詠史さんと混浴がしたいです。
別にお風呂でエッチなことがしたいとかじゃありませんよ。私は健全的な乙女ですし。ただ純粋に詠史さんと混浴がしたいだけなんです。
もちろんその際おっぱい揉んでいただいたり、逆にこっち側が詠史さんの詠史さんを揉んでもいいんですけれど、そういうことをしないでもいいので、取り合えず混浴がしたんです。
浴室と言う密室空間に若い男女が二人きり、情熱と体温をお湯に溶かして互いを労いながら背中を流し合ったり、頭を洗いあったりしたいんです。
特に髪の毛を詠史さんに存分に洗ってほしいんですよね、この白い髪は私の誇りであり詠史さん以外にはたとえお兄様でも触ってほしくないとてつもなく大切なものです…なんて言ったって。
『にしてもお前綺麗な白い髪してるよな………おかげでお前のことを思い出したよ』
二度目に会った時に詠史さんが私を思い出してくださったきっかけ何ですから♡いわば運命の赤い糸ならぬ私たちの愛を結びつける白い髪なんです!!
でも………お風呂に入ると言うことは詠史さんのお肌を見ると言うこと……まだその身体に残っているであろう傷を見ることになる………駄目です、情けないことですがまだ覚悟が決まっていません……自分の愚には何度も向き合ってきたつもりですが………あの傷だけはわけが違います……
「でも……」
私は絞り出すようにつぶやきます。
「混浴が……したいんです」
その時、私に天啓が走りました。まさしく健全的混浴と呼ぶにふさわしい素敵な方法を。
「これなら詠史さんと混浴が出来て、あわよくばおっぱいを揉んでいただいたりできるかも」
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僕の名前は和倉詠史。
「詠史さん、これをどうぞ!!!!」
同居している僕に対してのみ痴女になる初川真絹という女から女性用のスク水を渡された男である………
「悪い、お前の奇行には慣れてきたと信じていたんだがどうやらまやかしだったらしい……え?なに?これで僕に何をしろって言うのお前」
「無論、それを着ていただきたいんです!!!安心してください、私が詠史さんくらいの身長の時に使っていたものなのでそこまでサイズが合わないってことはありませんよ!!!」
「よーし、ならよかった……とはならねぇよ!!そんなの渡された瞬間から予想しとるわ!!
なんで僕がお前のスク水を着ないといけないのかって聞いてんの!!」
「詠史さん……愛する貴方に私が着ていた服を着ていただきたいという想いに理由が必要ですか?彼シャツならぬ、彼女スク水です!!」
この女はぁ……
「お前の羞恥心のなさを僕にまで押し付けるな」
「詠史さんも結構羞恥心ないタイプだと思ってるんですけど」
「限度があるわ!!」
「大丈夫です、私しか見てませんよ」
「お天道様しか見てなくても僕の誇りにかけて着てたまるか」
そこまで言うと何故か真絹がシュンとした。
「でもですね……これしか手が思いつかなかったんです……」
「なんだ?本当は何か訳があるのか?」
「はい……実は………」
「実は?」
「詠史さんと混浴したくって………でもいきなり裸ってのはあれじゃないですか、だからスク水を「なんでやねん!!!!」」
あまりにも予想外かつ、阿呆な内容にこの世で最も普遍的なツッコミをかましてしまった。
「一億歩譲って混浴するとしても普通の水着を着るわ、いや混浴しないけど」
「混浴したら私は裸になるつもりですけどそれでもダメですか?」
「余計ダメだな」
そんなことしたら本格的に手を出さない自信がなくなるから………その言葉をグッと呑み込み、真絹に悟られないように思考のシュレッダーにかけた。
「あと聞いたのはなんで僕がお前のスク水を………あっ」
忘れてた………そういや僕のケガのことこいつ気にしてたな………つってももう何年も前の話だぞ………まさかそれを今も引きずってんのか?
「………」
真絹がバツが悪そうに俯いた。どうやら僕の想像は正しかったらしい。
「真絹、ケガのことなら気にすんなって……あの時も言ったろ。これは僕の自業自得だし、お前のせいじゃないって」
「いいえ、私のせいです……間違いなく、絶対に………すいません」
深々と頭を下げてそのまま土下座に以降しようとした、慌ててそれを止める。
「待て待て待て!!!そこまですんなって!!マジでもう僕にとってはどうでもいいことなんだから!!!」
「駄目です!!私が気にしてしまうんです!!!」
「そうだとしても止めろ」
「止めません!!どうしても私の土下座を止めたいなら!!!」
何故か僕が要求する立場になったのを妙だなと思いつつもそれでも僕は真絹を止める手から力を止めなかった。
「そのスク水を着て混浴をしてください!!!!!!!!!」
……………ああ、そういう腹ね………なるほどなるほど…………女もののスク水なら腹も隠れてるものな……ふっ…………
「今なら私のおっぱい揉み放題の権利もつけます!!」
「それはいつでももらってるから何の価値もないな」
その後、僕は世にも美しい土下座を目撃したのであった。