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第17話 イメージカラーは白です

 これは僕のせいなのだろう……だとすれば全力をもって僕が対処するのが筋と言うものだ。てめーのケツはてめーで拭くのが詠史君の嗜みと言うもの……しかし。


「ワンワンッです!!」


 激しく面倒くさいなぁ~~~~


 通販で売ってそうな安っぽい(しかし僕基準では十分に高い)ぬいぐるみを改造したのか白いモフモフとした毛を大量につけた着ぐるみに身を包み、頭には犬耳を付けた真絹が目の前にいた。


「ナデナデしてくださいワン」


 なぜこうなったのか、一昨日『犬飼ってみたいな』と誰に言うでもなく言ったのが原因だろう。赤ちゃんの次は犬か………次は猫かな?案外ブタかも………


「ワンワンワンワンッ!!!喉撫でてください!!!!ワンッ!!!!!」


 喉を撫でるのは猫だというのは僕の勝手な思い込みだろうか。


「こっちこい」


「ワンっ!!」


 目をハート柄にしながら四足歩行で僕の方に近づいてくる。どういう作りになっているのかモフモフの白い尻尾を楽し気にフリフリしているではないか。とりあえず喉を撫でてやると「ひゃぁぁんっ」と到底犬とは思えない艶めかしい声が聞こえてきた。


「感涙ものです!!!こんなに簡単に詠史さんに撫でていただけるならこれからずっと犬でも「犬とラブコメするつもりはないぞ」やっぱり私は人間ですよね!!!!!」


 イリュージョニストように一気にぬいぐるみを外すと下着姿になった。羞恥心の無さは犬に匹敵するな。


「さて、撫でていただき十分すぎるくらいの感動と満足感を得ることはできました。まことにありがとうございます」


 そのまま服を着る様子もなくむしろ見てくださいと言わんばかりに「見てください!!!!」思ったより力強く言われた。


「さてさて詠史さん、突然ですが飼うなら血統書付きのワンちゃんがいいですか?それとも雨の日に段ボールの中に置いていかれてしまった雑種のワンちゃんにしますか?」


「今のご時世後者の方が珍しいだろうな。そしてその問いに答えるとするならばどっちでもいいとしか言えない。

 だって血統書の有無で愛の大きさは変わらねーもの」


「ですよね!!!血筋なんてどうでもいいですよね!!!ご先祖様とか死ぬほどどうでもいいですよね!!!」


「急にどうした?」


「ああいえ、別に大したことじゃないんですよ」


 大したことじゃないってレベルの声量じゃなかった「詠史さん大好きですぅぅぅぅ!!!!!!愛してますぅ!!!!!!!!!!!!!人生を捧げたいですぅぅぅ!!!!!!!!!!!!!」」


「っ!!?????」


 咄嗟に耳を塞いだ。しかしそれでも皮膚や骨から愛情と謎の焦りがたっぷりと身体に沁み込んでくる。この華奢な身体のどこにこれだけのエネルギーが宿ってるんだか。ちょっとしたドームなら隅から隅まで響き渡るだろうよ。


「ふぅっ、偶には大きな声で愛を叫ぶのもいいですね。まぁ私の愛の大きさに比べれば微生物ほどの声量ですが………詠史さん、大した声量と言うのは最低限、今ほどの物を言うんですよ」


 ドヤ顔を決めてきやがった。


 ……しかし怪しい。僕の心を読むのはいつものことだからまぁ良いとして、血統の話を持ち出してきてから様子がおかしい。ここで愚かな僕であれば好奇心に任せて、好意を寄せられているのを奇貨にして問いただしていただろう。しかし僕はそんなことをしない。


 何故なら怪しいからだ。血筋について後ろめたい何かを持っているという意味ではない。むしろその逆、あえて怪しさを発して僕の興味をひこうとしていると感じてしまうのである「まさかぁ~~~そんなわけないじゃないですか」どうやら僕の推論は当たっていたようだな。


「お前そんなに面白いご先祖様がいるの?」


「え?知りたいですか?詠史さん知りたいですか???本当は誰にも言うつもりはなかったんですけど、愛してやまぬ詠史さんがそこまで仰るなら口を開かざるを「じゃあいいよ」…やりすぎましたかね」


 正直言うと気になって仕方ない。めっちゃ聞き出したい。こいつのイカレたパッションとエネルギーのルーツが何なのか分かるかもしれないのだ。僕でも知っている偉人がご先祖様とか言われたら興奮冷めないであろう。


 僕の知る限り最もいかれたアグレッシブの真絹に、その真絹を吞み込まんほどのマイペースっぷりをもつ中学生程度にしか見えないお母さん……とんでもない不思議があってもおかしくはない………そして僕は気になってしまう………めっちゃ食っちゃ気になってしまう。


 だが、それでも僕は聞かない。何故なら負けたような気分になるからだ。実際には勝ちも負けもないのは分かっている…………しかし、気分になるだけで嫌なのだから仕方ない。真絹のペースに巻き込まれるばかりは嫌なのである。


「むぎゅぅぅ………ちょっと調子に乗りすぎてしまったようですね」


「まぁな。普段から調子に乗りまくっているけど今回はさらに乗ったな」


「そのようです………あーあ、詠史さんに私の秘密の暴露を強要されて、秘密の共有したかったです…」


 少し考えた後に真絹は口を開いた。


「89です」


「何が?」


 真絹はお気に入りなのかしょっちゅうつけている白いブラ越しに自分の胸を突いた。


「今日の秘密の共有はこれで我慢します。どうぞご堪能ください」


 どう堪能しろと?


 真面目に思案していると真絹がクスリと笑った。


「ふむ、お気づきになられませんでしたか………私のイメージカラー言えばなんですか?」


「は?そりゃ白……ハッ!!!」


 89(ハク)!!??


「なかなかのものでしょう」


「ああ、こいつはなかなかなもんだ」


 なかなかもん以外の何物でもないけれどな。


「まぁ詠史さんに揉まれまくったら89を超えちゃうんですけどね♡女性ホルモンドバドバでちゃいますから♡」


「そんな日は訪れないから安心しろ」


「そう遠くはないと思いますけどね」


 そういって89センチの胸をプルンッと揺らした……まったく、健全的な男の子には刺激が強いんだけどなぁ。


次回 詠史と真絹がデートをします!!


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