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第10話 綺麗な月夜の出来事

「良いですね、満天の星空の下、愛する人と太陽よりも眩い愛の光を放ちながらするデートも」


「曇りまくっててほとんど星明りなんてないけどな」


 面倒なのでデートじゃないとは言わないでおく。


「私がデートと思えばデートなのです。それに世間一般的な目で見て愛し合う男女が二人きりでいればそれはすなわちデートでしょう」


 まぁ言わなくても読まれるからあんまり意味ないけどな。


「それにしても随分暗い時間になっちゃいましたね。距離もまだまだありますしお家につくまでに疲れてしまいそうです。そうそう、偶然なのですが私が興味をひかれているホテルがこの辺に「いかないからな」先っぽだけでいいんです。ちょっと破瓜をさせていただくだけでいいんです!!子宮にドバドバ出してくださればいいんです!!!そして産まれてきた赤ん坊のためにも私と愛に溢れた家庭を作り、一緒のお墓に入ってあの世でもラブラブカップルで居続けてくれるだけでいいんです」


 ちょっとどころかゴールを大きくオーバーラップしてる願望じゃねーか。


「止めて、静寂な夜にお前の阿呆発言はめっちゃ響くから、ご近所さんに冷たい空気と共に淫猥なもの与えちゃうから」


「平気です。詠史さんの鼓膜だけに届くよう声の方向と範囲を絞っていますから」


「何その特殊能力、え?マジなの?そんなことできんのお前??」


「いっぱい練習したのでできますよ。主な使用法はこのような夜中に愛のある話をする時、もしくは人が大勢いる中でひそひそ話をする時なんかですね」


「一介の女子高生が会得していいスキルじゃないだろ」


「まぁ一介の女子高生と言っても私の家系は少々複雑ですからね」


「複雑ってのは?」


「ちょっと珍しい血筋なのです。本当は詠史さんに詳しくお話ししたいことなんですが如何せん私個人の秘密でなく家系そのものの秘密なので口外は難しいんですよ。申し訳ございません」


 するとパッと笑顔になった。


「しかし私の旦那様になるのであれば家系の一員です、全てをお話しできますよ」


「………じゃいいや」


「え~~~~教えさせてくださいよ。詠史さん多分ワクワクされると思いますよ」


 んなこと唐突に言われたって困るわ。それにいつもの阿呆発言だろどうせ。


 瞬間、真絹の様子が変わった。


「…………詠史さん少々遠回りしてもよろしいですか?」


「急にどうした?」


「いや、ちょっと濁った空気を感じまして………まぁ女の勘と言いますか、あっちに何かある気配がすると言いますか………」


 心の中で首を傾げた。あっちと言うのは少し離れた雑木林もどきのことだろうか。もうすっかり夏になり、虫がうじゃうじゃ湧いているであろうあんな場所に何があるっていうんだ?


「まぁいいや、行ってみるか」


 しかしながら真絹の勘は非常に良い。しょっちゅう脳内を読まれている僕にはよく分かる。どうせ帰ってすることもないんだから少しくらいいいだろう。


「あっ、言っておきますが人気のないところに誘い込んで青姦するつもりとかじゃありませんよ!!もちろん詠史さんが望まれるのであればいくらでも身体を張らせていただきますが、流石に初めては密閉された二人きりの空間が「行くぞ」はーい♡」




 昔から夜は好きです。深い深い暗さのおかげで微かな光で艶やかに輝く綺麗な白色が映えるから。私の輝きが詠史さんに伝わる気がするから。


 進んでいると神社らしきものにつきました。と言っても賽銭箱と本殿のようななにかがあるだけなので、正直色褪せた鳥居がなければ神社と認識することさえできなかったでしょう。


 何かが興奮しているような声がかすかに聞こえます。意識しなければ虫の音に勘違いするかもしれないほど小さな声……しかしながら異様なまでに惹きつけられる声です。夜闇に溶けるような気持ちで音を立てずに小さな声のする方に向かいました。そこには穴だらけの小さな倉庫があります。注意を向けようとしたとき私の足元を黒猫が通っていきました。まるで倉庫から逃げ出すような見事な駆けようでした。


「この声……誰かいるのか?」


「幽霊だったりするかもしれませんよ」


「だとしたら随分辺鄙なところにいる幽霊だな」


 好奇心と同時に警戒心が大きくなっていきます…………


 ドキドキドキドキドキドキ


「詠史さん、静かにですよ」


「わーってる」


 詠史さんも私と同じお気持ちなのでしょう。私と同じその表情は、まるで鏡を見ているようです……まぁ私の表情は見えませんが、想像できるので問題ないのです。


 詠史さんと同じ気持ちを共有している悦びを噛みしめながら穴から中を覗くと何かが……いました。


 雲間から覗く美しい光をスポットライトにしながら倉庫の中で躍動しているではないですか。ブレイクダンスのような盆踊りのような…手足の動きもバラバラで綺麗とは言えない踊り……とにかく自分の本能全振りの楽しむことだけを追求した、魅せるためではなく、楽しむための踊りです。私もああいうことをした覚えがありますね。


 しかしこうしてみると男女の肉体差がよく分かります。ありありと見て取れるのです。


 何故なら彼はだから。一糸まとわぬその姿、纏っているのは若い情動のみなのです。僅かばかりの感動を覚えてしまいました。それはそれとして、あの男根を切り落としたい気持ちでいっぱいなんですがこの気持ちは間違いでしょうか。詠史さんの生のものもまだ見ていないのに………取り合えず脳内から削除しましょう………結構手間なんですよね、これ。


殺意と怒気が混じりまくった私の視線を感じ取ったのか男性が私の方を向きました。穴を通してばっちりと目があいました。


「違うんだ!!!!」


 突然の大声に一瞬驚き、反射的に一歩下がると彼がこちらに近づいてきます。ただ随分慌てたようで先ほどのダンスの疲れもあったのか足がもつれました。そのまま穴が開いていた壁にぶつかったかと思えば、彼の重みで壁は崩れ去り尻丸出しの男の子が倒れたのです。見た目通りかなりの貧弱な壁だったのでしょう。


 アイドルの様なスタイルの男性のぷりぷりお尻が目の前で倒れている、もし私が普通の女子だったら照れたりするかもしれませんが、私は健全的な恋する乙女です。詠史さんの虜なのです。詠史さん以外のお尻で興奮することはあり得ません。


「真絹」


 私の身を案じ、お尻男子と私の間に割って入ってきた詠史さんの背中に釘付けになってしまいました。


 ああ、守られるのは一体いつぶりでしょう…これだけでむこう1年はおかずなしで白米食べられそうです…ありがとうございます全裸男子さん。貴方のおかげでトキメキをゲットできましたよ。


 黒い闇の中私の白い肌はさぞかし輝いていることでしょう。そしてそんな白い頬はきっと明るい赤色に染まっています。


 ふふふ♡幸せ極まりないとはこのことですね。


 この全裸お尻さんに見覚えがあると気づくのは少し後の話です。顔には覚えがあってもお尻に見覚えはないので仕方ありませんよね。詠史さんのものならば(妄想内で)何億回も見てきたので別ですけれど♡



 次回 お尻男子の正体が明らかに!!新たなる健全者が!?


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