言ったけど、俺放課後は用事があって、部活に入るのは難しいんだ。すみません」
素直に謝り、放課後に用事があるから部活に入れないことを主張する。
またボッチな俺をという部分に注目してもらいたい。こうすることで、ボッチなクラスメイトが可哀想で声を掛けた優しい小花衣さんの図が完成する。
それによりさっきから敵意を向けてきたクラスメイトたちの視線が和らいだ気がした。
「(みんなの見てる前だ、小花衣さんもさすがに「分かった」っと返事するしかないだろう)」
「こ、小花衣! 椿がダメなら俺が!」
「わ、私も入る!」
小花衣さんともっと仲良くなりたいクラスメイトたちが、自分が部に入ると手をあげる。
「ありがとう、みんな」
小花衣さんは、手をあげてくれたクラスメイトたちに感謝を伝える。
「(な、なんとか回避できたみたいだ)」
ホッと胸を撫で下ろしていると、小花衣さんはさらっと言った。
「でもごめんね、みんな。この部活は私と"椿"くん2人の部活なんだ」
「はぁっ!?」
まさかの発言にクラスメイトたちが騒然とする。俺も思わず席を立ってしまったくらいだ。
「(な、なな何を言ってるんだ?! 小花衣さんは!?)」
戸惑う俺に対して、小花衣さんに好意を抱いているであろう男子が声を上げた。
「なんで、椿と2人だけの部活なんだ!? 別に椿にこだわらなくても!!」
「それは、その。察して欲しいかな」
顔を赤らめ、頬を押さえながら俺を見つめる小花衣さん。まるでその姿は恋する乙女でーー。
「ねぇ、椿くん」
「ひゃ、ひゃい」
「私とじゃ、ダメ。かな?」
ウルウルと目を潤ませて、上目遣いをしてくる小花衣さん。めちゃくちゃ可愛かった。
「(ダメだ自分! こ、断らないと)」
慌てて断ろうとしたが、既に"無理"だった。
「ま、まさか小花衣ちゃんが」
「くそっ、あの隠キャなんかに!」
恨めしい目で見てくるクラスメイトたち。
「やっぱり、ダメだよね」
「うっ!」
でも、涙を流し残念そうな顔をする小花衣さんを見たクラスメイトたちは……
「「(お前、断らないよな??)」」
と圧をかけてきて、俺は断ることができなかった。
「よ、よろしくお願いします。小花衣、さん」
「ありがとう、椿くん!」
俺の手を握りしめ、嬉しそうに笑う小花衣さん。誰にも分からないように口元をパクパクし。
「ありがとう、子犬ちゃん」
「(くそぉぉお!)」
どうやら俺はまんまと小花衣さんにはめられたみたいだ。