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第31話 お姉ちゃんは見守ってるわよ

 怠いわねぇ…ああ、もう息をするので精いっぱいだわ……瞼を閉じるのさえ面倒くさい。


「詠史さん、今日は一緒にゲームしましょう!!」


「別にいいけど何のゲームだ?ダンスか?あの小生意気な小娘打倒のための特訓なら全力で付き合うぞ」


「あはは、とっても根に持っていますね……それもいいんですが本日用意しているのはこれです!!『ドキドキッ!!くノ一と恋愛でござる!!』です!」


「ああ、そういうことな……まぁ暇だからいいけど」


「うふふ♡そう言ってくださると信じていました」


 私の名前は和倉詩絵、実の弟と美少女のイチャイチャっぷりを目の前で見せつけられているうら若き乙女である。


 別に嫌と言うわけではない、と言うかむしろ嬉しいくらいだ。うちの馬鹿弟をここまで好いてくれているのは感謝するしかないし、そんな二人を見るのは嬉しいと言うしかない。


 ただ、微笑ましい光景を網膜に焼き付けたいから動かないのではない。私はそこまでブラコンではない、今日二人でどこか別の部屋で同棲を開始すると言われても「いってらっしゃい」と躊躇いなく言える自信がある。ならばなぜ動かないのか、それは動くのが面倒くさいので私は動かないのである。


『今日から私はご主人様のくノ一でござる』


「うわぁ、随分と露出が激しいな…こいつ全然忍べないだろ、顔も綺麗だしスタイルもいいし、絶対注目の的だよ」


「うふふ、そこはまぁゲームですからね……でも詠史さん、私もこのくノ一さんに負けないくらいスタイルがいいと自負してますけど……触ってみませんか?」


「遠慮するわ」


「今、触りたいと言わなくていいって思いましたね!!良いんですよ!!詠史さんならいつ何時でも触っても!!!」


「思ってねーから!!」


「私が全校集会で注目されてるときに触っていただいても文句は言いません!!」


「それ僕が社会的に死ぬだろ」


 相も変わらず過激なアプローチね……恥じらいってものがない……まぁ詠史相手に恥じらいなんて……案外役に立ちそうね、周りに恥ってものを持たない人間ばかりの環境で育ったから。免疫があんまりなさそう。


『くっ、不覚でござる……殺せっ!!』


「ほえぇ……どういう器用な絡まり方をしたらただのロープのトラップで亀甲縛りになるんですかね……詠史さんもこういうのがお好きですか?」


「好きでも嫌いでもねーな。まぁ面倒だからやろうとは思わないけど」


「ふむふむなるほど、つまりやっぱり胸を強調する縛り方がお好きだと」


「どう解釈したらそうなる!!??」


 あーあ、お父さんとお母さんがこの光景見たらどう思うかしら………微笑むだけね、あの二人は私以上に適当な人たちだから………今頃何やってんのかしら………夫婦漫才を極めてやるって言って家を出てからまぁまぁ経ったし、どこかの小劇場に出れるくらいになったかしら?


 ああ、にしても年をとっても夢に向かって突っ走るアグレッシブな二人の血を引いてるのになんで私はこんなに怠惰なのかしら………考えるのも面倒ね……遺伝子ってのは時に適当なものと思っときましょ。


「凄いですよ詠史さん!!今銃をよけました!!銃を!!!あんなのできるの私二人しか知りませんよ!!」


「え?いんの!!??銃をよけられる人とかいるの!!??そんなの創作の世界にしかいないと思ってたんだけど!!と言うか、お前見たことあるの!!??」


 ふぁーあ……にしても若者は元気でいいわねぇ………かれこれ3時間くらいお喋りしながらゲームし続けてるわ………


『ご主人様……優しくしてくれて感謝するでござる』


「まきゅぅぅぅ………これ完全に事後ですよ詠史さん!!だって布団で喋ってますもん!!布団で隠れてるけれど絶対これ裸ですもん!!」


「待て待て待て、これR18だったの?」


「まだ18歳になってませんし買ってませんよ……あれですかね、直接のシーンを見せなかったらOKなんですかね。知りませんけど」


「ったく、知り合ってから1週間くらいだろこいつらよくもまぁここまで親密になったもんだ」


「その点私たちは幼き頃に面識があり、こうして密に愛を重ねるようになってからかなり時間が経ってますからね。いつでもベッドOKです!!」


「しねーって」


 すればいいのに………年頃の男女二人が結構きわどいエッチなシーンを一緒に見てるのにお互いいつもの調子を崩してないのはもはや芸術ね……


「感動だな……命を懸けて信念を守り、恋人を守るなんて」


「はい………私も詠史さんのためなら命の一つや二つをかける覚悟はあります…感情移入しちゃいました」


「うん、命は懸けるなよ」


「懸けます」


 私はどうかしら……詠史の為に命を懸ける………それは嫌ねぇ……自分で頑張ってもらいましょう。詠史ももう子供じゃないんだしね。


 しかしまぁ改めてこの二人、特殊なアオハル送ってるわねぇ……私もこんな過去が………


 ないわね。


 えっと……じゃあせめて好きな人の為にドギマギしたり………


 そもそも好きな人出来たことないわね。


そういえばそうだった………うわぁ、我ながら色気のないの青春送ってるわねぇ……まぁ、それなりに楽しかったけど。


「ふふっ」


 その時スマホが鳴った。仕事用のスマホだ………面倒だけど二人に聞かせるのは社会人として駄目だろうし、動くしかないか。


 二人から離れた場所でスマホを取った。


「はいもしもし………ああ、花染さん、いつもお世話になってます……それで今回はどんな連絡ですか?」


 はぁあ……面倒な仕事を親が肩代わりしてくれてた学生時代に戻りたいわねぇ……


 心でぼやきながらも、社会人の私は今日も粛々とお仕事をするのであった………休みだったはずなのに………はぁ


  親は夫婦漫才に精を出し、弟はラブコメでアオハルをし、、私は社畜に勤しむ……哀しいわねぇ……


「はぁぁぁぁぁ」


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