小屋に適当に散らばっていた服をそそくさと纏った随分とデカい男が僕たちの前でちょこんと所在なさげに座っていた。真絹はそんな男性から距離を取りたいのか、それとも単純に僕に触れていたいのか背中に回り、頬ずりをしてきている。まぁ後者だろう。
「さて、あんた何でこんなことしてたんだ?」
「いや……違うんですよ…………話せばわかる」
「うん、だから話を聞くか「話を聞いてくれ!!!」聞くっつってんでしょうが」
にしてもこの人どっかで見たことあるな………どこで見たんだっけ?ルックスは異様に整ってるしファッション誌とか?いや、そういや僕ファッション誌見たことないわ。
「貴方、素鳥皇斗さんですよね」
「真絹お前知ってんのか?」
「ええ、知っての通り健全的な人生を旨とする私は風紀に気を付けているのですが」
どの口が言う。
「この御方は風紀委員なのです。とても仕事に真摯な方で、詠史さんの1兆分の1くらいは尊敬していた方なのですが………まさか露出狂だったとは、少しばかり残念です」
「ううっ……すまん……だがこれには訳があるんだ初川……そして」
「私の将来の伴侶であらせられる和倉詠史様です」
「不確定な情報をつけるな」
「和倉様」
「様は止めろ」
「和倉君」
素直でいいこっちゃ。
「それで訳ってなんだ?家族でも人質に取られてるってのか?」
「まさか。理由はもっとシンプルで、もっと分かりやすい……
とどのつまり単に俺が外で裸になりたかっただけだ!!!!!」
なぜそんな堂々と胸を張って声を張り上げられるのだ。
「外で裸になりたい、それ自体は否定しない。いや誇りにかけて肯定しよう」
なんか凛々しくなってきた。
「ただ俺はそこら辺にいる露出狂とは全く違う、断じてうら若き乙女だったりに自らの肉体を見せつけて悦にひたるつもりなんて全くもってない。俺はあくまでも服と言う自らの肉体と外界を隔てる結界を打ち払い、自らの世界と一体化させたかっただけ………世界は俺、俺は世界だと言うことを全ての心と体を使いつくし堪能したかっただけなんだ」
「ほう、つまり何が言いたいんですか?」
「つまりだ、俺は自分の下卑た欲望の為に裸になっているわけじゃない。こうして裸になっているところも本来人気が来ない場所を選んでいるだろう。俺はそこらへんにいる不健全的な露出狂共とはまるで違うんだよ。あくまでも俺一人だけが楽しみ、俺以外に全く迷惑をかけないようにした露出狂なんだ………
いいか、俺は健全的露出狂なんだよ!!!!!!!!!」
「………おうっ…………」
「ほえぇぇ、健全的露出狂と来ましたが」
真絹と思いっきり目が合った。元健全的ストーカーさんはかなりのシンパシーを感じたらしく子供のように微笑んでいる。
「私の判断はお分かりですね。後はお任せします」
「………わーったよ。
えっと、素鳥さん。あんたの行動は分かったし、嘘をついてないのもその目を見れば分かる……褒められたことじゃないけれど今回は見なかったことにするわ」
「いいの?」
「いいの、人に迷惑かけないならどんな趣味でも自由だからな……でもほどほどにしとけよ迷惑かける可能性は多分に秘めてるんだから」
「ああ、もちろんだ!!!」
良いお返事だこと。
「じゃあ詠史さん、帰りましょうか。ああそうだ」
「なんだ?」
いつの間にか大きく輝いていた月をバックに笑った。
「月が綺麗ですね」
こいつの脳内から先ほどの出来事は消え去ったんだろうなぁ。
「よくそんなロマンチックなこと言えるな」
「健全的なほど美しい月夜ですからね」
意味は分からんが凄い清々しい顔してる。
~~~~~~~~~
………うう、まさか俺としたことが健全的露出行為を発見されるとは………しかも同じ高校に通っている奴らに。
「はぁ………あいつらちゃんと黙っててくれるかな」
「安心していいわよ」
びくぅぅぅぅ!!!
「あの人たちクセはあるけど誠実な人だから、約束は絶対反故にしないわよ」
美しく、それでいて鋭い声が聞こえてくる……どこだ?どこから聞こえてくる?
「でもあたしはあの二人ほど優しくないから、もしかしたら噂を流しちゃうかもね」
「誰だ!!??どこにいるんだ!!??」
「別に隠れちゃいないわよ………ここ、ここ」
先ほど袖を通したばかりの服がクイクイと引っ張られた。そこに視線を落とすとバラ色の髪の毛を携えた少女が目に入った。幼いのに美しさを感じさせる容貌だ。決して地味とは言えないこの少女をどうして俺はこれまで認識できないでいた?
「どうも初めまして、素鳥皇斗さん」
「………」
心臓を掴まれたようなプレッシャー……俺がこんな子供相手になんでこんな…………
気持ちの悪い汗が背中を流れる。
「そんなに緊張しなくていいわよ。楽にしてなさい、何ならもう一回全裸になってもいいわよ。
ガキであるあたしは、大人の男性器みたところでなんとも思わないから」
「お前……何者だ?」
少女は月明かりの下でハッキリと口角を上げた。その行為は年に似合わないほどに妖艶で、夜に激しく似合っているように見えた。
「
俺の喉からつばを飲み込む大きな音が響いた。
次回 真絹がダウン?詠史の反応をお楽しみください