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第5話 布団内での想い

 私の名前は初川真絹、熱烈なアプローチの末に愛する人と同衾をした女です。


 家族愛ではなく、異性として愛している相手と布団を共にするのは初めての経験ですが、これほど胸躍るとは……私がこれまでしてきたどんな妄想よりも幸せの大太鼓が響いていますよ。


 小さな布団と言う空間が私の体温と詠史さんの体温で温まっていく……この世のどんな暖かさよりも心を温める素晴らしい温度です。


「ZZZZZZZZ」


 愛くるしくて仕方ない寝顔を目前で見えると言うことは眼福極まりないのは間違いないのですが、なにもされていないのです。肌と肌が微かに触れているだけ……これだけでも確かに極上の癒しではありますが、せっかくノーブラノーパンで一緒のお布団に入ったというのに何もされないまますぐ隣で眠ってしまわれたのです!!オーマイゴッドって奴ですよ。


 いや、予想はしていましたよ。何十何百のパターンを想定していた中の一つではありますよ。でもまさか本当にこんなことになるなんて…………なんやかんやで手を出していただけると思っていたのに………鋼のメンタルすぎますょぉぉ。無防備な女の子が隣で寝ているんですよぉ……据え膳食わぬは男の恥ですよぉぉぉ…


「私の魅力がないわけじゃないと思うんですよね。男性的な視線を感じることもたまにありますし」


 学校裏サイトで付き合いたい女ランキングやセフレにしたいランキング上位に入っていましたし、詠史さんの好みにマッチした(私の妄想調べ)身体ですし。やはり一筋縄ではいかないということでしょうか。


 詠史さんの手のすぐ近くに私の胸を持っていきます。男性の本能が発動して掴んでもらえるかと思ったのですが思ったようには動いてくれないです。人生上手く行かないことばかりですよねぇ……ちょっと気分を変えましょう。気分を変えるには詠史さんのご尊顔を見るのが一番です。


「こうして間近で見るとやっぱり綺麗で可愛いお顔です……まつ毛も長いですね」


 詠史さんにむしゃぶりつくしたいです、特に唇を唇で触りたいですがそんな衝動を理性の力で押しとどめます。


「………こんなに近くにいるのに触れられないんですね」


 一人前の健全者になるためとはいえ辛いです。しかし欲望に負けてはいけません、欲望とは自分の願いをかなえるためのエネルギーでしかないんです。エネルギーの暴発で自分を無くすなど本末転倒というもの。それに何より詠史さんだって私を信頼して同衾したのです。詠史さんの信頼を裏切るなど首を百回斬っても許されることではありません!!!


 ただこのくらいならセーフですよね。健全的ですよね。


「詠史さん大好きです、詠史さん愛してます、詠史さんと子作りしたいです、詠史さんと幸せな家庭を築きたいです、詠史さんに揉みくちゃにされたいです、詠史さんに強引なことされたいです、詠史さんにキスしたいです、詠史さんに頬ずりしたいです」


 その後も詠史さんの耳元で甘く願いを囁き続けました。彼の夢の中で願いが叶っていることを信じながら。ああそれと……こんなこともしちゃいますよ。


「……詠史君」


 おおうっ。実際に言葉にしてみるとなかなか刺激的ですね…詠史さんとの立場が近いもののように感じられます……それじゃあ


「詠史」


 ぎゅぉぉぉぉおおお。呼び捨てヤバいです。キュンキュンします。君付けよりもさらに近いって感じします。君付けが新品の靴でパーソナルゾーンに踏み入るとすれば呼び捨ては土足で踏み入っているって感じします。どちらも素敵ですが私の好みは呼び捨てですね。


 えっと……それじゃあ。


「エー君」


 ぎゅんわぁぁぁ!!もうダメです、あだ名はヤバいです。特別な人感が凄いです!!!幼馴染とか恋人とか親友とかそういう近しい存在にだけ許された領域って感じがします!!


 妄想世界では散々言ってきた呼び方ではありますがこんなに近くで、ご本人の前で言うとやはり違いますね。心臓バクバクです。小さな布団が揺れちゃいそうです。


「散々勝手なことを言って申し訳ありません。けど、この状況で普通に眠っておられる詠史さんも悪いと思いますよ……倦怠期のカップルでもこんな風にはなりませんって……」


 取り合えず抱きしめたり、揉んだりするものだと思います。そしてそのまま流れるように……うふぅ♡


 しかしながら何もされずとも、惚れた弱みと言うのが正しいのか、惚れたから当たり前と言うのか、全てが愛らしく愛おしく、狂おしいほど大好きなんです。


~~~~~~~


『責任取るつもりもないのに僕のこと本気で好いてくれてる奴に手を出すなんてこと僕は死んでもしたくねーよ』


~~~~~~~


 ふふっ♡今時そんなこと大真面目に口にする方いませんよ。ましてや有言実行し続けるなんて天然記念物以上のレア人間です。


 そんな貴方に相応しい女になるためにそして、自分自身の信念の為に誰もに胸を張れる健全的な女性に……健全的な奥様にならなくては!!!!


 燃えます。こんな貴方を私の旦那さんにしたいとメラメラ燃えます。そして萌えます。こんな貴方が私と同じくらい私のことを好きになったあかつきのイチャラブを考えるだけで萌え萌えです。


「さて、私も寝ますか。明日も頑張らなくてはなりませんからね」


 私はゆっくりと目を閉じました。詠史さんが寝ている間に私の身体を触りまくってもらえるように心の中で思いまくりながら。


 そしてそのまま眠ることなく朝を迎えました。仕方ありませんよね、好きな人が隣で無防備に寝ているというのに呑気に眠れるほど神経図太くないんですから。一ミリ動くたびに触っていただけるかな?もう少しです頑張ってください!!なんて思い続けてしまったんですから。


「ふぁああ、真絹おはよ」


「はいっ!おはようございます!!!」


 ぐっすり快眠できた詠史さんに笑顔を返します。詠史さんのせいで私に気力がなくなったなんて思われてはいけませんからね。


「それで、私の抱き心地はいかがでしたか?」


「抱いてはないだろ、お前の顔見りゃわかる」


「うふふ、そうですか?」


「ま、お前のおかげでいつもより少しばかり深く眠れた気がする…いい匂いしたし、人肌の温かみも思ってたよか良かった…これからもたまには一緒に寝ていいかもな」


 え…………つ、つまり…………


「よっしゃぁぁぁぁです!!!!」


 8時間睡眠よりもこの一言で元気になるんですから我が体ながら現金なものです。


 そしてそんな肉体が大好きです♡



 次回 詠史と同衾しまくった経験のある新キャラ登場します!!

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